jealkbが語る、“理論と感覚のぶつかり”を経た新作「しんどかっただけに愛情も喜びも大きい」

jealkb、“理論と感覚ぶつかり合った”新作

 jealkbが9月5日、ミニアルバム『Mix Up Sonic』をリリースした。本作は“Act2”以降のヘヴィロック的な路線から一転、打ち込みやシンセのサウンドを主体とした、ライブ映えする楽曲が並んだ、楽しげな作品に仕上がっている。

 今年、メジャーデビュー10周年を迎えた同バンド。インタビューでは、同作の制作においても、さらなる変化が訪れたことを明かしてくれた。(編集部)

「ライブのどの場面にも登場できる、即戦力の曲を増やそう」(haderu)

左から、sapoto、hideki、haderu。

ーー“Act2”以降は、ずっしりとしたバンドサウンドを押し出した楽曲が多かったですが、今回リリースされる『Mix Up Sonic』は、打ち込みを印象的に使ったものが増えていますね。制作するにあたってどんな作品にしようと思っていましたか?

haderu:“Act2”としてスタートするときに、jealkbの音と改めて向き合ったんですけど、たとえば(MVを撮影した)「reboot」や「IDENTITY」ってすごくいい曲だけど、ライブで登場する回数が限られてくるんですよ。jealkbは、お客さんと振りをあわせて一緒にブチアガるパーティーバンドなので、ああいう重低音の効いた世界観を持った楽曲は、登場することもあるけどずっといるわけではないんです。だとしたら、ライブのどの場面にも登場できる曲、即戦力の曲を増やそうと。

hideki:僕らはライブで20曲やるとしたら、そのうちバラードは1か0なんですよ。そこを増やすよりも、ライブの後半にくるアガるゾーンのレギュラーを増やしたかったんです。そうすればいろんな顔を見せられるし、毎回同じライブにはならないんじゃないかって。やっぱり僕らは、ライブに来てくれたお客さんに「楽しかった」と思って帰ってもらいたいし、いい曲をたくさんやって「めっちゃカッコよかったな」と思われるところには、たどり着けないと思うんですよね。

haderu:うん。いい曲を増やしても、結局使いどころがなくてその曲が死んでしまうのも、もったいないなと思っていたところもありましたね。

ーーでは、今作はライブの即戦力になる6曲を収録していると。

haderu:そうです。楽曲制作陣(elsa、ediee、sapoto)に、そういう曲を作ってほしいとオーダーして、全部で12曲できた中の6曲ですね。残りの6曲も店舗特典にしているので(対象店舗で購入すると「CD未収録曲デモ音源プレイパスコード付きアザージャケット」が先着でプレゼントされる)、このミニアルバムを作ることで新曲が12曲生まれた形にはなりました。

左から、ediee、elsa、dunch。

ーーelsaさんは「煽情」と「フルゴリラ」の2曲を作曲されていますが、「即戦力になるものを」と言われたときに、イメージはすぐ浮かびました?

elsa:いや、今回は曲を作るまでに時間がかかったんですよ。「即戦力」とか「アガる曲」と一言で言ってもいろんなパターンがあるから、ちょっと考え込んじゃったんですよね。だから、みんなでいろいろ話し合ったんですけど。

ーー具体的にはどんな話をしたんですか?

haderu:いままで出してきた自分達の曲をアルファベットでランク付けしたんです。それも良い曲かどうかではなくて、ライブの盛り上がり度だけでランクを付けるっていう。どこに出しても大丈夫な曲はSで、まあまあ盛り上がるのはA、あとはB、Cって。で、今回はSランクの曲だけを作ろうと。まだライブでやってないので、本当にSになるかどうかはわからないですけど(笑)。

hideki:でも、Sを目指した曲達ではありますね。

elsa:「煽情」に関しては、いつもライブの後半にやる「堕落」という曲があるんですけど、ランク付けをしたら満場一致でSだったんですよ。その進化版を作ろうと思って、狙い通りにできました。「フルゴリラ」は、アメリカのスラングで「120%」みたいな意味なんですけど、エンゼルスの大谷(翔平)選手の記事を見たときに、監督さんが「あいつはもうフルゴリラでいける」って話していたんですよね。響きも意味としてもいいなと思ったから、仮タイトルを「フルゴリラ」にして曲を作ったんです。それがそのままタイトルになって。

haderu:出てこなかったですね、「フルゴリラ」以上に当てはまる言葉が。「全力投球」という意味もあるから、ライブの後半で苦しくなってきたときに、バンドメンバーもお客さんも、もうひとつギアが入るようなもの、みんなで限界を超えていこうぜという歌詞にしました。

haderu

ーーちなみに、楽曲をランク付けしたときに、みなさんの意見は一致していたもののほうが多かったんですか?

hideki:みんなちょっとずつズレてましたね。

haderu:俺からすると「Julia」とか「嘆きのエンドレス」はAなんだけど、演奏する側からするとそうじゃなかったりとか。

elsa:でも、そこまで遠く離れてはいなかったです。Sなのか、Aなのかで分かれることが多くて。

dunch:楽器陣はメロディがいいものというか、それこそ「Julia」とか「嘆きのエンドレス」にすごく盛り上がるイメージがありましたけど、フロントチームとしてはそっちよりも、イベントのときにメインでやっている曲に、より強くSをつけていたかもしれないですね。

sapoto:そこのズレみたいなものは、演奏の熱が強いものと、お客さんの熱が強いものの温度差の話だと思うんですよ。同期をバンバン入れて、テンポもバシっと決まっている曲って、ギターを弾いていてもあまりおもしろくなかったりするんだけど、その曲にSがついていると、ある種の驚きがあって。だから、自分が作る曲は、演奏の熱とフロアの熱がイーブンになるものにしたいし、それが一番理想的だなと思ってましたね。

ーーそれを踏まえて、sapotoさんは「ジガサガ」を作曲されたと。

sapoto:曲を作るときは、縛りというか約束事を自分の中でいつも決めるんですけど。この曲は、ビートがかっこいいことと、メロディがキャッチーであることと、メンバー一人ひとりに見せ場があるという縛りで作りました。そのなかで、僕はedieeさんとギターソロの掛け合いがやりたかったんですよね(笑)。

ーー(笑)。実際は、sapotoさんはギターソロ、edieeさんは“口ギターソロ”をしていて。

haderu:今回の各楽曲に「固定観念をぶち破ろう」とか「思考停止はよくない」という裏テーマが自分の中にあったんですよ。だから、sapotoから口ギターソロのアイデアが出てきたときに、「それそれ!」って。そんなことしてるバンド聞いたことないから、それはぜひやってみたいなと思って。

hideki:あと、sapotoからそういうアイデアが出てきたことが嬉しかったですよね。そうやって音楽を崩すことへの拒否反応がもうなくなっているというか、完全にjealkbの正式メンバーとしての意見だなって。

ーーそして、edieeさんは「PARIPO」「gosh!」「才僕」の3曲を作曲されていますけど、すぐにイメージは湧きました?

ediee:僕はすぐ湧いちゃいましたね!

elsa:シンセをガンガン入れた曲が増えたのは、edieeの曲が多いからでもあるんですよ。

haderu:ランク付けしたときもedieeの曲はSが多かったし、それは同期を使っている曲が多かったんです。だから新たな試みとして、同期をバリバリに出しているものをリード曲に持ってくるのもいいんじゃないかと。でも、いままで応援してくれていた人に、「次はこれです」ってそれだけ出すのもちょっと嫌だったので、これまでの系譜を引き継いでいる「煽情」と「フルゴリラ」を1、2曲目にしようと。その次に「ちょっと変化が始まってますよ」みたいなところを打ち出せている「ジガサガ」があって、edieeの曲に入っていくのが曲順としても一番すんなりくるかなって。

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