欅坂46、21人体制は何が特別だったのか “21人の未完成”だからこそ生まれたグループの魅力

他のグループとの差別化

 そもそも選抜制度であったり、ポジションに序列を設けたり、あるいは総選挙といった人気投票イベントなど、メンバーの優劣を競わせることによって成長してきたAKB48を母体としながら、欅坂46はことごとくそうした手段を採用しなかった。その意味では、他のグループとの差別化がしっかりとされていたことがデビュー直後から急激に人気を獲得できたひとつの要因とも言えるだろう。

 つまり、この体制は先輩グループとは別の路線を進むための明確な差別化のポイントでもあった。AKB48や乃木坂46といった他の人気グループにはないものがある、という強みが彼女たちがデビュー時から爆発的に人気を獲得できた理由のひとつとなっていたのだ。

 例えば、その独自路線が作品に顕著に現れたのが3rdシングル曲「二人セゾン」だ。それまで3列目にいたメンバーを前列に抜擢したことや、7人×3列というフォーメーションの実践、主役が代わる代わる入れ替わるダンス、欅タワーと名付けられた振り付け、〈そのどれが欠けたって 永遠は生まれない〉といったフレーズなど、グループ全員でひとつの作品を表現しようという意識がパフォーマンスに色濃く滲み出ている。この曲が多くの人から支持される背景には、サウンド面はもちろんだが、それ以外にもこうした”全員野球”な要素が散りばめられているからだろう。

”錆”を楽しむということ

 さらに言えば、代替不可能なパーツの組み合わせによるチーム作りとしての魅力がこの体制にはあった。多くのアイドルグループがそうであるように、構成員が入れ替わり新陳代謝することで組織そのものは半永久的に存続する構造には”人の人生を消費する”側面が如実に現れる。だからこそ幼い少女の大事な成長期をエンターテインメント化するアイドル文化にはアレルギー反応を持つ者も多い。こうしたアイドル文化の性質に対して”一人ひとりが代わりのいない存在である”というグループ運営は挑戦的な意味合いを帯びている。活動を円滑に進めるにあたっては困難も多いだろうが、錆びたら取り替えられる歯車ではなく、錆びてもその錆こそ魅力に変えてしまおうというのが21人体制の根本にある思想なのだ。要するに、循環型ではない新しいスタイルのグループ運営の仕方を作り上げたという面で、この体制には意義があった。錆びるし替えの部品もない、しかしどこかそのほころびに心が惹かれてしまう。まさに「21人の未完成」とは、このグループを表すのに相応しいタイトルだろう。

 彼女たちにとって、2018年は揃わない年だった。上半期は平手友梨奈の不在、5月には志田愛佳と原田葵の活動休止、下半期は今泉佑唯と米谷奈々未と志田の3名が卒業発表。全員が揃わないままもどかしい期間が長く続いた。ようやく21人全員揃った瞬間がこの写真集の発売だったのだ。それゆえメンバーもファンも感慨ひとしおだろう。21人体制というのは、ある面では非合理的なことばかりだ。しかし、である。だからこそ我々は、21人の彼女たちを応援したくなったのかもしれない。

■荻原 梓
88年生まれ。都内でCDを売りながら『クイック・ジャパン』などに記事を寄稿。
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Twitter(@az_ogi)

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