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『チャットモンチーと機械仕掛けの秘密基地ツアー2017』最終公演レポート

チャットモンチーが、また大きな“変身”を遂げているーーツアーに感じた現編成の成長

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 デビューから12年。チャットモンチーが、また大きく“変身”を遂げている。

 「また」というのには理由がある。1度目の変身は、2011年の高橋久美子の脱退を受けて、橋本絵莉子と福岡晃子によるツーピースバンドになったとき。翌年にリリースした5枚目のアルバム『変身』は、ライブの延長線上にあるかのような実験的かつ、創造性に富んだ“新生チャットモンチー”を鮮やかに見せつけた作品だった。2014年には、恒岡章(Dr / Hi-STANDARD、CUBISMO GRAFICO FIVE)と下村亮介(Key & Cho / the chef cooks me)の通称“男陣”、世武裕子(Piano, Synthesizer)、北野愛子(Dr / DQS, nelca / ex. your gold, my pink)からなる“乙女団”をサポートメンバーに加え、6人編成の大所帯バンドに。2015年に10周年を記念して約7年半ぶりに開催された日本武道館公演は、2人編成から6人編成まで様々なチャットモンチーの形を鳴らす一夜だった。そして、昨年より再びツーピースとして始動したのが「メカットモンチー」としての現体制である。

 筆者が、「メカットモンチー」としての体制でのライブを初めて観たのが、昨年9月にZepp DiverCityにて開催された『私立 聖お台場女学院 地獄大運動会』でのこと。新体制としては2回目で、たどたどしさも残りながら、新たに機材として導入されたラップトップによる同期サウンドは、バンドが次の領域に到達していることを象徴していた。

 今回、『チャットモンチーと機械仕掛けの秘密基地ツアー2017』と題して開催したツアーは、文字通りメカットモンチーとして2人で全国を巡るもの。7月9日に東京・EX THEATER ROPPONGIで行なわれた最終公演は、橋本の体調不良により延期となっていた念願のツアーファイナルでもある。ステージの様相はまさに秘密基地といったところ。ガレージハウスにネオンが輝き、バイクやバンドセットが所狭しと並んでいた。

 一度新体制としてのライブは観ていたので、ある程度はイメージ出来ていた。けれど、そのイメージを遥かに凌駕するほど、1年でメカットモンチーは大きく進化していた。福岡のMCでの言葉を借りれば、「みなさんが知らないチャットモンチー」というのがぴったり当てはまる。微細なエレクトロサウンドをバックに、1曲目に披露したのは「レディナビゲーション」。2人は向かい合って置かれたシンセサイザーの前に座り、ヘッドホンを付けている。続く、「隣の女」ではシンセ2台の重低音の重なりが、歌われる夜の世界観をより強調させる。バンドの初期から演奏してきた「恋の煙」は、弾けるようなキックの打ち込み音にシンセの揺れる響きが怪しげな雰囲気を醸し出す。「バースデーケーキの上を歩いて帰った」は、アフロビートにチープな音色のシンセと異色な組み合わせ。けれど、それがじわじわと、絶妙にハマってくるのだ。

 「CDにもなっていない、全然違うアレンジ」「2、3曲ポカーンとすると思うけど、それが正解やで」と福岡は話していたが、拳を上げ縦ノリといったファンは会場には見当たらない。サウンド的には、横ノリ、もしくは興味深く見守るのが一つの正解なのだろう。とはいえ、メカットモンチーはこれだけでは終わらない。ツーピース以降、橋本と福岡の演奏する楽器は多様性に富む。二度、三度と楽器移動は当たり前。「とまらん」では、福岡が鍵盤を弾きながらバスドラを叩き、そのすぐ横に座った橋本がさらにドラムの上物(シンバル&スネア)を担当するという「リハーサルで思いついた」というプレイスタイルを披露。人力においても、尖りに尖っている。

 「20代後半にお酒飲んで酔っ払って作った曲」と橋本が紹介した「いたちごっこ」は、アコースティックギターを橋本、ベースを福岡が担当するシンプルな構成であり、元々のチャットモンチーの2人のスタイルを思い起こさせるアレンジ。続けての、「染まるよ」では、福岡がキーボードに移り、ノスタルジックなサウンドで淡く切ない雰囲気を漂わせる。哀愁を帯びたまま、「変身 (GLIDER MIX)」に突入。ツーピースとなり、披露する度にアレンジを変えてきたこの曲も、メカットモンチーの型にハマるように、また姿を変えていた。二度目の武道館で「赤ちゃんみたいな曲」として披露していた「消えない星」、エレキギターとドラムという音数こそ少ないものの確かなサウンドの骨格を浮かび上がらせる「majority blues」。そして、「いたちごっこ」から連なるオルタナの完成系ともいうべき楽曲群のラストに披露されたのがPerfumeのカバー「TOKYO GIRL」だった。橋本はエレキギター、福岡はドラムのもとへ行き、1stアルバム『耳鳴り』に収録されていてもおかしくないようなバンドサウンドで同曲を生まれ変わらせた。ほかの会場では、CHAGE and ASKA、GO!GO!7188といったアーティストの楽曲もカバーしていたらしく、橋本は「(カバーは原曲を)“食べる”だけではない。奥行きというものを感じます。それが楽しいんだよね」と感想をつぶやく。スポンジの如く、デビューしたてのバンドの如く、吸収し続けるバンドの飽くなき挑戦を彼女の言葉から感じた。

 さらに、メカットモンチーの凄みが溢れたのが、「こころとあたま」「湯気」のメドレー。橋本はエレキギター、福岡はシンセサイザーを演奏するのだが、「こころとあたま」のメロが「湯気」にも上乗せされた、いわゆるマッシュアップの状態に突入する。ギターノイズを残し、「風吹けば恋」「シャングリラ」で本編は終了するわけだが、メドレーのインパクトが本編ラストまで後を引いたほどだ。メドレーの組み合わせ次第で、いかようにもサウンドは出来上がることを考えると、また別のパターンも聴いてみたくなる。

 ヒップホップスタイルで登場したアンコールは、スチャダラパーと作った楽曲「M4EVER」でほんわかとスタート。陽気な打ち込みビートとシンセが大団円の雰囲気を後押しする「満月に吠えろ」でライブは幕を降ろした。福岡は、ラストのMCで「ツアーというものはバンドを成長させるもので、3月の時とは全然違うツアーに今日はなっていると思います。明日からどういった体制でやっていくか決まってません。やりたいことをやっていこうと思います」と挨拶していた。

 新人バンドが少し見ない間に急成長していた、というのはよくある話だが、デビューから12年目のバンドが急激に成長を遂げるということは、なかなかあることではない。チャットモンチーは、今夏多種多様なフェスに出演している。福岡の言葉通り、ステージを重ねるごとに新しいチャットモンチーが顔を見せていくだろう。

(撮影=上山陽介)

■渡辺彰浩
1988年生まれ。ライター/編集。2017年1月より、リアルサウンド編集部を経て独立。パンが好き。Twitter

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