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川谷絵音と長田カーティスが語る、indigo la Endの音楽「孤高の存在に近づいていっている」

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 9月15日にindigo la End、ゲスの極み乙女。のメジャーデビュー5周年記念ライブが控えている川谷絵音。リアルサウンドでは、これまで川谷絵音へのインタビューを重ねてきたが、今回は6月30日に日比谷野外大音楽堂ワンマンを成功させ、10月9日に5thアルバム『濡れゆく私小説』をリリースするindigo la Endにフォーカスを当て、川谷とバンド初期からのメンバーである長田カーティスとの対談を行った。『濡れゆく私小説』の制作が大詰めを迎えていた7月某日、川谷と長田だからこそ語ることのできるindigo la Endのバンドヒストリー、特に音楽性やスタンスの変遷について聞いた。(編集部)

次のアルバムくらいで、やっと時代が追いつくくらいなのかなと(川谷絵音) 

ーー6月30日の日比谷野音では、歌とギターというもっともオーソドックスなところで、ここまでバラエティに富んだ魅力的な音楽ができるんだ、ということを体感できました。川谷さんはステージでも強調していましたが、野音にはやはり特別な思い入れがあるんですね。

川谷絵音(以下、川谷):そうですね。僕は野音で何回か演ったことがあるんですけど、indigo la Endとしては初めてで。ファンの人もよく「(野音に)めっちゃ合うだろうなあ」と言ってくれてましたし、いつかやりたいと思っていたんです。でも、全然抽選が当たらなくて。5年越しくらいで、ようやく当たった! という感じだったんですよね。

ーーなるほど。メジャーデビューしたころからあった計画だったと。長田さんは、実際にステージに立ってどうでしたか?

長田カーティス(以下、長田):最初に雨が降って、エフェクター大丈夫かな、みたいな機材の心配もあったんですけど、最後はちゃんと晴れてくれたので、終わりよければ全てよし! 的な感じでしたね。

ーー観ている側からすると、無責任に「インディゴはこういう雨の雰囲気も合うな」と思ってしまいました。

川谷:確かに、雨の曲も多いですし、逆に演出っぽくなったところもありますよね。晴れていたら照明なんてまったく見えないけど、曇り空で前半からちゃんと見えたのもよかったし、インディゴっぽくできた日だったなと。6月30日は7年間、雨が降っていなかったらしくて、そういう意味でもメモリアルな日になりました。

ーー選曲も印象的で、初期の曲から新しい曲まで、総集編的に楽しませてもらいました。

川谷:ツアー自体が原点回帰っぽく、昔の曲もやりますよ、という感じだったので、その流れもありましたね。メモリアルな日だったし、昔から聴いてくれてる人たちも最近の曲から聴き始めた人も、全員が楽しめるライブにしようと。それで、ベストっぽい感じにしました。

ーー初期の曲は年月を重ねるなかでアレンジも変わっていますが、長田さんはどうでしたか?

長田:とりあえず思い出すのが大変で、できればやりたくない(笑)。ただ、(2015年からメンバーになった)後鳥(亮介)さんだったり、(佐藤)栄太郎はそもそも自分が録音したものじゃないから、もっと大変なのかなと。

川谷:次の9月15日(※メジャーデビュー5周年記念ライブ『馳せ合い』@新木場STUDIO COAST)とか、昔の曲をやる日じゃん。

長田:ヤバイよ。でも努力はします(笑)。

ーー今回は初期の頃も振り返ってもらいたいのですが、あらためて、川谷さんから見た長田さんのギター演奏について伺います。変わらない音色がある一方で、変化した部分もあるのでは。

川谷:最初は「歌を殺すくらい弾いてくれ」とずっと言っていたんですよ。だから、昔の曲はギターがかなりメロディアスで、『藍色ミュージック』あたりから、けっこう出すぎず意識的に後ろに行くようになったというか。『藍色〜』は栄太郎と初めて作ったアルバムでもあって、ドラムがドシッとしたから、ギターが前に出なくても成立するようになったので。そうやっていろいろ変わってきたんですけど、メンバーが変わったのがデカいかもしれないです。

長田:確かに、ドラマーが変わることで、これまでなかったアプローチをしてくるので、それに引っ張られて自分のアレンジも変わることが多いですね。そういうのがかなり面白いなと思います。

ーー以前の川谷さんのインタビューで、曲作りに関しても、栄太郎さんのドラムに合わせて作ることがある、という話がありました。

川谷:そうですね。『藍色ミュージック』でもドラム、リズムメインで曲を作っていたり。今はまた変わってきているんですけど、特に加入したばかりだったらフィーチャーしたいというか、結果的にそうなったというか。後鳥さんが入ったときの『幸せが溢れたら』も、めっちゃベースが効いている曲が多くて『PULSATE』になると、4人になってから2枚目だったので、そこまで深く考えずにバランスが整ってきたという感じですね。暗いアルバムでしたけど。

ーー暗く美しい作品です。「結び様」という新曲もベースのアレンジが面白く、『PULSATE』以降の楽曲だなという感じがしました。

川谷:そうですね。ドラマの曲なので、いつもよりキャッチーな感じではあるんですけど、昔だったら作れなかったバラードかなと。コード進行がめちゃくちゃ複雑で、イントロからAメロでいきなり転調しますからね。

長田:覚えられない(笑)。最近は絵音くんがギターを弾かない曲も増えていて、そうするとリードギターのアプローチの仕方もけっこう変わってくるんですよ。これまではコードを無視していた部分も、全部把握しなければいけなくて。そうなるとさらに、コード進行の難解さが厄介になるんです。

川谷:複雑な曲、めちゃくちゃ増えたからね。くるりの岸田(繁)さんが「ユーミンの90年代の曲のコード拾いちう」ってツイートしてましたけど、まさにコードがめっちゃ複雑なのに、そこに歌謡的でいてキャッチーなラインが乗っている楽曲があったじゃないですか。そういうものが時代的にどんどん薄まったシーンになっていたんですけど、逆に今いわゆる日本のシティポップ、例えば竹内まりやさんの「プラスティック・ラブ」を筆頭にユーミンさんや山下達郎さんの曲が海外でも注目をあびるようになって。俺らはちょっと前からずっとそういう感じだったから、次のアルバムくらいで、やっと時代が追いつくくらいなのかなと。めちゃくちゃ複雑だけど全部キャッチーで、一種の完成形みたいな感じなんですよ。『PULSATE』より全然クオリティが高い。

ーーバンドで川谷さんの楽曲をアレンジしていくのは、どんなプロセスなのでしょうか。

川谷:最初にギターで鳴らして、それをコーラスのえつこ(DADARAY)がワーッとコードを全部書き出して。そこから、「ここまでがイントロで、ここまでがAメロで」って、1曲の構成をざっくり決めていくんです。それをみんなで一回持ち帰って、「ここのアレンジを変えよう」とか、「ここはちょっとカットしよう」みたいに話し合って。いつもはわりとレコーディングまでが短いんですけど、今回はけっこう推敲しましたね。「結び様」もサビのコード進行がずっと決まらなくて、めちゃくちゃやり直しました。

長田:長かったね。5パターンくらいあった気がする。

川谷:いつもわりとパッとやってパッと終わっちゃうので、あとから「こうすればよかったな」みたいなものが出てくることもあるんですよね。今回はちょっと面倒だけれど、何回もスタジオに入ってちゃんとやろうと。バンドっぽい感じで。

長田:前日札幌でライブを演って、東京に戻ってみんなでスタジオに直行、みたいなとんでもないスケジュールだったね。

ーー長田さんはインタビューで、川谷さんについて「音楽に対して常に真面目だ」と言われていましたが、その姿勢は変わりませんか。

長田:変わらないと思いますし、なんならもっとストイックになっていますね。

川谷:次は本当ストイックなアルバムなので。けっこうコンセプチュアルで、本当にユーミンさんとか達郎さんをめっちゃ意識したんです。歌はまだ録っていないんですけど、音作りについても達郎さんのギターを聴いて、ラインで録ったりとか。サカナクションの(山口)一郎さんは、達郎さんをバンドでコピーしたと言っていましたね。「なんとなくそれっぽいの」をやると、自分たちの手癖になってしまうじゃないですか。俺らは別にコピーしたわけではないですけど、自分たちの手癖じゃないところでやってから、自分たちっぽいものにずらしていったんです。

ーーユーミン楽曲のコードは確かに洒落ていて洋楽的ですが、曲として聴くと和モノで、しかもキャッチーという不思議さがありますね。

川谷:そうですね。思うのが、ユーミンさんとか達郎さん、はっぴいえんどをリスペクトしている若い人たちって、僕好みのキャッチーさじゃないんですよね。リスペクトしてるものが同じなんだろうなぁとは思うんですけど、いまいちストライクゾーンに入ってこない。それは、あくまで個人的な趣味ですけどメロディが弱いんですよね。その意味で、今回は僕好み直球ストレートなメロディを上質な演奏にふんだんに盛り込みました。

ーーなるほど、カギはメロディだと。

川谷:だからサカナクションはスゴイんですよね。メロディがよくて、しっかりオリジナルだし、忘れられない。それにユーミンさんだと、サビじゃないところがキャッチーで忘れられなかったりするじゃないですか。そういう部分は、めちゃくちゃ意識しましたね。

ーー長田さんは、メロディメーカーとしての川谷さんをどう見ていますか?

長田:すげえ頑張ってるな、と思います。本当にいま歌っていたものが、トイレに行って戻ってきたら別のメロディになっていたりして。「いいメロディだけどなあ」と思うものもボツにしちゃうし、そんなによくやる気になるな、というくらいいつもやっているので。

川谷:納得するまでやりますね。

ーーインディーからアルバムを全部聴き直しているんですけど、サウンドも曲の構成もどんどん変わるなかで、メロディは一貫していますよね。変わらない、ということではなくて、最初からいろんなバリエーションがある。

川谷:そうですね、確かにいろんなバリエーションがありました。ただ変わったとするなら、ちょっと無機質だったところが、有機的になってきたかなと思います。最近、NUMBER GIRLについての取材がめっちゃ多くて、昨日もきのこ帝国の佐藤(千亜妃)さんとラジオの特番で話したんですけど、きのこ帝国と一緒にやっていたころ、ミニアルバム『さようなら、素晴らしい世界』を出した当時は、オルタナティブを目指していたからコード進行よりリフだったし、開放弦が多くて、ちょっとかっこいい響き、雰囲気重視みたいな感じで。それに引っ張られて、歌もちょっと無機質なものがあったんですけど、最近はコードをガチッと決めてやっているので、そこはめちゃくちゃ変化したところかなと。

ーー曲の変化に対し、長田さんのギターも変化してきていると。

川谷:変わっていると思いますよ。昔はバッキングもしなくて、単音フレーズしか弾いていなかったし。最近はコードから作っているから、勉強したでしょう?

長田:大分したね。

川谷:コードを大事にするギターになっているのが、すごくわかる。これまでは完全に無視していたものが、歌モノっぽくなってきたという。いま「ユーミン(仮)」というタイトルで進めている曲なんか、めっちゃ”ぽい”やつができていて。

ーーちなみに、どのあたりの時代のユーミンを目指した曲ですか?

川谷:いまのやつは「BLIZZARD」とか。ドラムの音もそれを目指していますね。

ーーユーミン作品のなかでも、アレンジが特に凝っていた時代ですね。

川谷:そうなんですよ。

ーー長田さんもそれに合わせて、より細かくコードを習得されたと。

長田:『PULSATE』の前くらいからその必要性を感じて、もうちょっと勉強しなきゃなと。

川谷:『PULSATE』はかなり狂ったコード進行なので。「星になった心臓」という曲とかも、意味がわからないコード進行ですからね。大変だった。

ーーライブでの再現も大変そうです。

長田:そうなんですよ。頭使うところが多くなってくるし、次のアルバムはちょっとライブが不安な曲が多いです。

ーー面白い。川谷さんは元々コードなどにはそれほどこだわらず、逆に自由に曲を作っていくなかで、理論的なことはあとからついてくる、という感じですよね。

川谷:そう、理論は全然わかっていないんですよ。でも、だからこそ「結び様」みたいなコード進行もできると思うので。本当に考えて作ってくるんですけど、スタジオでけっこう適当にCメロとかのコード進行を変えちゃったり。考えてきたなかに、そういう自然発生的なものが含まれるので、そのバランス感がindigo la Endなのかなと。それはいまも変わらずですね。

ーーその「自然発生的なもの」がかなり重要だということですね。

川谷:そうですね、やっぱりバンドなので、集まってやっている時点で自然発生的なものは出てくるじゃないですか。NUMBER GIRLもそうだと思うんですよね。別にみんなで「こうしよう」と考えていたのではなくて、自然発生的にあの音になったんじゃないかなって。だから、バンド感はずっと大切にしてますね。

ーー例えば、ゲスはゲスのバンド感がもちろんあるんですけど、indigo la Endのバンド感はまた違いますね。

川谷:そうですね。次の作品は本当にめちゃくちゃいいものになると思っていて、ひとつの完成形というか、バンドものでやっと自分が聴きたかったものができるなと。

長田:この次はまた変な感じになるかもしれないけどね。できたからいいや、もっと別のことをしよう、って。

      

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