眩暈SIRENが表現する、暗闇に差す一筋の救済 楽曲を通した“感情の共有と共鳴”を見た

眩暈SIREN、楽曲を通した“感情の共有と共鳴” 

 眩暈SIRENの全国ツアー『囚人のジレンマ TOUR 2019』が1〜2月にかけて開催。このツアーの最終公演が2月10日、渋谷WWW Xにて行われた。このツアーは昨年11月にリリースされた4th EP『囚人のジレンマ』を携えて名古屋、大阪、福岡、東京の4都市で開催されたもので、各公演にはThe Winking Owl、嘘とカメレオン、神はサイコロを振らない、秋山黄色といったアーティストがゲストアクトとして参加。ツアーファイナルとなった東京公演は眩暈SIRENと秋山黄色という注目アクトによる組み合わせとあって、大勢のロックファンが駆けつけた。

 ライブのトップバッターを務めるのは、1月23日に1stミニアルバム『Hello my shoes』をリリースしたばかりの秋山黄色。ギター&ボーカルの秋山に加え、ベースとドラムというシンプルなトリオ編成で、「やさぐれカイドー」からライブをスタートさせる。音源ではところどころに繊細さも見え隠れする彼の楽曲だが、ライブでは太い音と豪快なアンサンブルで会場の空気をグイグイと引っ張っていく。歌詞に合わせて感情を絶妙にコントロールする(ように見えた)、存在感が強い秋山の歌声は圧倒的なものがあり、たった1曲で魅了されたオーディエンスも多かったのではないだろうか。

 ライブは『Hello my shoes』からの楽曲に加え、アルバム未収録の「クラッカー・シャドー」「Rainy day」といったナンバーを交えて進行していく。ヒリヒリした90年代のUSオルタナティブロックと2000年代以降のJ-POP/J-ROCK、両者の良い部分を程よいバランスでミックスしたかのようなサウンドや、過去に経験したことのある痛みや孤独などに共感を覚える歌詞は、筆者のように決して若くはない層にもストレートに響くものがある。秋山の「本気でやるんで、ついてきてください」という言葉に続いて披露されたラストナンバー「猿上がりシティーポップ」では、何かを爆発させたかのようなエネルギーに満ちた演奏と歌で会場の熱を一気に上昇させる。これに応えるように、フロアのオーディエンスも前のめりな盛り上がりで場を盛り上げ、ステージからぶちまけられたカオティックなノイズを思う存分浴びたところで全5曲にわたるライブは終了した。

 続いてステージに登場したのは、この日の主役である眩暈SIREN。ステージ後方の暗幕が外されると、「私は自分が嫌いです」という独白をモチーフにしたSEとともに、そのSEやセリフに合った映像が映し出されていく。早くもここで独自の世界へと引き込まれたところでバンドメンバーが登場し、そのまま「ジェンガ」から勢いよくライブをスタートさせた。

 ダイナミックなバンドアンサンブルとメロディアスな歌からは、CDで聴く以上の説得力が伝わってくるものがある。曲によっては昨今のラウドロックとの共通点も見受けられるが、改めてこの日のライブを観て感じたのは言葉に対する強いこだわり、その言葉をより効果的に伝えるためのバンドアレンジと映像表現が、非常に独創的だということだ。

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