>  > 姫乃たまの“地下アイドル人生”

「音楽のプロフェッショナルに聞く」特別編

姫乃たまが南波一海に語る、“地下アイドル人生”と卒業後の活動「試行錯誤しながら成長していく」

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 2019年4月30日をもって“地下アイドル卒業”を予定している姫乃たま。同日には東京・渋谷区文化総合センター大和田 さくらホールにて最後のワンマンライブ『パノラマ街道まっしぐら』を開催する。今回は連載「音楽のプロフェッショナルに聞く」特別編として、かねてより親交のある音楽ライター・南波一海が姫乃にインタビュー。10年に渡る“地下アイドル人生”を振り返りながら、これからの活動、卒業後のファンとの関係の築き方などをじっくりと語ってもらった。(編集部)

「地下アイドルとアダルトの仕事を行き来していた」

姫乃たま、南波一海

ーー今日は「地下アイドル人生の総括的なインタビューを」ということなんですが、姫乃さんのキャリアを振り返るとなると……。

姫乃:私がインタビュアーだったらやりたくないです! 地下アイドルとしては嬉しいですが……。

ーーできる限り頑張りたいと思います。そもそも僕が姫乃さんを認識したのは、キャットファイトをやっている頃(2012〜2013年)なんです。

姫乃:そんな時期から! ちょうど改名して、グラビアやエロ本の仕事に没頭していた頃ですね。

ーー最初ぱ*☆姫乃☆*゚名義だったんですよね。

姫乃:はい。活動当初は右も左も自分の疲れもわからなかったんですけど、あとからガタっとくるじゃないですか。活動を始めた2009年はまだまだ地下アイドルがアキバ系カルチャーの延長線上にあって、私はアキバ系に疎かったので、「これでいいのかな?」って試行錯誤した疲れがその頃は一気に来ていました。

ーー当時は「秋葉原の路上を経験してないくせに」みたいな目線もあったんですよね。

姫乃:ありましたねえ。2008〜2009年にSNSの普及で一気に地下アイドルが増えて、まさに私もそのひとりですけど、「甘い」みたいなことを言われてました。それ以前はなかなかライブハウスを貸し出してもらえなくて、秋葉原の歩行者天国とか、苦労して活動場所を開拓していたんですよね。それを経験してない世代は甘いっていう。実際、いい加減な子も多かったですよ(笑)。ブッキングライブなんて誰かしら来ないのが当たり前だったし。それは先輩たちも許せないですよ(笑)。ほんの10年前ですけど、なんだか大らかな時代でした。

ーーで、よくわからないままがむしゃらに地下アイドル活動をしていて、疲れが来ていたと。

姫乃:3年目くらいに緊張の糸が切れて鬱病になってしまって、一瞬活動休止もしたんですけど、それを救ってくれたのがエロ本でのライター仕事でした。地下アイドルのライブを初めて見た時、誰も他人の生き方や趣味を批判しないところに心を打たれたんですけど、アダルト業界の人たちは、読者の方も含めて、もっと自分自身に近い生きづらさが感じられて、交流することで心が救われてたんです。たとえば特殊性癖があって「自分だけじゃないか」って肩身の狭い思いをして生きてきたけど、インターネットが普及したことで初めて仲間に会えて……みたいな人にお話を聞けるんです。単純に文章を書くのが好きで、それが仕事になったのが嬉しくて、エロ本の仕事にどっぷりでした。キャットファイトをやっていたのは……古賀学さんっているじゃないですか?

ーー『水中ニーソ』の。

姫乃:はい。私、ああいうアンダーウォーター(水中に潜っている存在をターゲットにした性的嗜好)とかウェット&メッシー(人をさまざまな物で汚したり、濡らしたりする欧米発祥の性的嗜好)が好きで。ウェット&メッシーはエロ本の仕事をするうえで知ったんですけど、その関係で新宿ロフトプラスワンに「くすぐリングスNEO」というキャットファイトを取材しに行ったんです。それが衝撃で。

ーーそれでキャットファイトを主催したりしていたんですね。なので、僕が知った時点で姫乃さんはすでに地下アイドルとしてちょっと変わった立ち位置にいたんですよね。

姫乃:活動初期はどうしてもほかの新人の子たちと横並びにさせられるじゃないですか。性格的にそれがしんどくて。まあ誰でもそうだと思うんですけど。なるべく人と競いたくないんですよね。

ーーライターをやることによって、横並びの競争から外れたから楽になったということもよく言っていますよね。

姫乃:そうですね。文章を生業にしていると、ライバルから外されるというか。アイドルは短命だから短期集中しないといけないのに、文章書くってものすごく効率悪いですからね(笑)。

ーーその結果、逆に長く活動できるスタンスを確立したという。

姫乃:地下アイドルを長くやりたかったのかって言われるとまた別問題なんですけど、長生きしてしまったという感じですね。アダルト関係の仕事は水に合ってて、本当に好きでした。

ーー姫乃さんはアイドルを長くやりたいとは考えていなくて、流れに身を任せていたらこうなっていたというタイプですもんね。

姫乃:逆にいつ辞めるんだろうってずっと思ってました。それだけ居心地もよかったんだと思うんですけど。活動初期はインディーズのアイドルが今ほど単体のカルチャーとして独立していなかったから、最終的にはテレビに出てメジャーな芸能人になるんだっていう意気込みが業界全体に強く残っていたので、アダルトの仕事をしていると「経歴に傷がつく」とかよく言われましたね。

ーーまったくハンデになっていないですよね。それどころか強みになっている。以前、ブログに「AV女優になるのではないかという件について」というエントリで長文を残していますよね。

姫乃:地下アイドルとアダルトの仕事を行き来してたので、周囲もAV女優になるんじゃないか心配し始めて……。でもAV女優って、私なんかにはなれないですよ。アダルト業界への尊敬も込めて文章を書いたら、広がっていったんですよね。その流れで大きく状況が変わったなと思ったのは、僕とジョルジュのアルバムと本(『潜行~地下アイドルの人に言えない生活』)を出したときです。

ーー2015年の8月、9月。

姫乃:僕とジョルジュの最初のリリースイベントが秋葉原のタワレコであったんですけど、満員で、お客さんも知らない人ばっかりだったんですよ。それまでは地道にライブハウスでやって、握手して、会話して、関係値を積み上げてファンになってもらうっていうことが多かったので、飛び級したみたいでした。今まではなんだったんだろう、っていうくらい色んな人と一気に出会って。『潜行』のリリースイベントもチケットが売り切れて、まったく知らなかったような人がぎゅうぎゅうに見に来てくれて。

ーー別個に存在していたパズルのピースがパチっとハマった瞬間がその時期あたりだったんでしょうね。

姫乃:その直前に、おたぽるとブログに書いた文章が同時に話題になったんですよ。おたぽるは地下アイドルのルポで、ブログはさっき言っていただいたAV女優に関しての記事だったので、文章を書くエロ本出身の地下アイドルっていう、相当いびつな形で世間に認知され始めたのが2015年でした。それから本とCDのリリースがあって、という感じですね。

ーーちなみに2010年以降、アイドルが大きなブームになっていく流れの直接的な恩恵はあったんですか?

姫乃:うーん、強いて言えば、2009年頃はライブハウスが楽器弾かないやつには貸さない、という感じで本当に借りられなかったんですよ。LOFTさんがたまに貸してくれたりしたんですけど、まだまだ敷居が高くて。私が初めてライブをやったのが四谷のLive inn MAGIC(現Honey Burst)だったんですけど、そこはプレアイドルがずっと活動拠点にしていたライブハウスなんです。

ーー歴史がありますよね。

姫乃:ライブハウスはそこと神楽坂EXPLOSIONくらいで、あとは会議室やカラオケのパーティールームとか、飲食店で主催イベントをやったりしてました。AKB48がブームになってからは、徐々にライブハウスも貸してくれるようになっていって。それでも対応がひどいところもありました。オケを故意に途中で止められたりとか(笑)。トラブルでそういうことはよくありますけど。

ーーひどい(笑)。

姫乃:あとはそのあたりからオーディションの機会が増えて、ちらほらテレビに出たりすることがあったんですけど、雑に扱われたり、オーディションでセクハラみたいな質問をされて嫌な思いをしたりしている子もいました。

ーー無名のアイドルだからいいだろうと。

姫乃:それで地下アイドルが裏話をするトークイベントを始めたんですよ。いま思えば、それがおたぽるでルポを書くきっかけになっています。あ! アイドルブームの恩恵と言えば、渋さ知らズオーケストラが日比谷野音で全曲コラボするコンサートを開催して、HBY28っていう一般公募のアイドルと一曲だけ演奏する企画をやったんですよ。それに声をかけてもらって、野音で渋さと一緒に踊れて、共演者の小島麻由美さんのサインをもらえました。それが一番の恩恵かもしれません(笑)。

ーー最高じゃないですか。

姫乃:地下アイドルってまだ知られてないから、嫌な思いもするけど、珍しい肩書きだけでいろんな仕事がもらえるんじゃないかって気づいたきっかけだったと思います。

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