Have a Nice Day! 浅見北斗が語るディストピア・ロマンスの裏側「アウトサイダーを肯定したい」

ハバナイ浅見北斗が語る「ディストピア・ロマンス」

東京でしかハバナイは生まれなかった

一一最初はもっとアップテンポな曲が多かったけど、昨年「マーベラス」ができて、ああいう曲でも全員がシンガロングするようになった。こういう変化も新作に影響を与えているのかなと思います。

浅見:「マーベラス」はかなりダウンテンポで、あとは言葉に意味が強い。昔は考えづらかったことだった。ゆっくりした曲でみんなに歌わせるって。確かに「マーベラス」は今のハバナイじゃないとできないかなって思う。それはバンドが変遷を重ねてきて今の形になったこともあるのかな。

一一この曲にある〈東京のヒカリに身を委ねて〉〈この街の光に身を焦がされているよ〉という歌詞は、どういうイメージなんでしょう。

浅見:うーん……ちょっと言ってることと相反しちゃうんだけど、東京にみんなストレスを感じてるはずなんだよ。だけど俺は東京がいいなと思う。言ったらすごいドライだし、全員に対して平等に冷酷だし、過剰な情報量と物凄いスピード感があって。俺は神奈川出身だけど、自分の地元ではあんまり身の置き場がなくて。だったら誰に対しても平等でドライな東京のほうが好きだなって。で、東京の表面は常に高速で変化していくし、価値観も変動し続けてる。それってインターネットと同じだなと思う。俺の中では「インターネット」「東京」「ディストピア」って同じなんだよね。構造は一緒というか。この街でしかハバナイは生まれなかっただろうし。

一一今の話には、全員が平等に孤独である、という前提がありませんか。たとえば先祖代々続く大家族の家だって東京にはあるんだけど……。

浅見:そこらへんのエリアは俺の東京の世界観に含まれない(笑)。だから葛飾とか台東区は含まれてない(笑)。新宿区、渋谷区、あとは世田谷とか港区の一部、なのかな。

一一地元のコミュニティに属せなくて、あえて孤独を享受して、夜な夜な徘徊してる人たち。以前「パーティーピーポーじゃなくて、ミッドナイトゾンビなんだ」って話していたの、よくわかります。

浅見:そう。地元にうまくハマれてたら、実家離れないし東京にも来ないじゃない(笑)。生まれた場所とそいつの本質って無関係だから、そこに絶対ズレは生じるんだけど、そこで上手く合わせられる奴もいる。でも東京みたいにみんなが平等に孤独な場所って、俺にとっては安心できる。

一一彼らに向かって〈この世界の終わりを見に行こう〉って呼びかけるのは、なぜでしょうか。

浅見:たとえば映画の『マトリックス』みたいな、すでに完璧にできあがっている世界があるとして。でも、その世界ではもう新しいことは起きない。起こるとすれば外側だと思う。だからこの歌は、この世界が終わる日のことではなくて、別の世界、違う世界との境界を見にいこう、みたいなイメージ。世界の縁(へり)に行くような感覚。そこに行くことで、この作られた世界から抜け出したい。それってずっとハバナイをやってて一貫してるはずで、要するに今ある世界から抜け出す、エスケープしていくっていうこと。それって根本的にめちゃくちゃロックンロール思想だと自分では思ってる。

一一それなのに、舞台がディスコなんですよね。ミラーボールって虚構の象徴でもあるじゃないですか。

浅見:確かに。でもそれでもいいなと思ってる。享楽性ともいえるのかな。嘘か本当かはそれほど大事ではなくて、それよりも、その瞬間が沸騰しているかどうか、圧倒的に熱狂しているかどうかってことが大事。途中のプロセスが歪んでいようが、この瞬間が沸騰していればいい。周りは嘘でもいいっていうか。そういうのは全然アリかなと思う。

一一だからハバナイは、「その先」っていうのがイメージしづらいバンドでもある。浅見さんはどう考えているんでしょうか。

浅見:……ずっと「新しいもの」ではありたいとは思ってる。定着しないものというか。カオス、混沌としたものであり続けたいなって。最初はオープンなものでも気づかないうちに新しいものに対して排他的になってるってよくあることだし、そういうことを何度も見てきてる。混沌って、秩序に向かっている段階、秩序になる直前の様子までのことを言うらしくて。だから、定着しないし、秩序を持たせ続けない。ギリギリでルールができないまま、というか。それってラディカルなことだと思うし、ハバナイはそういうものであってもらいたいな。

(取材・文=石井恵梨子/写真=morookamanabu)

■プロジェクト情報
Have a Nice Day!(ハバナイ)、最新リリースとフリーパーティー概要
期間:1月12日(金) ~4月1日(日)

■ライブ情報
『Dystopia Romance 3.0リリースパーティー Have a Nice Day! ONE MAN SHOW』
日時:2018年5月1日(火)
会場:Zepp Diver City 東京
エントランスフリー(要ドリンク代)
open.17:00 / start.19:00

■Have a Nice Day! presents Dystopia Romance 3.0 フリーライブプロジェクトDOMMUNE2DAYS!(DAY1)
3月23日(金)@DOMMUNE
21時~24時
出演:
Have a Nice Day!
Mr.マジックバジャールa.k.a.カレー屋まーくん(DJ)
Chim↑Pom(トーク:林靖高、ディレクター古藤寛也)
ぼく脳(トーク)
http://www.dommune.com

Have a Nice Day!公式ホームページ

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