the pillowsが30年愛され続ける理由ーーバンドの奇跡の軌跡を辿る

「ストレンジカメレオン」「ハイブリッド レインボウ」の誕生

 そんな中でひとつの大きな出来事が起こる。THEE MICHELLE GUN ELEPHANTとの出会いだ。人づてにこのバンドを知った山中は、彼らの音に衝撃を受け、BAD MUSICに紹介。やがて同事務所に所属することになった2バンドは1995年の秋、早稲田大学の学園祭で共演するのだが……ここでデビュー直前の激烈なパワーを放ったミッシェルを目の当たりにして、山中は「完全に負けたね」とのちに語っている(the pillows『ザ・ピロウズ ハイブリッド レインボウ』2009年刊より)。

 この時期から意識を大きく変えたという山中は、バンドのサウンドをかねてから構想していたギターロックへと転換していく。1996年に発表した「ストレンジ カメレオン」はオルタナティブロックに傾倒していた彼の感覚の一端が現れた曲。そしてこれは〈まわりの色に馴染まない 出来損ないのカメレオン/優しい歌を唄いたい 拍手は一人分でいいのさ/それは君の事だよ〉という歌詞にあるように、山中の覚悟がうかがえるナンバーでもあった。決してキャッチーではないこの曲のシングルリリースに際しては反対意見も多かったというが、結果的にはFM各局のヘビーローテーションを獲得。とくに関西での人気は高く、当時これで初めてthe pillowsを知ったというリスナーも多かったはずである。

ストレンジカメレオン/the pillows

 少しずつ状況が開かれていく中、彼らは充実作を重ねていく。リスナーへの感謝の気持ちを示した『LITTLE BUSTERS』(1998年)に始まり、『RUNNERS HIGH』『HAPPY BIVOUAC』(1999年)と続いたオリジナルの6~8作目は、バンドの黄金期と呼べるアルバム群だ。かねてからプロデュースを担当していたSALON MUSICの吉田仁とのタッグも、非常にいい形でサウンドに反映されている。

 とくに『LITTLE BUSTERS』に収録された「ハイブリッド レインボウ」はthe pillowsを代表するナンバーと言える。〈昨日まで選ばれなかった僕らでも/明日を待ってる〉という一節に勇気をもらったというファンはきっと少なくないのではないだろうか。

ハイブリッドレインボウ/the pillows

 穏やかではあるが、確実に上昇気流に乗りはじめたthe pillowsを支持する声は各方面からあがってきていた。そんな中、やや意外な男がこのバンドに接近した。当時すでに巨大な人気を獲得していたGLAYのベーシスト、JIROである。1999年、自身のFM番組で『RUNNERS HIGH』を聴いた彼はこのアルバムに感じ入るものが大きかったようで、直後にthe pillowsのライブに足を運び、山中をはじめとしたメンバーと初対面。呑み仲間となった彼らはイベントでNirvanaのコピーを演奏したりするようになり、やがてこれが2005年のTHE PREDATORSの結成へと至っていく。その際のドラムにはさらに下の世代であるストレイテナーのナカヤマシンペイが迎えられた(のちにELLEGARDEN/PAM/Scars Boroughの高橋宏貴に交代)。

 さらにここまでの間の2004年には結成15周年を記念したthe pillowsのトリビュートアルバム『SYNCHRONIZED ROCKERS Tribute to the pillows』がリリースされている。これには上記のストレイテナーやELLEGARDEN、旧知のTheピーズにSALON MUSICはもちろん、JIROを交えたセッション、さらにMr.Children、BUMP OF CHICKENが参加。多くのビッグネームが名を連ねた本作もあり、体感的に、音楽ファンの間でthe pillowsへの注目度が最も上がったのはこのタイミングだったと記憶している。2006年にはMr.Childrenとの対バンツアーも実現。当時インタビューした時、山中は「the pillows自体は売れないけど、売れてるミュージシャンには人気のあるバンドなのかな」と笑っていたものだ。

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