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キーパーソンが語る「音楽ビジネスのこれから」 第10回

野村達矢氏が語る、“チーム・サカナクションの挑戦”とHIPLANDが目指す次のステージ

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 音楽文化を取り巻く環境についてフォーカスし、キーパーソンに今後のあり方を聞くインタビューシリーズ。第9回目に登場するのは、BUMP OF CHICKEN、サカナクション、KANA-BOONのマネージメントをはじめ、バンドオーディション『MASH A&R』でもたくさんのバンドの発掘を行ってきたほか、HIPLAND MUSIC CORPORATION代表取締役専務執行役員の野村達矢氏。

 今回リアルサウンドでは、クリエイティブ・ディビジョン「INT」の立ち上げなど、従来のマネジメント会社に止まらない戦略を打ち出す野村氏に、先日『関ジャム 完全燃SHOW』で特集も組まれた「チーム・サカナクション」を中心に話を聞いた。(編集部)

 “サラウンドライブ”誕生のきっかけ

――野村さんは、BUMP OF CHICKENやサカナクションなど、様々なアーティストを世に送り出されていますが、今回はサカナクションを中心にお話を伺います。彼らはテクノロジーを巧みに取り入れて、映像や音質においても常に新しいチャレンジをしてきました。もちろんアーティスト発信の部分も大きいと思うのですが、野村さんはどのようにして彼らの斬新な活動をサポートされてきたのでしょうか。

野村:サカナクションとは10年以上前から一緒にやってきていますが、最初に見たときからこれまで接してきたロックバンドよりもデジタルの要素が強いバンドだなと思っていました。シーケンスが鳴ってるし、キーボードやシンセサイザーも多用していたり、電子音が多く乗っかっているぶん、イメージをもう少し視覚的にデフォルメしたいなと。そのために何をやっていけばいいかを常に考えながら、たとえば「こんな新しい機材があるよ」「これ、面白そうだけど使ってみたら?」といった提案もして、メンバーともディスカッションしながら、新たな機材や演出を導入していきました。

ーーその中でもターニングポイントといえる出来事は?

野村:一番最初のわかりやすい例としては、ライブハウスでレーザーを使ったことです。今でこそ、いろいろなロックバンドのコンサートでレーザーが使われていますが、10年前はそこまで普及していなくて。かつて水冷式のレーザーを使っていた時代もあったんですが、一度小康状態みたいになっていたんですよ。でも、クラブサウンドがどんどん流行しはじめて、クラブでも再びレーザーの使われるタイミングがやってきましたし、サカナクションの音楽は“ロックとダンスミュージックの融合”でもあったので、視覚的にインパクトのある演出になると思って、レーザーの装置を購入したんです。

ーー自前で買ったんですね。

野村:自分たちで持ち歩いて、300~500人規模のライブハウスでも、レーザーをバンバン使っていたので、当時は「とんでもないバンドが来たぞ!」と思われていたかもしれません(笑)。でも、そのおかげでサカナクションの存在をシーンの中で示せたのは大きいですし、無理やり使っているのではなく、自分たちの音楽に馴染んでいるという手応えもありました。その成功体験を経て、コンサートの演出という部分で色々考えていくようになったんです。ライブをやる際に、曲順と大まかな流れを考えるだけでなく、スタッフとメンバーがかなり細かいところまで考えるのが、当たり前になっていきました。

ーーファンの期待値も、年々高まっていった印象です。

野村:新たな視覚的演出を考えていくなかで「そろそろ聴覚的な演出もしたい」と思っていたとき、タイミング良くドルビージャパンが連絡をくれたんです。「電気店の店頭で流す、5.1chサラウンドシステムのデモンストレーション映像を作りたいんですが興味ありますか?」と連絡をくれて。「今度、ライブでサラウンドシステムを導入したいので、どうせだったら、そのシステムに技術協力してもらえませんか?」とお返事をして、メンバーにも提案したら二つ返事で「やりたいです!」ということだったので、実施を決めました。そこから検証を繰り返して、2015年の幕張メッセと大阪城ホール公演で、初めてサラウンドライブを実行に移したんです。

ーー大掛かりな音響装置が話題になりました。

野村:この時はスピーカーを250本くらい入れていて、経費的にもかなりの負担が掛かりましたし、リハーサルも音源作りも大変でしたが、想像以上に良い反響をいただけました。最近、リスナーや音楽ファンが音楽に求めているものは、従来のオーディオシステムで聴くという体験から、どんどんモバイルに移行して手軽になっています。その反面、ダイナミズムが減ってきていますよね。そのなかで、体で感じて音楽を聴く行為の新たな局面を提供できたというのは、意味があることだったのではないかと思います。

ーー音楽ファンの間で「サラウンドライブといえばサカナクション」というイメージも定着しましたね。

野村:それは本当にありがたいですね。これは少し複雑な話なのですが、アリーナ会場でライブをする際、一番前から後ろまでは大体100mぐらいの距離があって、音の速さは秒速300mぐらいなので、幕張メッセだとアリーナの一番後ろに音が飛ぶまで0.3秒くらいかかるんです。後ろにスピーカーがあると、前後の音が0.3秒遅れるので、BPM120の曲だと1拍弱ズレが発生してしまいます。それを意識しながら、距離を計算して音を鳴らさなければいけないんです。

――途方もない作業ですね。2017年に同じ幕張で開催されたサラウンドライブは、2015年の課題も活かしながら、さらに綿密に調整していたということですか。

野村:そうですね。音の広がりについては、2015年の3倍くらい楽しめるクオリティになっていたと思います。実際にライブ中に歩き回っていると、後ろの方でもかなり良い音で聴くことができました。

――視覚的にも聴覚的にも演出がどんどん豪華になってきていて、リスナーが求める体験や期待値はさらに上がっているような気がします。

野村:毎回ツアーをやるたびに「これ以上のことは、もうできないな」と思っていますし、その時々で最高の演出ができているという自負はあるのですが、次のツアーの準備が始まると「やっぱり何か新しいものを……」という話になりますね(笑)。実際に、そのツアーとツアーの間に新たな技術が登場していたりするわけですし。

――それらの新たな情報は、どのようにしてキャッチアップしているのでしょうか。

野村:周りにいる技術系のスタッフから教えてもらうこともあれば、海外アーティストのライブ映像からヒントをもらったりすることもありますし、何よりこうして実験的な試みを続けていると、ありがたいことに様々な方や企業からプレゼンテーションをしてもらえるんです。僕らのことを知ってくれている人が、「これ、野村さんに話した方がいいんじゃないの?」と言ってくださったりもしているみたいで。そういう意味では、やり続けていることが、良い意味で循環しているという手応えがあります。

――バンドとファンのコミュニケーションについては、SNSの登場などを含め、次第に変化している印象があります。野村さん自身はその変化をどのように感じていますか。

野村:これに関しては、BUMP OF CHICKENとサカナクションでも大きく違いますね。BUMP OF CHICKENが出てきた2000年代は、比較的「クラスメディア」と呼ばれるFMラジオやCSの音楽専門チャンネル、音楽専門誌が影響力をもっていて、FMのヘビーローテーションやCSのパワープッシュからヒットが生まれていくことがほとんどでした。地方のエリアプロモーションも、ほとんどラジオが主体でしたから。あの当時、音楽リスナーが使っている媒体って、ほとんどラジカセやラジオ機能付きのCD/MDデッキだったんですよ。なので、CDを買ってくれることとラジオを聴いてくれることはセットだったし、ラジオで聴いた音源を気に入ったら、CDを買うという購買フローも成立していました。

ーー一方、サカナクションの出てきた2000年代後半〜2010年代についてはどうでしょうか。

野村:彼らがデビューした2008年って、ちょうどiPhone 3Gが出始めたころで、ガラケーからスマホへの転換期といえるタイミングでした。メディアもクラスメディアからソーシャルメディアが覇権を握る真っ只中で、mixiやTwitter、そこからFacebook、Instagramと変化していきましたし、YouTubeがあらゆる音楽の入り口として機能しているのが、サカナクションの時代なのかもしれません。彼らはその流れとも親和性が高いバンドでもあったので。

――いろんなツールで伝播していく時代においても、サカナクション自身から発信される“求心力”のようなものはずっとあるように思います。

野村:それはボーカルの山口一郎が発信するメッセージによるものが大きいと思います。彼はすごく色々なことを常に考えています。音楽そのものを伝えるということ、音楽のあり方、文化の考え方・あり方までを考えて、言葉にして、プロダクトにして、メッセージを届けることのできる人間なんです。その考えが<NF>というブランドにも表れていますし、ファッションやアートといった音楽以外のカルチャーとも連携を深めていって、最終的にはそれらのカルチャーを押さえることで、サカナクションの音楽を聴くときに理解がより深まるという構図になっているわけです。

      

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