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Have a Nice Day! 浅見北斗が語るディストピア・ロマンスの裏側「アウトサイダーを肯定したい」

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 クラウドファンディングサイトCAMPFIREから新作『Dystopia Romance 3.0』をリリースしたHave a Nice Day!(以下、ハバナイ)。この売上金を使って行われるのが、5月1日のZepp Diver City東京で行われるフリーリリースパーティーだ。2015年にも恵比寿リキッドルームで同様のパーティーは行われたが、あれが「東京アンダーグラウンド」の集大成だとすれば、今回は「ゴールではなく新しい入口」だと浅見北斗は語る。事実、この2年でハバナイは変わり続けてきた。

 どんなパンクバンドのそれより激しいモッシュピットが起こり、ファン全員が中指を立てながら全力でシンガロングしている。信じられないほど熱狂的なフロアの光景が、これまではハバナイの魅力でありすべてだった。「一瞬でも正気に戻ることは許さない」と宣言するかのように、バンドはチープかつジャンクなディスコサウンドを次々と量産してきた。キラキラなシンセとアップテンポなビート、覚えやすくポップなメロディとやけに軽薄な歌詞(たとえば「ロックンロールの恋人」のサビは〈oh my girlfriend/君はロックンロールの恋人かい?/ドゥビドゥバ/僕を踊らせてよ〉である)。

 まともに判断すればダサい、しかし狂乱のモッシュピットに飛び込んでしまえば非日常の多幸感を共有できる、まるでケミカル系ドラッグみたいな音楽。傍目にはキラキラと楽しそうなことばかりなのに、実際は文化も歴史もない、ある日突然消えても誰も悲しまないかもしれない一一という意味ではZeppの建つお台場に似ているかもしれない。そこに集まる人たちは、「嘘でもいいから」と思いながら我を忘れ、日常のフラストレーションをぶつけあっているように見えた。音に反してフロアの表情は真剣だし必死すぎる。現実に潰されそうになりながらライブハウスに辿り着き、(嘘でもいいから)この世界から連れ出してくれ! と叫んでいるかのよう。歯の浮くようなロマンスを歌詞に綴る浅見が、自分たちの音楽に「ディストピア・ロマンス」の名を冠するのは、なんだか必然という気がしたのだ。

 前置きが長くなったが、新作『Dystopia Romance 3.0』は、ロマンスよりもディストピア成分の強い、はっきりいえば相当ダークで内省的な作品だ。抑揚のない浅見の歌声に喜びの色は感じられず、既発曲のリミックスも総じてメランコリックなムード。楽曲だけを聴いて「狂乱のモッシュピット」を思い描くことは難しいだろうが、だからこそ、これは初めてハバナイの内面にじっくり迫れる作品なのかもしれない。

 流麗なシンセの降り注ぐサウンドに、かくも巨大なモッシュピットが生まれるのはなぜか。ディストピアから始まる現代のディスコソングに、どうして「ロックンロール!」の絶叫がしっくりきてしまうのか。ただ享楽的なパーティー集団ではない。この時代にハバナイが拡張を続けている理由を、浅見に語ってもらった。(石井恵梨子)

“革命の継続”

ーー過去のインタビューをチェックしてみても、音楽についてがっつり語るものが少なくないですか?

浅見北斗(以下、浅見):ないかな、そういえば。たぶん聞かれても俺があんまり答えてない。結局「曲はあんま大したことないし」みたいな感じで話してしまうから(笑)。まぁきっかけとしてね、俺の歌があってライブステージがあるんだけど、でも本質的なものはフロアにあるっていうのがハバナイの基本の考え方だから。

一一作品を語るだけでは現状の説明がつかないんですよね。ハバナイの音って、現実なのか虚構なのかわからないところがありますし。

浅見:虚構……なのかなぁ? 現実のつもりなんだけど。でもインターネットってそこが曖昧だったりするから。そういう意味では、インターネットをそのまま反映させるとこうなるんだと思う。たとえば「ディストピア」なんて、普段生活してて家族と使う言葉じゃない(笑)。でも友達との会話の中には普通に出てくるから。音楽やインターネットや世界のことを話してるとディストピアを強烈に感じざるを得ないし。

一一そこは音に出てますよね。シンセはキラキラしてるけど、その裏に絶望や諦念がべったり貼り付いている感じがする。

浅見:ハバナイはディストピアみたいな概念を音楽化、楽曲化してるつもりで。そういう場所でしか生きられない奴らのコミュニティみたいなものを歌ってたりもするだろうし。でも、ロックミュージックってそもそもアウトサイダーのための音楽だと俺は思ってるし、結局アウトサイダーを肯定したい。ロックンロールって伝統を受け継ぐことじゃなくて、現実へのカウンターだと思ってるから。そういう意味では自分が一番ロックンロールを受け継いでるはず。全然認められてないけど(笑)。

一一新作に寄せた声明文にもある「先進的な革命めいたものが起きることをロマンチックに妄想していた」というのも、まさに60年代から続くロック思想ですよね。ハバナイは、いろんな手を使ってそれを追い続けてきた。

浅見:そう。革命の継続というか。「何か起きるんじゃないか?」っていう期待感をずっと継続させてきて。ただ、ある時期から「これはもう変わんねえな」っていうのがドカンときてしまって。この一年くらいかな? だから曲がすごく暗くなり始めた。

一一変わらないっていうのは、バンドの状況のことですか。

浅見:いや……もっとこう、自分の世界の捉え方が変わってきた。より強烈な不安を感じるようになってきて。すげぇ極端に言うと、アメリカはトランプ政権に変わって、ものすごく世界情勢が不安定になってきたり。あと最近だと仮想通貨。俺はやってないけど、仮想通貨が暴落したとか、NEMが突然大量に消えたとか。そういう話がタイムラインに入ってくるたびに「これで一体何人の人間が死ぬんだろう?」って、その恐怖と不安がめちゃくちゃ強くなってる。あとは普通に生きてても気持ちが不幸になっていく奴を何人も見てるし。だからハバナイの現状というより、俺がシリアスになりすぎてるのかな。良くないなと思うけどね。ほんとはもっと底抜けに馬鹿な曲を作りたい(笑)。

一一「Clap Your Hands」のトラックとか、ほんと世界が終わっていくみたいな気分になりましたね。今の話で納得しましたけど。

浅見:そうだね。LCD Soundsystemの『American Dream』って、去年出たアルバムがあって。あの世界観って……ミシェル・ウエルベックの『素粒子』、わかるかな?

一一ごめんなさい、わからないです。

浅見:要するに、ヒッピーだった人たちの60年代的な自由みたいなものが、90年代的資本主義に圧倒的に負けていく話。若かった奴らが年老いて、貧困だったり、あとは友達がエイズになっちゃったりして、最終的には破滅していくだけ。めちゃめちゃ救いがない小説で。で、LCDの『American Dream』は完全に『素粒子』の世界観なんだよね。60年代や70年代のカリフォルニアフィーリングには絶対に戻れない、革命はここで起きたかもしれないし、資本主義から自由になったかもしれないけど、今の自分はただの髭面のオッサンに成り果てている……っていうのを淡々と歌ってる。もうこうやって話すだけでマジで泣きそうになるくらい暗い曲(笑)。LCDは、オバマが登場した頃に一回辞めてるんだよね。ここから明るい未来がやってくるんじゃないかと期待してた、かなりいい時代に辞めたけど、でもその空気は結局負けてトランプが出てきた。それであのクソ暗いアルバムを作るんだ……って。そういうの、すげぇ苦しいなぁと思って。それで「Clap Your Hands」もああいう感じになってしまって。もうモロに出ちゃってる。

一一ちょっと死の匂いもしますよ。〈もっと巨大な何か、特別な何か〉を待ち侘びるロマンティシズムの隣に、諦念がくっついている。

浅見:あぁ、そうなのかも。「巨大な何かが起きるんじゃないか?」みたいな期待感は常にあるんだけど、でも「それも結局は起きないんだよな」っていうのを、なんとなく頭の片隅でわかってるというか。だけど「やっぱり何か起きるんじゃないか?」っていう気持ちは持ち続けたいから。だから、そうだね、諦念というか、革命は起きない、っていうのも同時にわかってはいる。そう言っちゃうと出口がない感じだけど。

      

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