>  > 杏沙子、「私は音楽が好きだから飛んでいける」

『ファーストフライト』

杏沙子、“嘘のない自分らしさ”を込めた『ランウェイ24』主題歌「ファーストフライト」を語る

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 今年2月、バラエティに富んだ内容の1stフルアルバム『フェルマータ』で自身の世界観をグッと広げてみせたシンガーの杏沙子が、8月7日にリリースする1stシングル『ファーストフライト』。その配信が7月17日よりスタートした。同曲はパイロットに憧れて航空業界で奮闘する主人公の働く様や恋愛模様を描いたドラマ『ランウェイ24』(ABCテレビ・テレビ朝日系)の主題歌で、杏沙子がドラマをイメージしながら書き下ろしたもの。そこには音楽の世界で生きていく自身の気持ちがとても正直に込められてもいる。杏沙子に話を聞いた。(内本順一)

 主人公に送るエールでもあり、自分自身が感じていることも込めた

――メジャーデビューから、早いものでもう1年が経ちました。

杏沙子:早いですね。早いけど、すごく濃かったので、まだ1年という気もしますし。あっという間だったけど、得たものの多い、どっしりした1年でした。

――インディーズで活動していた頃とは、どう違う1年だったと思います?

杏沙子:自分だからこそ書けるもの、歌えるものってなんだろうっていうことを、インディーズのときは良くも悪くもまったく考えていなかったので、それが大きな違いかもしれません。未だに“これが自分らしさです!”って言いきれるものが何かという答えは出てないけど、曲を作るときに“自分にとっての嘘じゃない言葉ってなんだろう”と考えるようになりました。

――始めた頃は“歌うのが好きだから”といった衝動にただ突き動かされて歌っていたけど、メジャーのシーンともなると自分に近い世代の女性シンガーも少なくないわけで、そのなかでどのように個性を見せていけばいいのかということを考えるようになる。

杏沙子:そういうことです。だから、毎回、戦いに挑むという意識が芽生えました。

――そんな気持ちが「ファーストフライト」の歌詞にも表れてますね。

杏沙子:はい。

――すごくいい曲です、これ。いただいた紙資料に「“古き良き”も踏襲しながら、今を感じるエッセンスも多分に投入された、杏沙子初めてのシングルにして会心作!」と書いてありましたが、まさにそういう曲で。メロディというものが今よりもっと豊かだった時代のポップスを思い出させるところがありつつ、かといって懐古趣味などまったくなく、瑞々しさに満ち溢れている。そういうものを歌ってフレッシュに響かせることができるところが、まさしく杏沙子さんのシンガーとしての個性なんじゃないかと僕は思います。

杏沙子:めちゃくちゃ嬉しいです! 自分としては“古き良き”みたいなことも“今っぽさ”みたいなことも、作っているときは考えてないんですけど。でも確かに自分のルーツはメロディの豊かな昔の曲にあって、自然と「いいな」って思えるのがそういう曲だったりするから。

――お母さんがクルマのなかで聴かせてくれていた80年代とかの音楽のよさが……。(参照:インタビュー(音楽ナタリー/2018年5月18日掲載))

杏沙子:生きてますね、この曲のなかに。

――この曲は、7月7日スタートのドラマ『ランウェイ24』の主題歌ということですが、どんなふうに作っていったんですか?

杏沙子:前々から、いつか物語のあるものに自分の音楽をフィットさせることをしてみたいと思っていたんですね。それで、『ランウェイ24』の主題歌を探しているという話を聞いたときに、ぜひ書かせていだきたいと思って、ドラマのテーマやストーリーの書いてある資料を読んで書き下ろしたのが「ファーストフライト」なんです。すでにある物語をベースにして曲を作ったことはなかったんですけど、普段から自分なりの物語を作って曲にするということをやっていたので、思っていたよりスルスルと書けた。で、そのデモ音源をお送りしたところ、ドラマにぴったりだと言っていただいて採用されることになったんです。

杏沙子「ファーストフライト」ティザー映像

――曲作りの段階で、朝比奈彩さんが主演されることも決まっていたんですか?

杏沙子:はい。朝比奈彩さんが演じる物語の主人公が26歳で、私は今年25歳なので、同世代ということもあって書きやすかったですね。主人公の桃子の亡くなったお父さんがパイロットで、彼女はお父さんへの憧れからパイロットを目指すんですけど、私もそれこそお母さんがクルマのなかでよく聴かせてくれた松田聖子さんに憧れを感じて、それがいまに繋がっているし、自分の人生を動かす原動力になっている。そういうところに共通点を感じたので、主人公に送るエールとして書きたかったし、同時にそこに自分自身が感じていることも込めて書こうと思ったんです。

――主人公の桃子が見ている空と、杏沙子さんが進んで行こうとしているこの音楽の世界とが重なった。

杏沙子:だいぶ重なりました。いま活動している世界が空だったとしたら、自分もパイロットと同じだな、って。雨も降るし、風も吹くし、嵐が来そうな不安や焦りもあるし。自分のことをそのまま書けるなと思って、書きました。

――空と一緒で、限りもゴールもない世界ですしね。

杏沙子:そうですね。どっちに行ったら正解とかもないし。行ける場所はひとそれぞれだから。そのへんもぴったりきましたね。大空に羽ばたく副操縦士が主人公のドラマだったからこそ書けた曲だと思います。

――まず、どのあたりから書いていったんですか?

杏沙子:サビの歌詞から出てきて作ることが普段は多いんですけど、これは頭から考えました。進んでいくなかで見えてくる景色を想像しながら書きたいという気持ちがあったので、時系列に沿って書いていこうと。いま、自分には何が見えていて、何を思っていて、どのへんにいるんだろうかってことをちゃんと確認しながら書きたいと思ったんです。

――なるほど。だからこそ、いまの杏沙子さんの思いがリアルに言葉になっている。〈不安なのは今、未来を見てるから 逃げたいのは今、戦っているから 最初からうまく空を飛べる鳥がいるわけないでしょ〉というところとか、包み隠さず本心を綴ってますよね。

杏沙子:はい。自分がいまこうして向かいたい場所に向かうことができているのは本当にありがたいことだと思うんですけど、やっぱり弱音を吐きたくなることもあるし、マイナスな気持ちになることだってある。でも、不安だな、怖いなって気持ちがあるからこそ成長できるんだろうし、そういう気持ちを持ちながらも未来を見ているからこそ限界だと思っていたところも超えられる。進んでいく上では悔しさとかそういうマイナスの気持ちもないといけないしと思うし、それをプラスに変換することで初めて行きたい場所に近づけるんだろうなと思って。

――そういう自分の心情をかなりストレートに書いている曲ですよね。決して多くはないけど、ときどき杏沙子さんの作る曲のなかからそういうものが出てくる。『フェルマータ』収録の「とっとりのうた」がそうだったし。

杏沙子:あ、そうかもしれないですね。曲のタイプは違うけど、いままでの曲のなかでは「道」と「とっとりのうた」と今回の「ファーストフライト」で自分の気持ちを出せたと思います。

――何曲かに一回はそうやって自分の気持ちを書いて確認するのが、杏沙子さんにとってすごく大事なことなのかもしれない。

杏沙子:そうですね。

――「ファーストフライト」では〈偏見 世間的常識 可能性 信憑性 理想を投げつけられる〉なんてことまで歌っちゃってますね。

杏沙子:ここらへんはちょっと自棄ですね(笑)。

――まあ、生きていれば自分の思わぬところで雨が降ったり槍が降ったりもするもんですから。

杏沙子:しますね。その人は応援のつもりで言っていたとしても、それが偏見だったり、その人にとってだけの理想だったりもして、言われるとやっぱり「ううっ」てなる。私はよくも悪くも真面目で、言われたことをけっこう真に受けるタイプなんですよ。だからこの曲は、主人公に対してのエール半分、自分に対しての叱咤激励半分で書いたんです。2番のサビの頭の4行……〈焦るのはそう、誰かと比べるから 虚しいのはそう、流されているから  最後まで乱されずに飛んだ鳥が いるわけないでしょ〉というところは自分にずっと言い聞かせたい言葉だったりしますね。

――こういうふうに書くのは勇気がいることだったりしました?

杏沙子:いや、でも気持ちを吐き出したことが、きっとこれからの自分のお守りになっていく気がしたので、ここまで書けてよかったと思います。これを書き終わったあとにもまた、ちょっと不安や焦りを感じたときがあったんですけど、この曲で歌っている〈苦しいのは今、変わろうとしてるから〉という言葉を思い出して、“あ、いま、私は変わろうとしているときなんだ”って思えた。自分の書いた言葉に教えられるというか、励まされる感じがあったんです。

ーー不安や焦りといった感情までも正直に書いたことで初めて〈この空は美しい〉という肯定的な気持ちに本当に辿り着けたってところがあるんでしょうね。

杏沙子:はい。この終わり方が、自分ではすごく気に入ってます。風になぐられ雨に打たれても、私は音楽が好きだから飛んでいける、だから空が美しく思える、っていう。

――デビューして1年間のなかでそう確信できた。

杏沙子:はい!

      

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