the pillowsが30年愛され続ける理由ーーバンドの奇跡の軌跡を辿る

『フリクリ』『SKET DANCE』などアニメ・漫画カルチャーからの支持

 また、the pillowsを求める声は意外なことに海外からも起こっていた。かつて挿入歌やテーマソングを作ったOVAの『フリクリ』が2000年代の序盤からアメリカをはじめとした海外で人気を集めはじめており、それとともにthe pillowsの楽曲にもファンが付いていたのだ。折しも時代的には動画サイトを介して国境を超えた作品の視聴が一般的になりつつあり、国外のリスナーも日本の文化にアプローチできるようになっていた頃。その要望を受けてthe pillowsは2005年からアメリカなどの海外ツアーを何度か敢行している。なお、今年の夏にはアメリカツアーを7年ぶりに行い、かつてよりさらに熱狂的な歓迎を受けたとのことだ。

 ちなみにこの『フリクリ』は現在ひさしぶりとなる続編2作が劇場公開されており、それにあたってthe pillowsは新曲を書き下ろしたのに加え、自分たちの過去の楽曲のセルフカバーを録音。これらはサントラ盤としてリリースされている。

the pillows「Star overhead」「Spiky Seeds」×劇場版「フリクリ オルタナ/プログレ」アニメMV

 さて、話はもう一度、10年近く前に戻る。こうして各方面から高まる人気を背景にしながら、the pillowsは2009年、結成20周年の年に、ついに日本武道館でのライブを実現させる。大きなヒット作もない中で達成したこのコンサートはじつに感動的だったが、これに影響を受けたのはファンだけでなく、同業のバンドマンたちだったようだ。この後、日本の音楽シーンでは怒髪天、フラワーカンパニーズ、ザ・コレクターズ、Theピーズといった超ベテランバンドたちが次々と武道館公演を成功させていったが、振り返ればその先鞭をつけたのはthe pillowsだったのである(何しろthe pillowsは2010年頃にこの界隈のバンドたちとのスプリットツアーを企画している)。

 また、この頃にはマンガ『SKET DANCE』の文化祭のシーンで「Funny Bunny」(『HAPPY BIVOUCH』収録)が演奏され、歌詞が掲載されたことがあった。作者の篠原健太氏はthe pillowsのファンであることを公言しており、同場面のエピソードが単行本化される際には山中が帯にコメントを寄せることになった。

the pillows / Funny Bunny

 2011年にはthe pillowsが同作のTVアニメ『SKET DANCE』のエンディングテーマとして「Comic Sonic」を提供している。

the pillows / Comic Sonic

 さて、こうして大舞台も経験し、もはや確固としたポジションを築いた感もあったthe pillowsだが……事はそう簡単ではなかったようだ。2012年にはメンバー間の関係性を仕切り直す意味もあり、バンドはおよそ1年間の活動休止を行う。山中はアルバム『DISCHARGE』(2010年)などソロ活動の場も設けるようになり、一時はそちらに注力したように見えたこともあった。ただ、活動再開後はバンド内の雰囲気がいいようで、the pillowsとしてのコンスタントな活動が続いている。2枚目のトリビュート盤『ROCK AND SYMPATHY』(グッドモーニングアメリカ、9mm Parabellum Ballet、UNISON SQUARE GARDENなどが参加/2014年)や、かつてのアルバムの再現ライブもあった。

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