『千葉KENZOの踊ってますか?』インタビュー
千葉涼平(w-inds.)×KENZO(DA PUMP)特別対談「ダンスの魅力に触れやすい時代に」
w-inds.とDA PUMP、それぞれのダンススタイル
――では、ここから話の切り口を変えて、w-inds.、DA PUMPのダンススタイルについて聞いていけたらと。w-inds.は、時期によってけっこうスタイルが変わりますよね。近年だと『INVISIBLE』(2017年)の頃には‟ダンスに特化したw-inds.を見せる”というテーマのもとに「We Don't Need To Talk Anymore」などで振りの密度の濃いダンスを見せていましたが、『100』(2018年)の時期にはまた違って、抜きの美学を感じさせるものにシフトしていったというか。
涼平:変わりますね。出すアルバムのカラーにもよりますけど、パフォーマンス面でも1年を通してこういう感じにしていこう、というテーマがあるので、それに沿って作っていく感じです。元々“去年はこうだったから今年もそれを頑張ろう”という感じではないグループで、(橘)慶太がとにかく同じことをするのが嫌な人だから、どんどん移り変わっていく感じ。僕自身も同じスタイルは飽きちゃってすぐつまんなくなっちゃう。だからスタイルを変えていくのは楽しいですね。
――現状のw-inds.のダンスはどういうモードなんですか?
涼平:『100』は、『INVISIBLE』に比べたら振りが少なめで、だいぶフリースタイルが多くなりましたね。その代わりライブでは楽器をやったり、演出のみで見せたり、他の表現が増えました。ダンスが減っている分、踊るときにはそこにぎゅっと凝縮した見せ方のほうが多かったかもしれない。
――再び‟すごい踊ってます!”モードのw-inds.を見れる日は来そうですか?
涼平:いつか来ると思うので楽しみにしていてください。振り返ると体感的に一番踊ってたのは、「NEW WORLD」(2009年)とかEDMをガンガンやってた時期かなと思います。ダンス的な目線でも、細かい振りを凝縮した隙間のない感じのダンスが流行っていた時期で。サウンドともリンクさせてそういうこともやってましたけど、最近はそうでもなくて、ちょっと抜いたダンスを考えたりしています。今後のダンススタイルはまあ、気分……でしょうね。
――なるほど(笑)。DA PUMPはフェスみたいな場だと、たとえばYORIさんが(筋肉をはじくような動きの)ポップ、TOMOさんが(動きが激しく挑発的な)クランプですとか、メンバーのみなさんの得意ジャンルをショーケース的に披露されることも多くて、ダンスの玉手箱的なグループというイメージがあります。KENZOさんはグループとしてのパフォーマンスのスタンスをどういう風に捉えていますか?
KENZO:全員が各ジャンルを専門には踊るんですけど、どのジャンルに特化していこうというのはないんです。総じてメンバーはみんな、ダンスが好きなので。強いていえばグループ全体のパフォーマンスとして振りを付けていくときに、その振りのスタイルに合わせてみんなで練習していく形です。その中でこの楽曲にはこういうジャンルのダンスがハマるかな? というあてはめ方もありますし、この曲の振りは誰々が作ってよとなった場合にその人が提示してきたスタイルになる場合もありますし、その時々でさまざまに変化していく感じかなと思います。
――1曲の振りを作るときには、全員の話し合いで? それともどなたかがベースを作る形ですか?
KENZO:うちは人数が多いから、全員で作ると7人それぞれの意見が出てくるんですよ。なので最初に大まかなテーマを決めて、そこから誰かがたたき台、骨組みを作ってみんなで肉付けしていくことが最近は多いですね。この表現にはこの人が合うんじゃないかな? みたいなところから始まって、自分たちで全体の演出までができている感じです。今はあうんの呼吸というか、こういう場面では誰に任せれば大丈夫、というのが手に取るようにわかる。そのくらい、グループ内では意思疎通ができてると思います。
――では、改めて、KENZOさんから見た、w-inds.、涼平さんのパフォーマンスについての印象を教えてください。
KENZO:楽曲的にもそうなんですけど、ダンス的な目線でもw-inds.はトレンドを取り入れるのがめちゃめちゃ早いですね。最先端のダンスとサウンドを組み合わせて提示できる、唯一無二のグループだなと思います。涼平個人に対しては、そういう流行りのダンスだけをやっていればいいんじゃないの? と思うところもあるんですけど(笑)。これはダンサーにしかわからないニュアンスかもしれないですけど、涼平のダンスは技術的な部分や細かいクオリティの部分が密で、それは一日二日ではとてもモノにはできないレベルで。長い年月の積み重ねがあるからこそ極められる動きだったり、洗練された動きを組み合わせているから、ダンス自体に説得力があるんですよ。「じゃあここでちょっとソロやってよ」と言われたときに、確実に予想を超えるクオリティのパフォーマンスを提示できるので、シンプルにすごいと思います。
――デビュー19年目の今でもダンスやアクロバットの技の練習動画をよくTwitterに上げていて、ほんとにダンスが好きで練習熱心な方なんだということは、よく知られているところかと思います。
KENZO:ファンの方は‟今日もダンスの練習やってるんだ、すごいな”みたいに思うのかもしれないですけど、こっちは‟またとんでもないことやってるぞ!?”とビビるわけですよ。“その動きをダンサーの何人が果たしてできるんだ?”というレベルのことまでやってますから。ダンスやってるヤツらからも確実にリスペクトを集めるような、日本でも数少ない‟ダンスで発信できる人”だと思います。
――では涼平さんから見たDA PUMP、KENZOさんのパフォーマンスはいかがですか?
涼平:すごく昔からDA PUMPというグループを見てきているんですけど、最近のスタイルはダンスをよく知らない人に対してもわかりやすくダンスの魅力を届けよう! という感じで、お客さんに寄り添っているなと思います。
KENZO:(無言で深くうなずく)
涼平:新曲の「桜」も、サビはマネしやすい振付になってますしね。それってすごく大事なことで、こだわりすぎてコアなところに行きすぎても、見ている人に届かなかったら自己満足で終わってしまうじゃないですか。テレビみたいな場ではそういう形でやっていますけど、ワンマンに行けば最新のダンスも見せてくれたり、逆によりオールドスクール感のあるマニアックなこともやってたりするんですよ。
あと、ISSAくんが歌いながらヒット(注※筋肉をはじくような動き)を打ってたりして、‟なんでそれで声ブレないんだよ?”って新鮮にビックリしたりします。普通歌いながらやったら絶対ブレますからね。あれは化け物ですよ。僕的には、DA PUMPのそういうすごさももっと世間に伝わったらうれしいなと思います。「ISSAくん、歌上手いね」だけじゃなくて、なんであれだけ歌いながら踊って、声もまったくブレないのか。
KENZO:やってることが異次元なんですよね。ISSAさんは。技術的なことは企業秘密とかよく言ってますけど、あれも長年かけて洗練されてきた技術で。声の出し方ひとつとっても一年二年じゃ出せないような積み重ねがあって、マイクチェックだとか一つ一つの細かいこだわりから成り立っているもの。同じ現場でずっとやってきたけど、改めてこの人の後ろで踊りたい! といつも思います。
――加入して10年経っても、やっぱり歌って踊るISSAさんのカリスマ感は新鮮ですか?
KENZO:めちゃめちゃ新鮮ですね。長くやってきて少し感覚が麻痺しちゃってるとこもありますし、パフォーマーなので基本的には踊りに集中しているんですけど、一緒にステージに立っていてもふと俯瞰の目線で見たときに“この人は本物だな”って、肌で感じます。
――ISSAさんの話でつい盛り上がってしまいましたが、涼平さんから見たダンサーとしてのKENZOさんは……?
涼平:オールマイティ、ですね。多ジャンル踊れちゃうし、できないことないんじゃないかなって思っちゃう。
KENZO:うーん、バレエはそうでもない、かも(笑)。
涼平:でもストリート系ならできないものはなさそう。ジャンルだけじゃなくて、たとえば立ちのダンスが上手かったらフロア技が苦手、とかいうダンサーは多いですから。日本でKENZOみたいに器用なダンサーはそれほど多くないと思います。
KENZO:ジャンルで特化してやっている人も多いからね。自分の場合はいいなと思ったら自分もやってみよう、みたいな感じでダンスを好きでいたら、最終的にどんなジャンルも好きだ! になっちゃっただけで。
――グループでのパフォーマンスや、これまで出場したコンテストではロック(注※DA PUMPの振付にもよく用いられる、激しい動き→静止の流れが鍵(ロック)を連想させるダンス)がお得意なイメージがあったんですが。
KENZO:グループのときはグループの見せ方をするというのが好きなので、多ジャンル感みたいなものはあえて、出していないんですよね。でも自分がソロでやるときは今流行りのコレオグラフ(トレンドの曲を振り付けて踊ること)もやりますし。
涼平:そこもすごいなと思うんだよね。
KENZO:もともとヒップホップを始めたのが19歳くらいで、最初に受けたレッスンがLAスタイル(歌詞を連想させる動きなどを組み込んだなめらかな動きのヒップホップ)だったんですよ。このLAスタイルはコレオグラフに近い感じでそこから入っているので、ヒップホップに対しても、トレンドの曲でトレンドの振付を踊るっていうことにもあまり抵抗がないというのはあると思います。