杏沙子、“嘘のない自分らしさ”を込めた『ランウェイ24』主題歌「ファーストフライト」を語る

杏沙子、「私は音楽が好きだから飛んでいける」

自分と対話しながら歌っているような感覚もあった


――幕須介人さんの手によるメロディもまた素晴らしいですよね。

杏沙子:初めてこのメロディを聴いたとき、自分の視点で最後まで進んでいく孤独なメロディだなと感じたんです。孤独で、脆くていまにも壊れそうなんだけど、でも強く進んで行くパワーも持ったメロディだなと思って、それは私が書こうとしていた歌詞にぴったりだった。メロディを聴きながら、自分はまだ飛べるよって言いたいんだなってわかったし。曲をいただいてから歌詞をつけるというのは『フェルマータ』で初めてやったことなんですけど、幕須さんのメロディはそれがしやすいんですよ。びっくりするくらい自分にフィットする。だからこれも悩まずスルっと歌詞が書けたんだと思います。

――メロディそのものが空を駆けていくイメージで、途中では乱気流が起きる様も表現されている。加えて横山裕章さんのストリングス・アレンジがまた優れていて。美央ストリングスによる優雅な弦の音色は、まさに空の広さや景色を伝えてくるようです。

杏沙子:私もそう思います。ストリングスのみなさんが追い風を起こしたり、乱気流を起こしたりして、同時に景色も見せてくれている。すごいアレンジだなって思いますね。曲がどんどん展開していくなかにも、素晴らしいミュージシャンのみなさんがいい感じで余白を残して私が息を吸える場所も作ってくださったので、颯爽と駆け抜けていくような曲になったんじゃないかと。

――歌入れに関して意識したことはありましたか?

杏沙子:今回は初めてドラムを柏倉隆史さんが叩いてくださったんですけど、そのドラムが追い風を作ってくれていて、私はそれに押されるのを感じながら歌うことができたんです。最近、ドラムとベースがすごく自分の歌に影響していることを感じるんですよ。この曲も柏倉さんに叩いてもらったからこそ、風を感じてこういう歌い方をすることができた。それくらい、この曲には柏倉さんのドラムが合っていたんだろうなということなんですけど。

――なるほど。特にサビは気持ちよく風に乗って歌っている感じがしますね。それに対してAメロ、Bメロは音の高低を忙しく行き来するから難しかったりしませんでした?

杏沙子:Aメロは見えている景色を歌っているんですけど、Bメロを経て、サビでは自分の感情の中身を歌っている。そのあとサビで一回上がった温度をまた落して、急にカメラモードに切り替わるっていうところがなかなか難しかったですね。でも、自分ひとりの孤独な目線で作った曲なので、全体を通して自分と対話しながら歌っているような感覚もあった。結局は夢中になって歌っちゃいました。

――そういう曲だからこそ、きっと何年か経って歌っても初心に帰れそう。

杏沙子:そう思います。

ーーでは、2曲目「青春という名の季節」の話をしましょう。これは3月のShibuya O-East公演でもいいところで歌われましたし、インディーズの頃から度々歌っている曲ですよね。

杏沙子:はい。secondrateというバンドの清家寛さんというピアノマンがいて、インディーズの頃に「道」や「アップルティー」のアレンジをやってくれたり、ライブに一緒に出てくれたりしてた人なんですけど、「青春という名の季節」はその方が作った曲で。出会った頃に清家さんの曲をいろいろ聴かせてもらっているなかで、これはメロディも言葉の入れ方もキャッチーだし、青春が迫ってくるみたいな感じがあった。それで「ライブで歌いたいな」って言って歌わせてもらっていたら、「もう、杏沙子ちゃんにあげるよ」って(笑)。

――インディーズ時代からのファンのひとたちの間で、かなり人気の高かった曲ですよね。僕もO-Eastのワンマンで聴いて強く印象に残ってました。

杏沙子:好きだと言ってくれる人がめちゃくちゃ多いですね。このシングルの収録曲を発表したときも、「青春という名の季節」が入るってことで盛り上がってました。それぐらいパワーがある曲なんだなっていうのは、ライブでファンの方の反応を見ていても思いますし、友達にもよく「あの曲がよかった」って言われます。

――言葉がストレートで、強いですからね。

杏沙子:コントラスト強めって感じですよね。

――「流れ星」(『花火の魔法』収録)に続く、 疾走する青春ソング。

杏沙子:疾走してますね(笑)。

――青春という、戻れない季節。戻れない時間。「花火の魔法」もそうでしたけど、杏沙子さんは人一倍そこに気持ちが入るようですね。

杏沙子:もう本当にその通りです。消えてしまうもの、過ぎ去っていくもの、いつまでも残らないものに惹かれるんだと思う。言ってみれば「ファーストフライト」も青春な気がしますし。この2曲はどちらもパワーを持った曲だなって思うし、並び的にもよかったなと。自分としては両A面くらいの気持ちでいますね。

――歌詞も曲展開もエモーショナルだけど、ボーカルも過去最大にエモーショナルだし。

杏沙子:そこを感じ取ってもらえて嬉しいです。相当気合を入れて歌いましたから。静かなサビでピアノと私だけになるところは、半泣きになる気持ちで歌っていましたね。それぐらいやりきっちゃったほうがいいかなと思って。

――いや、本当によくこの曲の持つエモさをここまで真空パックすることができたなと。

杏沙子:歌入れの前日から、とにかくこの曲は振り切って感情を封じ込めないと映えないと思っていたので。受験のときにお母さんがくれた赤いパンツがあるんですけど、それを穿いて歌入れに臨みました(笑)。勝負どきにはいつもそれを穿くんです。「大丈夫」って刺繍が入っているんですけど。

――わははは(笑)。最高。

杏沙子:それくらい気合入れて臨まないと、この曲の熱を伝えきれないと思って。

――そしてもう1曲、『NHK みんなのうた』で放送されていた「ケチャップチャップ」も収録されています。冷蔵庫を開けたらケチャップがなくて、それをそのまま曲にしたんですよね。

杏沙子:はい。オムライスを作ろうと思ったらケチャップがなくて、近所のスーパーに買いに行く途中で“ケチャップチャップ~”って口ずさんでいたんですよ。それで、このまま曲にできるかもって。

――「みんなのうた」で放送されて、反響はどうでした?

杏沙子:お母さん世代や、小さい子どもたちに気に入ってもらえたのが嬉しかったですね。「ちびっこが歌ってたよ」って、友達が動画を送ってくれたりとかもして。また少し自分のなかで幅が広がった気がしました。

――このように3曲それぞれ違った魅力が詰まった初シングルで、聴き手の層もまた広がりそう。

杏沙子:「ファーストフライト」は夢を追いかけている人に長く聴いてもらえる曲になればいいなと思うし、「青春という名の季節」もいま聴いていいと思ってくれた若い子が大人になったときに青春を思い出すきっかけになればいいなと思うし。何より私にとっては“自分らしさってなんだろう”ってことをたくさん考えた約1年を経てのファーストシングルなので、ずっと大事にしていきたいですね。

(取材・文=内本順一)

■リリース情報
『ファーストフライト』
発売:8月7日(水)
<初回限定盤>
価格:3,200円(税抜)
“杏沙子 ワンマンライブ 「fermata」ライブ&ドキュメント 2019. 3. 30 Shibuya O-East”
収録DVD付き
<通常盤>
価格:1,200円(税抜)
<収録曲>
1. ファーストフライト  作詞:杏沙子 作曲:幕須介人 編曲:横山裕章
※ドラマL「ランウェイ24」(ABCテレビ)主題歌   (7月スタート)
2. 青春という名の季節  作詞・作曲:清家寛 編曲:横山裕章
3. ケチャップチャップ  作詞・作曲:杏沙子 編曲:山本隆二
※NHKみんなのうた(2019年4.5月放送)

<特典対象チェーン>
・ポストカードA:タワーレコード全国各店/タワーレコード オンライン
・ポストカードB:ビクターオンラインストア/WIZY
※ビクターオンラインストア/WIZYで販売されるミニタオル付きセット商品は、特典対象外となります。
・ポストカードC:WonderGOO/新星堂(一部店舗を除く)/新星堂WonderGOO楽天市場店
・デカジャケ(24cm×24cm):Amazon.co.jp 
※Amazon.co.jp では、特典つき商品のカートがアップされる。

■HP・SNS情報
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