Perfumeが次に越えるのは“世界”への境界線? 挑戦の1年振り返りと2019年への期待

様々な境界線を乗り越える存在として

 もともとローカルアイドルを出自とし、今ではカテゴリーを横断した活躍を続けるPerfumeはこれまでも「様々な境界線を乗り越える存在」だった。2018年は前述した挑戦を通じて、グループとしてのそんな色合いがさらに強まったように思える。ここでは3つの観点から掘り下げてみたい。

①「テクノロジー」と「ヒューマン」

 Perfumeの代名詞になりつつある「テクノロジー」だが、チームPerfumeは「ただの新しいモノ好き」として最新技術を振り回しているわけではない。

 そんな思想がよりクリアに現れたのが、『Reframe』での「願い」のパフォーマンス。ファンがネット上に投稿したそれぞれの願いが3人の内部に取り込まれていくような映像演出は、「ファンの思いを背負って活動するPerfume」「ファンまで含めてのPerfume(=彼女たちのドキュメンタリー映画でもタイトルに冠された「WE ARE Perfume」という概念)」のあり方をよりリアルに表現するものだった。

 Perfumeが持つ人間らしさ、温かさと、それをさらに増幅させる装置としてのテクノロジー。人間性と技術を二律背反として捉えるのではなく、境界線を壊して融合させるようなPerfumeのチャレンジは、大きく言えば未来の社会のあるべき姿を体現している。

②「お茶の間」と「アート」

 決して簡単ではないそんな取り組みと向き合っているPerfumeだが、彼女たちが「普通の人の視線」を失っていないということはとても重要なのではないかと思う。

 相変わらずラジオやライブのMCでは肩の力の抜けたトークを展開し、年明け2019年の正月には『Eテレ60特番 Eうた♪ココロの大冒険』(NHK Eテレ)で人形劇にも興じた。

 キャリアを積んでもPerfumeは「未来志向のアーティスト」ということをことさらに誇示せず、ナチュラルにお茶の間にアクセスできる存在感を維持している。このバランス感覚は、3人のキャラクターのなせる技だろう。

③「女の子」と「女性」

 今年2月で3人それぞれが30歳となるPerfume。20代半ばでベテラン扱いされることも多い女性グループのシーンにおいて、いまだ一線級で活躍しているPerfumeはそれだけで前人未踏の道を歩んでいると言える。

 歳を重ねる楽しさを各所で言葉にしているPerfumeだが、パフォーマンス面においても「女の子らしさ」ではなく大人としてのしなやかさを感じさせるものが増えてきた。

 振付を手掛けるMIKIKOの「年相応がすてきで肯定したいことだというメッセージは、Perfumeのパフォーマンスを通して、伝えていきたいことの一つ」(『装苑』2016年5月号)という言葉の通り、彼女たちは「若さ」だけではない女性の美しさをその活動で表現している。

 「テクノロジー」と「ヒューマン」、「お茶の間」と「アート」、「女の子」と「女性」。対立概念になり得るものを軽やかに行き来しながら走り続けるPerfumeの存在は、ファンだけでなく同業者にも大きな勇気を与えているのではないだろうか。

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