欅坂46、21人体制は何が特別だったのか “21人の未完成”だからこそ生まれたグループの魅力
欅坂46が初のグループ写真集『21人の未完成』を発売した。メンバー21人揃った作品はこれが最後とのことで、ファンにとっても特別な一冊となっている。そこで、彼女たちにとって大きなアイデンティティとなっていたその”21人体制”の意義について、改めてここで考えてみたい。
メンバー全員が輝くための21人体制
多くのアイドルグループが採用する選抜制度は、メンバーの向上心や活動に対する積極性を育むのに有効だが、ひとたび”非選抜”のレッテルが貼られてしまうと自身の素質に早いうちに見切りをつけてしまったり、活動に対してネガティブな感情に陥ってしまうことも少なくない。全員にスポットライトが当たる全員選抜=”21人体制”は、チャンスをメンバー全員に最大限与えられる仕組みでもあるのだ。
歌、ダンス、トーク力、文章力、表情の作り方、演技力、バラエティ対応……現在、アイドルには多くの能力が求められる。そのすべての項目にそれぞれ向き不向きがあるだろう。出来る者だけが選ばれて出来ない者は選ばれない制度は、ある意味では理にかなった合理的な手段だが、ある種の残酷性をともなった非情なやり方でもある。その面で全員選抜は、人の努力や将来性をあらかじめ高く見積もった性善説的なシステムとも言えるだろう。
また、彼女たちのような大人数のグループでは人によってモチベーションに差が出てきたり、スキルの格差からヒエラルキーが生じてしまうことも珍しくない。しかし、彼女たちはそういった点での歩調は合っていたように思う。例えば、1stシングル曲「サイレントマジョリティー」こそ遅れて加入した長濱ねるが選抜から外れたものの、2ndシングル曲「世界には愛しかない」の選抜発表時には21人の全員選抜であることが告げられると、長濱の選抜入りを喜びスタジオ全体が涙で包まれる場面があった(『欅って、書けない?』テレビ東京/2016年6月27日放送)。つまり、この時すでに全員で活動していこうという意識や、メンバー同士の助け合いの精神が芽生えていたのが確認できる。
21人体制は彼女たちにとって自分たちの能力を存分に試せる場であり、集団において起きやすい問題を解消する役割を持っていた。つまり、腐る者なく全員が輝けるようなグループに向かわせられることが21人体制の大きな意義であったのだ。そして、後から誕生した妹グループのけやき坂46が躍進している状況から「自分たちも頑張らなければいけない」といったコメントをよく残しているのを見るにつけ、全員選抜に欠けている”競争意識”の部分は、妹グループの存在によって補われていたのである。