チャットモンチーにとって“完結”は不可避だったーー兵庫慎司が観た武道館ラストワンマン

チャットモンチーにとって“完結”は不可避だったーー兵庫慎司が観た武道館ラストワンマン

 だからここで「もっとやれるじゃないか」とか言うのは、チャットモンチーに対して「チャットモンチーじゃなくなれ」と言うに等しいことなんだなあ、という話だ。僕は正直『誕生』を聴いた時「これめちゃくちゃいいじゃん! もっとやればいいじゃん!」と思ったのだが、考えたら『変身』のフォーマットも『共鳴』のフォーマットもアルバム1枚で終わっているわけだし。つまり、「フォーマットできました、これで何年かやっていきます」という人たちではハナからなかった、そのたびにフォーマットから作らないとワクワクしないタイプのクリエイターたちだった、ということだ。

(写真=古溪一道)

 さらに言うなら、日本武道館一発じゃなくて全国ツアーやってよ、最後なんだし、と思ったとしても、この日のライブを観たら何も言えなくなる。これ、全国5カ所とか7カ所とか20カ所とかで、できます? 無理ですよね。「最後に一発」だからこそ、できたことですよね。でも、それでは観られる人が限られるからWOWOWで生中継したし、「WOWOW入ってねえよ」(もしくは「入れねえよ」)という人のために映画館でライブビューイングも実行した、ということですよね。

 『こなそんフェス』のように、短い持ち時間でお祭り的にライブやるのは可能だけど、たとえばそのライブセットで全国のフェスを回ってから「完結」、というの、うれしい? 違いますよね。

 と考えていくと、日本武道館でこういう、キャリアを総括する特別なワンマンをやって、そのあとアフターパーティーとして『こなそんフェス』を開催する、というのが、もう、「それしかない」選択だったこともわかる。

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 要は、チャットモンチーにとって「完結」が不可避だった、チャットモンチーがチャットモンチーであるためにはそうするしかなかった、ということが、ふたりが何も言わなくても目で耳で肌で理解できる、納得するしかなくなる、そういう時間だった、ということだ。

 終演後、客席で、四星球の康雄と出くわした。よく知られているように、チャットモンチーの大学の同級生であり当時からのバンド仲間である彼は、「アッコ、18歳から知ってるんですよ……」と、終わりを惜しんでいた。そうか、四星球、チャットモンチーが「完結」する前年(2017年)にメジャー・デビューしたんだもんなあ、と思い出した。

 その5日後の7月9日、渋谷クラブクアトロで、ベース梅津拓也脱退以降初のライブ、サポートメンバー3人(ギター:カニユウヤ/突然少年、ベース:長谷川プリティ敬祐/go!go!vanillas、ドラム:タイチ/爆弾ジョニー)が加わって新体制になった、忘れらんねえよを観た。爆音でチャットモンチーを聴いて始まったバンドが、実質メンバーが最後のひとりになっても「バンドとして」続けることを選んだ、その第一歩だ。

 中盤のMCで柴田隆浩は、チャットモンチーの武道館に行った話をした。そして「ハナノユメ」をカバーして大シンガロングを巻き起こし、「バンドやろうぜ」につなげた。〈泣いた さあ あの夜を越えていくんだろ いつか花咲いたら みんなでビールでも飲もう さあバンドやろうぜ〉というリリックを、超満員のオーディエンスが叫ぶように歌うさま、柴田にとってチャットモンチーがどんな存在かをみんなが知っていることも含めて、なんだかとてもグッときた。

(メイン写真=上山陽介)

■兵庫慎司
1968年生まれ。音楽などのライター。「リアルサウンド」「CINRA NET.」「DI:GA online」「ROCKIN’ON JAPAN」「週刊SPA!」「CREA」「KAMINOGE」などに寄稿中。フラワーカンパニーズとの共著『消えぞこない メンバーチェンジなし! 活動休止なし! ヒット曲なし! のバンドが結成26年で日本武道館ワンマンにたどりつく話』(リットーミュージック)が発売中。

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