感覚ピエロ、結成5年を経て獲得したバンドとしての団結力 最新ツアー東京公演を見て

感覚ピエロ、結成5年で獲得した団結力

 音が止みMCに入りそうだと察した途端、オーディエンスはメンバーの名前をよく叫ぶ。また、先述の通りレアなセットリストだったため、メンバーが「聴きたい曲聴けたー?」と投げかけたものの、フロアから返ってくるのは、「まだー!」「オールナイトでやって!」「お金なら出すから!」といった声である。このようにオーディエンスはとにかく活気があり、前のめりにライブを楽しもうとしているのだということがよく伝わってきた。また、普段のワンマンよりもキャパシティの小さい会場ということもあり、オーディエンスの熱量はステージへダイレクトに伝わっていた様子。秋月琢登(Gt)は「今日はえらい騒がしいのう。カラオケでも行ってきたんか?」と笑っていた。

 過去に二度も47都道府県ツアーを行うなど、ライブ活動を積極的に行ってきた感覚ピエロ。5年の月日はバンドに団結感をもたらしたようだが、それはメンバーだけでなくファンも含めたものであるよう。メンバーが、感覚ピエロのライブはみんなで一緒に作り出すものだという趣旨の発言を頻繁にしていたのにも頷けた。アンコールになると、聴きたい曲がないかとオーディエンスに尋ねていた横山。たくさん上がった声に対し聖徳太子さながら耳を傾けつつ「踊る? 歌う?」とその場で演奏曲を考えていた場面は、まさに“みんなで作る”という面を象徴するようなものだった。

 横山はオーディエンスへ「今までワンマン何回もやってきたけどかつて以上に活き活きした顔してんぞ、お前ら!」と笑っていたし、バンド自身について「一番楽しいライブしてます、最近の俺ら」と話していた。また、ライブ後半には曲の繋ぎを間違え、演奏が中断するトラブルもあったが、直後にメンバーが漫談のような調子でトークを始めるなど、素のテンションが垣間見えた場面もあった(もちろん悔しがってもいたが)。

 このバンド特有のトリッキーなサウンド・曲構成やくすりと笑える歌詞が、未来のファンに振り向いてもらうための手段だったのだとしたら、現在はその段階を越え、5年かけて集めた仲間と肩を組みながら徒党を組んでいるようなイメージである。だから今の彼らのライブでは、バンドも観客も、心を開いて自由にやることができているのだ。

 ここから先はツーマン公演が控えているが、“みんなで作るライブ”に他のバンドやそのファンをどの程度巻き込めるのか。また、幕張のような大会場に、今のような自由な空気感を同程度の(あるいはそれ以上の)濃度で持っていくことができるのか。その辺りが今後における重要なポイントだろう。ツアーは11月4日、『感覚ピエロ 5-6th anniversary『LIVE - RATION 2019 FINAL』~幕張ヴァージンはあなたのもの~』まで続いていく。

(取材・文=蜂須賀ちなみ)

感覚ピエロ オフィシャルサイト

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