「LIke I do」インタビュー
新時代のSSW 川口レイジが語る、ギターとの“運命的な出会い”からLAでのコライトまで
洋楽を作っているわけでもない、でも完全なJ-POPを目指しているわけでもない
ーーでは、今回のシングル「Like I do」はどんなふうに作っていったのですか?
川口:マーティさんは普段作りためている曲がたくさんあって、「試しにちょっと聴いてみる?」とスタジオで聞かせてもらったのが、この曲の原型だったんです。聴いた瞬間、自分が歌っているイメージもすぐ浮かんできたので「この曲がいいです」とお伝えしました。歌詞もイメージがあったものを、僕の方で書き直したりしつつ仕上げていったんですけど、骨子となっているのはあくまでもマーティさんのデモ音源でしたね。
ーーサウンドプロダクションでこだわったところは?
川口:今回は“ラテン”に振り切ってみようという意識が初めからありました。あとは、一つ一つの音にものすごくこだわっています。アレンジの時ってよく、「ちょっとここ寂しいからギターを入れよう」とか「もっと盛り上げたほうがいいからストリングスを足そう」というふうに、音数を増やしていきがちなんですけど、それよりも一つ一つの音の存在感を大事にする方向で話を進めていきました。そうすることで、J-POPシーンの中でも聞き応えのある楽曲になるのではないかと思ったんです。洋楽を作っているわけでもない、でも完全なJ-POPを目指しているわけでもない、そのバランスを考えながら仕上げていきましたね。
ーーMVはどんなイメージで作りましたか?
川口:ビジュアルと歌詞とリンクさせているんですが、ガラスの箱の中が自分の心になっていて、その外側で僕自身がその箱の中を傍観しているんです。ガラスの中には女性がいたり、ダンサーがいたり、光の演出などで自分の心が乱れていく様を表現してもらっています。
ーーあの箱の中にいる女性は、川口さんの思う「女性」の象徴なのか、それとも過去の恋愛相手の象徴なのでしょうか。
川口:この曲のイメージでいうと後者ですね。歌詞の中で〈君は必要ない〉と言ったり、〈まだ愛してるよ〉と言ったり、心が揺れ動いている部分を映像化してもらいました。
ーー歌詞はいつもどんなふうに考えているのですか?
川口:まずテーマを決めて、そこから物語を膨らませていく感じです。基本的には僕が見聞きしたもの、体験したことを中心に考えていくので、完全なフィクションではないですね。例えば過去の出来事をもとにしつつ「もう少しこうなっていたら、ロマンチックだったのにな」みたいな部分を付け足して、ロマンチックな歌詞にすることもあります。
ーーそういう、物語を創作していく上で影響を受けた作家などいますか?
川口:それが、小さい頃からあまり活字に触れてこなかったので、全くのオリジナルというか、自分の中から出てきたものだけで表現しているんですよ。そのぶん最初は歌詞を書くことにものすごく苦労したし、何度もリライトを求められて悩みながら書いていました。「これじゃあ、心に残らない」と言われれば、「心に残る文章ってどんな感じなのだろう……?」と思いながら他の方の歌詞を読んだりもしていましたが、どうして自分の歌詞がこんなにダメ出しされるのか正直わからなくて悩んでいました。
そんな感じでしばらくは彷徨っていたのですが、ある時から少し吹っ切れました。ロサンゼルスで仕事をしたアーティストたちは、曲作りに対して全く悩んでいないんですよ。ポンポンポン、と曲を作って「どうだ最高だろう?」って(笑)。あのポジティブさは見習いたいなと思いました。
ーー今後、コラボしてみたいアーティストはいますか?
川口:たくさんいます。例えばThe Chainsmokersさんや、ラテン系だとカミラ・カベロさん。ブルーノ・マーズさんのような、ファンクとポップを見事に融合させた憧れの方とも仕事ができたら嬉しいですね。
ーーInstagramでは、アデルやブルーノ・マーズ、BIGBANG(SOL)、玉置浩二、ジェイムス・アーサー、エド・シーランなど、様々なアーティストのカバーを披露していますが、シンガーとしては今後どうなりたいと思っていますか?
川口:好きな声はアデルさんなんです。クラック感というか、瑞々しく透き通った声よりは、パーンと乾いた金管楽器みたいな声にすごく憧れるんですよね。残念ながら、自分の喉はそんなふうに開かないのですが。ただ、似た成分は出せるんですよ。金管楽器というよりは木管楽器みたいな……(笑)。そこを極めて「いいエイジングが入った木管楽器」になるよう頑張ります。
(取材・文=黒田隆憲/写真=池村隆志)
■配信情報
デジタルシングル「Like I do」
6月19日より配信スタート
配信はこちらから