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the pillowsが30年愛され続ける理由ーーバンドの奇跡の軌跡を辿る

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the pillows『REBROADCAST』通常盤

 山中さわおの作る曲は、いつもみずみずしい。どんなに切なくても、あるいはどんなにトガって、荒ぶっていても、その歌のどこかには特有の青さが宿っていて、ロマンチシズムが流れている。

 そしてそれこそが、the pillowsの音楽の魅力だと思う。

 このバンドが結成されたのは1989年9月16日のこと。つまり来年、2019年はその時から30周年を迎えることになり、現在のthe pillowsはそれに向けてのアニバーサリー期間に突入している。

 その最初の段階として、この9月19日には通算で22枚目となるオリジナルアルバム『REBROADCAST』がリリースされたばかり。11月から来年3月にかけては全国をくまなく廻るツアーのスケジュールが発表されている。また山中は、結成30周年の記念日となる2019年の9月16日あたりに大々的なライブイベントを行うことを明らかにしており、その舞台はおそらく東京近郊の大会場になるはずである。

 と、今や日本のロックシーンの一角に堂々と君臨するthe pillowsだが……仮に今、タイムワープして1990年前後の日本に戻り、音楽ファンを捕まえて「the pillowsが30年続くよ」と言ったとしても、誰も信じてはくれないだろう。当時の彼らに、そんなにたくましいイメージはないからだ。いや、何よりも、その頃は、バンド自体がそこまで認知されていなかったというのが正直なところか。

 そう。残念なことにthe pillowsは当初、その存在をなかなか知られることがないバンドだった。もっとも今にしてみても、ビッグヒットがあるわけでも、TVなどに出てお茶の間レベルでおなじみになったこともないし、派手な話題で騒がれたこともない。しかし彼らを好きだと言うファンは、掛け値なしに熱い。本当に徐々に徐々に、ひとつひとつの積み重ねによって、この30年を歩んできたバンドなのである。

 先ほどのthe pillowsの結成は、1989年当時、札幌の真鍋吉明(ギター)のアパートで、メンバーが集まってバンド名を決めた日とされている。リーダーでベースの上田健司(当時は上田ケンジ)とドラムスの佐藤シンイチロウは元KENZI & THE TRIPSで、パンクシーンではすでに有名だった。そしてthe pillowsという名前は、真鍋の部屋に飾られていたUKの<チェリーレッド・レコード>のコンピレーション盤『Pillows & Prayers』から取られた。80年代初頭、パンク~ニューウェーブ以降の新しい音楽を輩出していた同レーベルの名オムニバスだ。これは最初期のthe pillowsがUKロックの指向性を持っていたことを示す事実でもある。

 インディでの活動を経て、the pillowsは1991年にメジャーデビューを飾る。この頃は数年にわたって続いたバンドブームの終焉期だっただけに、決していいタイミングだったとは言えない。ただ、近い時期のデビュー組にはスピッツやウルフルズがいるし、もう少しあとには所属事務所BAD MUSICの後輩バンドだったMr.Childrenが頭角を現す。この当時のthe pillowsには「僕らのハレー彗星」のようないい曲もあるのだが、バンドの足並みと実力、さらにシーンの動きがリンクすることがなかった。

「僕らのハレー彗星」(2010年代後半の過去の作品の再現ライヴより)

 また、当初の山中のUK指向はとくにモッズカルチャーを意識しており、90年代半ばまでのthe pillowsのサウンドやファッションにはその影響がしばしば見られる(これには彼の憧れであるザ・コレクターズの存在も大きい)。ただしモッズは、当時の(そして今も)日本の音楽界では浸透していると言えない文化だった。

 このメジャー在籍の初期は、上田健司の脱退やレーベルの移籍を経ながらも、音楽的には貪欲で、ソウルやジャズを取り入れた時期もあった。「Tiny Boat」というロマンチックな曲も生まれたが、依然として時代がthe pillowsに微笑むことはなかった。当時、インタビューの席で山中は「もっと(多くの人に)知ってもらえたら、好きになってもらえる自信はあるんだけどな」と話してくれたものだった。

Tiny Boat/the pillows

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