雨のパレード、バンドの開放的なモードを明確に印象付けたライブツアーを振り返る

雨パレ、ライブツアーで見せた開放的なモード

 今年1月にバンド編成が変わり、蔦谷好位置を共同プロデューサーに迎えたシングル「Ahead Ahead」と、リリース当日の4月24日に恵比寿LIQUIDROOMで開催されたワンマンライブで新体制での活動を本格的にスタートさせた雨のパレード。8月28日の大阪BIGCATからスタートし、全4公演が行われた『SUMMER TOUR “Summer Time Magic”』は、3人編成になってから初のツアーとなった。

 僕はリキッドルームには行けなかったので、この日初めて新体制でのライブを観たのだが、新しいベーシストを入れず、メンバーそれぞれが複数の楽器を担当し、同期を用いて展開されたステージは、日本のバンドシーンにおける雨のパレードの特異性を分かりやすく浮かび上がらせていたように思う。「ベースレス」という編成は日本のバンドシーンにおいてまだまだ珍しいが、彼らが時代感を共有する海外のニュージェネレーションたちの多くはすでに定型のバンド編成にこだわっておらず、ベースレスも決して珍しくはない。雨のパレードはこれまでもシンセやサンプリングパッドを積極的に用いることで、現代的なバンド像を提示してきたが、3人編成でいわゆる邦ロックの大型フェスなどに出演することによって、さらに新たな価値観を提示することになるはずだ。

福永浩平(Vo)

 真っ暗なステージにメンバー3人が登場し、ステージ上手に設置されたスクリーンを使った映像演出とともに、アンビエントなサウンドが場内を包むと、大澤実音穂(Dr)の叩き出すリズムに合わせ、福永浩平(Vo)がフロアタムを思いっ切り叩いて、1曲目の「Ahead Ahead」がスタート。アフリカンなビートと四つ打ちを組み合わせ、雄大なサウンドスケープを立ち上げるフロアアンセムであり、オーディエンスと一緒にジャンプをしたり、クラップを求めたりと、そのステージングは実に開放的だ。

大澤実音穂(Dr)

 これまでの雨のパレードのライブでは、ポップスとしての日本語の歌と、海外由来のサウンド/ビートメイキングを組み合わせる難しさを感じることもあったが、英語も交えた「Ahead Ahead」はそこがバッチリかみ合っていて、「シンガロングできる雨パレ」というのははっきりと新しい。パフォーマンス重視のバンドシーンに対して、サウンドデザインを作り込むことで風穴を開けたバンドが、その成果をもって、今度は自分たちがフィジカルなパフォーマンスを行い、さらに上へと突き抜けようとする。そんな覚悟が楽曲とパフォーマンス双方から感じられた。

 イントロのベースフレーズが印象的な「new place」では、そのフレーズ自体がもともと反復を基調としたシーケンス的なものということもあり、曲が始まると3人の生み出す音に一気に引き込まれた。これまではクリックを使わないからこその生のバンドサウンドが魅力になっていて、初期曲の「new place」はその生感が特に際立つ曲だったが、R&Bやハウスに傾倒していった近年の楽曲の場合は、やはり同期を使った方がしっくりくる。オルタナティブなギターサウンドの「Horizon」、シンセポップな「Shoes」と、山﨑康介(Gt&Syn)が対照的な役割を担う2曲を経て、同期のコーラスによって歌の立体感が増した「You」が熱く届けられた。

山﨑康介(Gt&Syn)

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