fhána 佐藤純一が語る、5年間の“STORIES”  「僕は実存をめぐる戦いの感覚を引きずっている」

fhánaの5年間の「STORIES」 とこれから

 fhánaが、12月12日に5th Anniversary BEST ALBUM「STORIES」を発売した。デビューから生み出されてきた名曲はもちろん、書き下ろしの新曲である「STORIES」も収録された本作は、まさにfhánaの「STORY」が凝縮された内容となっている。今回、フロントマン・佐藤純一にfhánaが歩んできた軌跡とこの先の展望について聞いた。(編集部)

過去現在未来と聴いてくれる人みんなの「物語たち」

ーーロックフェスや海外のイベントなどに出演して、興味を持ってくれる人が増えていくなかでのベストアルバム発売というのは、すごくタイミングがいいですね。

佐藤純一(以下、佐藤):偶然が必然になったというか、確かにタイミングがいいですね。

ーー5年という月日は、「大きく変わった」という人もいれば「何も変わっていない」という人もいます。佐藤さんはこの5年間を振り返ってどちらだと思いますか?

佐藤:4人並んだアーティスト写真やSNSに上げる写真、リハで鏡ごしに4人映ったときに「アーティストっぽくなったな」とは思いますね(笑)。昔は学生みたいなふわふわした感じがあって……今も良い意味でそういう部分は残っているんですけど。

ーーfhánaを取り巻く環境についてはどうですか?

佐藤:僕らが変わったつもりはなくて、自分たちより後にデビューしたアーティストがたくさん出てきたり、周りからの扱われ方や、ベスト盤を出しましょうという話が持ち上がることを含め、もう新人じゃないんだなと、ふと気付くというか(笑)。ただ、towanaが喉の手術をしたりと、バンドとしては色んなことがあった、濃密な5年であることは間違いないです。ベスト盤についてもレーベルから「ベスト盤を出します」という話があって、「はい、わかりました」という感じだったんですが、書き下ろしの新曲である「STORIES」に関しては、3rdアルバムの『World Atlas』を作っているときから「来年は5周年だし、タイアップどうこうは関係なく、5周年記念ソングを作ろう」と思っていました。そこにベストアルバムの話が来たので、このタイミングならバッチリだと。なので、ベスト盤でもあり、『STORIES』というシングルの超豪華特典盤、という捉え方もできます(笑)。

ーーベストありきでこの曲が作られたのかと思っていました。fhánaの軌跡を辿りつつ、その先を歌った曲ですから。

佐藤:過去を振り返りたかったわけではないので、未来を向いた作品にするためにはどうしたら良いのかをずっと考えていて。towanaも前からライブ映像ではなくて、外でも聴いてもらえるライブ音源を出したいと言っていたし、僕は僕で『fhána World Atlas Tour 2018』のファイナルは手応えがあったので、これをフルでパッケージングしたいと思っていたこともあり、最終的に「それ、全部入れれるんじゃない!?」と。ただのベストじゃなくて、そうやって一つの作品としての形ができたときに、「これは『STORY』だ!」とタイトルが浮かんだんです。

ーーその段階では「STORY」だったんですね。そこから複数形の「STORIES」になった経緯は?

佐藤:fhánaは物語性を重視した楽曲作りをしてきましたし、バンドの活動もアニメも“物語”だし、聴いてくれる人たちにもそれぞれの“物語”がありますよね。内容としても、ライブ映像では現在の“物語”を見てもらえて、新曲では未来の“物語”を想像してもらえて、来年のライブ(『fhána 5th Anniversary SPECIAL LIVE』)も“物語”が交差する場所だし、バンドの過去現在未来と聴いてくれる人みんなの「物語たち」が集まったアルバムでもあるわけで。ジャケット写真の3日前に「これは『STORIES』だ!」と確信して、towanaに「ベスト盤も新曲のタイトルも『STORIES』にすることにした。fhánaのこれまでの物語とこれからの物語を紡いだ、物語は続いていくという歌詞を書いてください」と伝えた結果、この歌詞が上がってきたんです。

ーー〈続いていくストーリー〉〈僕らのストーリー〉というフレーズは、まさに“これまでとこれから”を表現していますね。

佐藤:はい。この曲が上がってきたことで、一つの作品として意味を持つものになったなと思いました。

ーーモノとしてのベストアルバムに、コンテクストがついた瞬間だったわけですね。そして新曲「STORIES」がその軸にあると。

佐藤:曲ができたのは最近で、思いついたときは影も形もなかったんですが、この曲の歌詞はtowanaに書いてもらおうとは決めていました。そのための布石として「ユーレカ」があったというか。

ーー13thシングル・3rdアルバムのトピックでもあった「towanaさんの初作詞」は、「STORIES」への伏線でもあったんですね。「STORIES」はダンスミュージックとしての機能も持ちつつ、UKのシンセポップ~USのトロピカルハウス~ポップスっぽさも感じて、良い意味で国籍のない楽曲だと思いました。

佐藤:最初にあったのは“5周年だから”と大げさな曲にはしたくないということで。大団円みたいにしないで、サラッと次を見据えた曲にしたくて、シンプルな曲であることは意識しました。通常盤はシングル表題曲集+新曲、初回限定盤はライブベスト音源とライブ映像を付ける、という形になってから曲を作り始めましたね。シングルの表題曲はアニメタイアップで情報密度の高い曲が集まっていて、そこと良い対比になるのかなとも思ったんです。サウンド的には2018年の終わりに出す曲なので、まさにいま挙げていただいたような、最近好きなサウンドの質感は取り入れたいということで、USっぽさとUKっぽさは意識しました。The 1975みたいな雰囲気とか、The Chainsmokersみたいに内省的なEDMだけどアンビエントな音像みたいな。

ーーまさに「THE SOUND」や「Closer」のような要素を感じます。ただ、その2組の要素を組み合わせると、内省的な音楽になると思うんですよ。サビのコーラス含め、もう少し陽の要素を感じるんですが、その明るさについてのリファレンスはありますか?

佐藤:ああ、確かにコーラス部分は明るさがありますよね。そのあたりはOne Directionみたいな弾けた感じを意識してみたんですけど。

ーーたしかに、コーラスの感じは近いですね。fhánaというベースの上で、The 1975とThe ChainsmokersとOne Directionをブレンドしたというのは面白いです。ライブでやっている画もすぐに思い浮かびましたし。

佐藤:まさに、ライブの新たな定番曲になればいい、と思って作っていました。

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