雨のパレードに聞く、海外と共鳴する音楽感覚と普遍的なポップスへの挑戦

雨のパレードに聞く、海外と共鳴する音楽感覚と普遍的なポップスへの挑戦

 新体制初のワンマンツアーを成功させ、「Ahead Ahead」、「Summer Time Magic」に続き、9月には蔦谷好位置を共同プロデュースに迎えた配信シングル「Story」をリリース。そして、満を持してニューアルバム『BORDERLESS』を来年1月22日にリリースすることを発表した雨のパレード。スタジオでのセッションからDTMベースの曲作りへと移行し、ライブでは同期を取り入れることによって、そのクリエイティビティにますます磨きがかかっている。

 外部プロデューサーとの共同作業によるEDM風プロダクションの導入や、Dos Monosのような同世代との越境的なコラボレーションが、バンドにとっての新たなチャレンジだったことは間違いない。しかし、その変化は『Reason of Black Color』(2018年3月)をリリースするまでの歩みの中で、他の誰が混ざっても変わることのない、自らの「黒」を作り上げたからこそ可能になったことであり、彼らの軸が先鋭的にして普遍的なポップスであることには一切のブレがないと、ミディアムバラードの「Story」は改めて伝えている。現在ニューアルバム『BORDERLESS』を制作中だという福永浩平(Vo)、山﨑康介(Gt&Syn)、大澤実音穂(Dr)の3人に、充実の現在地を語ってもらった。(金子厚武)

自身の成長を実感したワンマンツアー

左から:山﨑康介(Gt&Syn)、福永浩平(Vo)、大澤実音穂(Dr)

――まずは新体制初のワンマンツアーの感想から教えてください。僕はTSUTAYA O-EASTでのライブを観させてもらったんですけど、今のバンドのモードが伝わってくる、手応え十分のライブだったように思います。

福永:同期を使うようになって、もともとライブでやりたかったアプローチができるようになったのは大きな変化です。前は手の本数の限界を常に感じていて(笑)、和音の数がどうしても減ってしまったりしていたけど、そこは明確に改善されました。あとは、ライブに対する姿勢も変化してきて、一つひとつのライブをしっかり先を見越しながらやれて、それは自信にもなったし、確実にレベルが上がっているなというのは自分でも感じています。

――シンプルに言えば、ライブが外向きになった印象です。もともと福永くんのステージングはエモーショナルだったけど、どちらかと言えば内向きだったのが、外向きになった。それは「Ahead Ahead」や「Summer Time Magic」といった新曲の存在も大きくて、シンガロングできる雨パレっていうのは新鮮だったし、その分、中盤のディープなゾーンはよりディープに沈んで、メリハリがついたなって。

福永:「Ahead Ahead」と「Summer Time Magic」に引っ張られたっていうのはありますね。自分たちも体験したことがなかったようなライブの印象になったと思います。新しい曲を作る中でDAWのこともいろいろ学べて、よりディープな方にも自分たちなりに行けるようになったので、どんどん自分たちのやりたい幅が広がっている感じはしています。

大澤:「Ahead Ahead」と「Summer Time Magic」の力はホントにすごくて、お客さんとひとつになるっていう感覚を初めて体験しました。3人になったからというわけじゃないけど、一人ひとりが責任感を持って、ちゃんと盛り上げようって意識がもっと強くなった気がして、そういう意味でも、成長できたと思います。

――バスドラの音がすごくよかったのも印象的で。

大澤:今回のツアーはいつもよりインチの小さいのを借りたので、そのおかげかもしれない。

――オープニングが「Ahead Ahead」で、福永くんがフロアタムをぶっ叩いて始まるのもテンションが上がりました。

大澤:(フロアタムが)ベコベコになってたよね(笑)。

福永:一回リハで思いっ切り叩いてたら、指から血が出てました(笑)。

大澤実音穂(Dr)

――リハからそれだけ全力だったと(笑)。山﨑くんは、ツアーの感想はいかがですか?

山﨑:3人体制のライブの仕方、トータルのショーとしての見せ方が徐々にわかってきて、それをワンマンツアーでひとつ提示できたと思うし、確実に扇動力が上がってるというか、アジテーションみたいなパフォーマンスは今までやってこなかったですけど、蔦谷さんとやった曲のおかげもあって、そういうパフォーマンスをする力がついたのかなって。あの感じを待ってたお客さんも多かったと思うから、それを提示できてよかったです。

――確かに、変化に戸惑いを感じるというよりも、今の雨パレを喜んで受け入れているオーディエンスが多かったように思います。とはいえ、同期を使ったライブセットを構築していく上では試行錯誤もあったと思うんですけど、ライブをやりながら徐々に完成度を高めていったのでしょうか?

福永:最初は(山﨑)康介さんと僕と(大澤)実音穂でパソコン上で組んで、既存の曲だと、レコーディングしたベースを使いつつ、エディットしたり、物足りなさを感じる部分は補強したり、大胆にアレンジを変えたりしたものを、スタッフチームと一緒にスタジオで細かく調整して、ライブに臨んでました。(新体制での初ライブだった)『SYNCHRONICITY』のときはホントに手探りで、ベースも含めて全部2mixで出しちゃって、今考えると……あの日は誰にも見られたくなかった(笑)。

大澤:それこそ、O-EAST(『SYNCHRONICITY』の会場)が最初のライブだったんです。

福永:だから、ワンマンツアーでもO-EASTでやるのはちょっと不安ではあったんですよね。

――でも、見事に上書きしましたよね。

福永:はい、完全に。めちゃくちゃいい日でした。

――ちなみに、同期を使ったベースレスの編成って、日本では決して多くはないですけど、海外では特別珍しくもないですよね。ライブセットを構築するにあたっては、誰か海外のアーティストを参照したりしましたか?

福永:3人の見た目で、エレクトロという意味では、オーストラリアのHVOB。ああいうバンドセットをやってみたいっていうのはありました。ただ、僕らの方が機材の量は多くて、僕は機材で溢れたゴチャゴチャしたステージが好きなんですよ。ワンマンツアーでは僕のところにフロアタムが増えて、MPCも置かせてもらったりして、自分の周りににゴチャゴチャ機材がある感じがたまらなかったです。

――っていうか、前までよく同期なしでやってたよね(笑)。

福永:ホントそうなんですよ。前は両手両足使ってたんで、今思えば、めちゃくちゃ無理してたなって(笑)。

――初期の頃の曲は生々しいライブ感が合ってたと思うけど、近年のダンスミュージック系の曲をクリックも使わずにやってたのはすごいなって。

福永:(初期は)完全に生でやってて、それが良さでもあったと思うけど、やっぱり曲によっては機械的なBPMの良さがありますもんね。ホントに、真逆のやり方だったなって(笑)。

――本編のラストに演奏されたのが、ツアー前の7月にリリースされた「Summer Time Magic」で、「Ahead Ahead」同様に、早くもフロアアンセムになっていましたね。

福永:「夏に間に合わせなきゃ」って、一気にバババっと書いた曲で、アレンジに関しては蔦谷さんと最近好きなバンドとかを共有しつつ、返ってきた提案が、カルヴィン・ハリスみたいな、アシッドEDMな感じで、「いいなあ」って。僕自身はあんまりそういう音楽を聴かないんですけど、それでも納得させられるものがこの曲にはあって。

――「Ahead Ahead」にしても、EDM要素はこれまでの雨パレにはなかったもので、それはやはり蔦谷さんがバンドに持ちこんだもの?

福永:そうですね。正直全く聴かないジャンルなので、最初は違和感があったんですけど、「Ahead Ahead」のときにそれを越えて納得させられるものを感じたんですよね。「Ahead Ahead」のときはオケのバランスを変えてもらったりはしたけど、「Summer Time Magic」に関しては、最初に上がってきたアレンジの時点で「最高!」って思いました。

――これまでの自分にはなかった要素を受け入れることができたのはなぜだったのでしょう?

福永:最初に蔦谷さんと曲を作ったのは「Trust」(『Story』のカップリング)で、あの曲は僕らで一回作り切っていた曲だったのもあって、リミックスのようなニュアンスだったんです。なのでやっぱり最初は少しだけ違和感を感じたんですけど、いろいろ変えていく中で、すごくいい形に落ち着いたので、このやり方はいいなって。なので、「Ahead Ahead」以降はもっと気持ちが開けていたというか、受け入れる体制になってた感じですね。

――リリース順は「Ahead Ahead」、「Summer Time Magic」、「 Story」、「Trust」になったけど、作った順は「Trust」、「Ahead Ahead」、「Summer Time Magic」、「Story」の順で、「Summer Time Magic」を作る頃には信頼も生まれていたと。

大澤:私もEDMはちょっと肌に合わないというか、こういうシンセの音は苦手だなって思っていたので、「Trust」を初めてやったときは、「私たちがこれをやっていいのかな?」っていうのもあったんですけど、そこは蔦谷さんマジックというか、めっちゃかっこよくアレンジしてくれて、受け入れられるようになりました。

――ライブで演奏したときの反響で、より確信が増したんじゃないですか?

大澤:そうなんですよね。「私たちのお客さんだった人たちだよね?」っていうぐらい、「Ahead Ahead」は全然反応が違って、曲のパワーをすごく感じましたね。

山﨑:蔦谷さんと一緒にやることで、技術的にも学術的にも、センス的にも、僕らにはなかったものを提示してくれるので、今まで僕らがやってこなかったことがどんどん入ってきて。僕も最初は若干の戸惑いがあったけど、すごく懐の深い方で、僕らの意見をさらにいい形で返してくれて、それによって僕らの勉強にもなるし、より自分たちの音楽性を広げられたので、すごく楽しいです。

山﨑康介(Gt&Syn)

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