fhána 佐藤純一が語る、5年間の“STORIES”  「僕は実存をめぐる戦いの感覚を引きずっている」

fhánaの5年間の「STORIES」 とこれから

”THE fhána”みたいな世界観を出せた曲

ーー改めて振り返って、転換点だと思う曲は?

佐藤:「divine intervention」と「星屑のインターリュード」と「青空のラプソディ」ですね。1stシングルの「ケセラセラ」と2ndシングルの「tiny lamp」は、もともと僕がFLEET(佐藤が以前所属していたバンド)の頃から持ってた音楽性の引き出しの中から作った曲なんです。でも、「divine intervention」は、僕にも他のメンバーにも、こういう曲調の引き出しは無かった。バトルものの世界観に合わせて、fhánaが初めて作った“THE アニソン”といえる曲だと思うんですよ。もちろん、ただのアニソンで収まらないくらいの音楽的な要素は入れたつもりなんですけど。

ーーただ疾走感のあるロックではなく、ビートをドラムンベースっぽく作ったり。

佐藤:ABメロのコード進行であるとか、展開であるとか。とはいえ当時は“アニソンっぽい曲”を作れるのかという不安もありましたし、“アニメタイアップ”という他者からの要請がなければそういう曲は作れなかったわけで。自分の引き出しにないものから作ったら、ライブでも人気で、みんなから愛される曲になった、という成功体験をした最初の楽曲なんです。

ーーなるほど。では「星屑のインターリュード」については?

佐藤:「星屑のインターリュード」は、「fhánaといえばこの曲」みたいに言われることも多いですし、確かにこの曲と「Outside of Melancholy 〜憂鬱の向こう側〜」は“fhánaっぽい曲”だとは思うんですよ。キャッチーでポップな曲だけど、プログレッシヴな構成で間奏も長くてトータルが6分以上あって、普通のポップスには収まっていない。音もヒンヤリしたデジタルな質感もありつつ、エモーショナルで切なく泣けるメロディだし、リズムにはブラックミュージックの要素が入っていて……と独特のバランスで出来上がっている曲で。みんな「この曲は新しい」と言ってくれていて、ライブでも盛り上がる、そういう”THE fhána”みたいな世界観、音の雰囲気を出せたのはこの曲なのかなと。

ーーブラックミュージック感というと、もう一つターニングポイントに挙げた「青空のラプソディ」もそうですよね。

佐藤:このブラックミュージック感はどこからきているかというと、やはり中高生の頃から好きだった小沢健二さんや、彼のルーツになっているフィリーソウルなどがベースになっているんです。FLEETの頃は初期のコーネリアスやフリッパーズ・ギター、スーパーカーのようなギターポップ・ギターロックっぽさや、リズムはエレクトロなものを意識していたんですが、そこにオザケン的なブラックミュージック感が入ったのが「星屑のインターリュード」で。その要素を爆発させたのが「青空のラプソディ」といえます。この曲はアニメ『小林さんちのメイドラゴン』のOPテーマであり、京アニ(京都アニメーション)作品ということで、MVは自分たちが踊るものにしたり(参考:fhánaが初の京アニ作品主題歌で“踊った”理由)。みんなが盛り上がれるハッピーな曲だけど、いつか来る別れや終わりを歌う切なさや儚さがあったりと、色んな要素が重なって、fhánaの中で一番バズった曲になって。世界のリスナーからも受け入れてもらい、この曲をリリースして以降は、海外のイベントに呼ばれることが多くなりました。

ーーオザケンさんの名前も出ましたが、ライブ映像には「今夜はブギー・バック」のカバーも収録されていて、「許諾が取れたんだ!」と驚きました。

佐藤:「収録したいです!」とスタッフにお願いして、ダメかなと思いながら許諾の連絡を取ってもらったら、まさかのOKをいただけました。

ーーいろんな経緯があったとはいえ、あの曲をライブでやったことは、fhánaの音楽性における一つの意思表示でしたよね。

佐藤:towanaが鷲崎健さんのラジオ(文化放送超!A&G+『鷲崎健のヨルナイト×ヨルナイト』)にマンスリーアシスタントとして出演した時、「丸の内サディスティック」(椎名林檎)や「スパイダー」(スピッツ)、「そばかす」(JUDY AND MARY)と毎週いろんなカバー曲をやったんですけど、そのなかに「今夜はブギー・バック」もあって。towanaがもともと好きだった曲でしたし、ツアーの大阪公演がtowanaの誕生日ということで、特別企画として「そばかす」と「今夜はブギー・バック」のカバーをライブで披露して。反響も良かったので、急遽東京公演でもセットリストに組み込むことにしたんです。

ーーkevinさんのユルいラップも見事にハマっていました。

佐藤:kevinについては、ライブで踊らせたり(「青空のラプソディ」)ラップさせたり(「今夜はブギー・バック」)と、彼の新しい扉を次々と開いちゃっている感じがありますね(笑)。

ーーパフォーマーとしての新境地がどんどん開拓されてます(笑)。ライブについては、以前にUNISON SQUARE GARDENの田淵智也さんと行った対談でも話題に上がりましたが、佐藤さんが目指していたのは「非日常を作り出すこと」で、まさに先日のツアーファイナルはその一つの到達点だったと思いますよ(参考:fhána 佐藤純一×UNISON SQUARE GARDEN 田淵智也が考える、バンドが“作品とライブで表現すべきこと”  )。

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