Joji、BTS RM、tofubeats……ユニークさや新しさを持った“異能”の歌を堪能できる6選

中村佳穂『AINOU』

中村佳穂  SING US "忘れっぽい天使 / そのいのち" (live ver)
中村佳穂『AINOU』

 中村佳穂の歌にも“異能”を感じる。

 京都出身、京都精華大学に入学した6年前から本格的に音楽活動をスタートし、くるりの岸田繁やtofubeatsなどが惜しみない賛辞を送ってきた女性シンガーソングライター。

 2016年のデビュー作『リピー塔がたつ』が出たときに僕はフジロックのジプシー・アバロンで彼女のライブを初めて観て衝撃を受けたのだけれど、そこから2年を経て、さらに飛躍した感がある。自身のレーベル<AINOU>を立ち上げ、全国を旅してライブをする中で出会ったバンドメンバーと共に作り上げたという2枚目のアルバムが本作。スタイルは様々だが、やっぱり耳をひくのはその自在な歌唱法だ。基本はピアノを弾きながら歌うスタイル、ライブでは即興で毎回リズムを解釈し、スキャットや語りやラップや歌をも自在に繰り広げる。その歌の譜割りやフロウには、Hiatus Kaiyoteやアンダーソン・パークあたりが切り拓いているジャズとヒップホップの新たな音楽領域とも共振するセンスを感じる。

 「きっとね!」や「get back」のようなネオソウルの要素たっぷりの洒脱なポップチューンもいいが、僕が好きなのは「アイアム主人公」。彼女の歌の自由さが一番感じ取れると思う。

折坂悠太『平成』

折坂悠太 - さびしさ (Official Music Video)
折坂悠太『平成』

 折坂悠太の歌も、本当に独特。2013年からギター弾き語りでライブ活動を始め、自主制作でアルバムをリリースしてきたシンガーソングライター。その才能に、宇多田ヒカルや後藤正文などミュージシャンがいち早く気付いてきたが、10月にリリースされた『平成』が、その異能を本格的に開花させたアルバムになった。

 身体全体を楽器のようにして響かせている声で、ホーミーやヨーデルなど民族音楽の歌唱法、唱歌や民謡など日本のルーツミュージックの歌唱も踏まえつつ、それをモダンな形に接続したような表現がなされている。

 首を少しかしげたジャケットが象徴的なのだけれど、一見普通のようでいて、目が離せなくなってしまうような違和を内包したシンガーだと思う。僕は「さびしさ」という曲が一番好き。フォークミュージックをベースに朗々とした歌が響く曲で、曲名とはうらはらに、Mumford & Sonsにも通じあうような“ユナイト”の感覚がある。

■柴 那典
1976年神奈川県生まれ。ライター、編集者。音楽ジャーナリスト。出版社ロッキング・オンを経て独立。ブログ「日々の音色とことば」Twitter

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