1st Digital Single『VIOLATION*』インタビュー
ロイ-RöE-が語る、『ストロベリーナイト・サーガ』OP曲で貫いたクリエイティブへの強い意思
わかりやすいだけの歌詞は、歌詞にする意味がない
ーー昨年の秋にunBORDEからメジャーデビュー。活動や制作に関して、何か変化したところはありますか?
ロイ:いままでは自己完結していたんですけど、デビューしてから、クリエイターの方と関わることが増えて。「VIOLATION*」のジャケットをデザインしてくれたQ-TAさんもそうですけど、自分がピックアップした方に声をかけて、“ロイ”チームに加わってもらっています。自分が考えていることだったり、一緒に作ったものを共有しながら作品が出来上がっていくのは大きく変わったところですね。
ーーロイさんが思い描いているビジョンを具現化できる環境が出来つつある、と。
ロイ:そうですね。いままでは自分の頭のなかを人に見せようとしてなかったんですよ。曲だけ作って、「あとはご自由に」という感じだったんですが、最近は「こういう映像を思い描きながら曲を作りました」とか「なのでこういう衣装を作ってほしいです」ということも伝えるようになって。参加してくれるみなさんもロイの好みだったり、嫌いなことも理解してくれてますね。最初はどう伝えていいかわからなかったんですよ。イメージはあるんだけど、伝えるための言葉がなかったので。でも、みなさんと接しているうちに「この人にはこういう伝え方をしたほうがいいな」とか「あの映画の感じで」という言い方もできるようになって。
ーー曲を作るときは、最初に映像があるんですね。
ロイ:そう、最初に映像が浮かぶんですよ。「少女のヒロインがいて、下着でベッドの上にいて……」とか。ちょっと乱暴な女の子がヒロインの映画が好きっていうのもあるんですけどね。特にフランス映画とか、チェコの映画とか。そこから細部を考えていって、それをクリエイターのみなさんに伝えながら作っていく感じですね。
ーー音楽、ビジュアル、映像をトータルで組み立てていく。
ロイ:大変だけど楽しいです(笑)。人にすべて任せてしまうと、必ず「ここは違うな」という部分が出てくるじゃないですか。それで後悔するんだったら、やれることはやったほうがいいし、そのほうがしっかり世界観を構築できるので。
ーーなるほど。では、シングル曲「VIOLATION*」について聞かせてください。制作はやはり映像をイメージするところからのスタートですか?
ロイ:そうですね。今回はドラマ(『ストロベリーナイト・サーガ』)のタイアップで、映像がすでにあるのでやりやすかったです。『ストロベリーナイト・サーガ』のロゴや映像をインプットして、そのうえに自分をどう乗せるかっていう。ヒロインの姫川の目線で歌詞を書くというのも決めていたし、自分のなかには『火の鳥』(手塚治虫)のイメージもあったんですよね。宇宙、命、細胞とか、心臓がバクバク動く感じだったり。そこからトラックを作り始めて、自分のなかにあるイメージに寄せていきました。
ーー作曲・編曲は音楽プロデューサー・チームのFace 2 fAKEと共作ですね。
ロイ:まず、サビのメロディを一緒に作ったんです。それを持って帰って、自分でアレンジを組み立てて、“こういう雰囲気にしたいです”とうデモを作って。いきなり「『火の鳥』みたいなイメージにしたい」って言っても伝わらないので(笑)、まずはデモを聴いてもらって、Face 2 fAKEさんとやりとりしながら固めていきました。自分のデモは美しいストリングスが入っていたんですけど、Face 2 fAKEさんに歪んでいたり、暴力的な雰囲気の音を入れてもらって。両方が混ざって、すごくいい感じになりましたね。Face 2 fAKEさんとは聴いてきた音楽、年齢、性別もぜんぜん違うし、真逆なんですよ。自分とは違うテイストが欲しかったので、一緒にやれてよかったです。
ーー“自分と違うテイストを入れる”というのが狙いだった、と。
ロイ:はい。「VIOLATION*」の前にも自分で10曲くらい作ったんですよ。いい曲もあったんですけど、やっぱり“ロイ”の曲でしかなくて。せっかく素敵なドラマのオープニングテーマを任せてもらえるんだから、もっといい曲にしたいと思って、最後に「誰かと一緒に作ってみよう」と。「VIOLATION*」が出来たとき、「これがいちばんいい」と思えたんですよね。
ーー曲を良くするために最善な方法を選んだということですね。
ロイ:そうですね。もちろん、こだわってるところはありましたけどね。どんなに「キャッチーじゃない」「わかりづらい」と言われても、「ここは絶対に直さないほうがいい」ということもあったし。わかりやすいだけの歌詞は、歌詞にする意味がないと思うんですよ。そういう言葉はTwitterに書けばいいし(笑)、歌詞はアートなので、作り手はとことんこだわったほうがいい。リスナーの方には自由に受け取ってもらいたいし、BGMとして聞き流してもらってもいんだけど、出すほうは「こうしたい」という意思を持って作らないと。もしかすると、周りからは「めんどくさい女だな」と思われてるかもしれないけど(笑)、言いたいことは言うようにしてます。
ーークリエイティブにとってはすごく大事なことだと思います。
ロイ:むかしは、なかなか言えなかったんですけどね。まわりは自分よりキャリアのある人たちばかりだったし、「この部分のベースのフレーズをこうしたい」と思っても、緊張してしまって、気持ちを押し殺したり。でも、納得できないまま作品を出すとしたら、めっちゃ失礼じゃないですか。「このケーキ、自信ないけど食べてみて」とは言えない。やっぱり「すごくおいしいから食べて」って差し出さないと。