BLUE ENCOUNTは一緒に歩みたくなるバンドだ ファンとの“絆”感じたリクエストワンマン

ブルエンは一緒に歩みたくなるバンドだ

 BLUE ENCOUNT(以下ブルエン)はリアルなバンドだ。この日もそれを象徴する一コマがあった。彼らは常にその時々の心情や状況が、音源やライブに如実に表れる。そういう意味では人間臭くもあり、不器用なバンドと言えなくもない。ゆえにずっと追い続けていると、もっとバンドのことを愛さずにはいられなくなり、次の動向が気になって仕方がなくなる。一緒に歩みたくなるバンドこそがブルエンなのだ。

 昨年11月からスタートした東名阪ワンマン&ツーマン2DAYSツアー『TOUR 2017-2018〜VS〜』は、各場所でリクエストワンマンと対バン形式のライブを2夜連続で行うという画期的な内容。今回は東京公演の初日にあたるリクエストワンマン公演に足を運んだ。

 ショーは最新シングル「VS」表題曲で幕を開けると、「HALO」、「D.N.K」と続け、田邊駿一(Vo/Gt)、江口雄也(Gt)、辻村勇太(Ba)、高村佳秀(Dr)のメンバー4人の高いプレイヤビリティを発揮した、花散るアンサンブルで観客をド頭から焚き付ける。この3曲を披露した時点で「クライマックスです!」と、田邊が思わず口にするほどの熱狂図が広がっているではないか。それからリクエスト8位圏内の「MEMENTO」、「声」、「ロストジンクス」と畳み掛け、さらなる猛攻撃を仕掛けていく。それから久々にやるというリクエスト19位の「パラノイア」を挟んだ後、バンドの屋台骨を支える高村の方をメンバー3人が向き、観客に背中を見せる形で気持ちをひとつにすると、「Survivor」が放たれた。バンド一丸となり、〈手を取り合って僕ら 地を這い立ち向かうよ〉の歌詞通りに聴き手と共にサバイブし続ける闘志漲るサウンドを大放出。

 東名阪の3カ所に及び、ファン投票によるリクエストを募った今回のライブ。やはり土地柄によって、人気曲に変動がある点が興味深く、なによりメンバー本人が新たな発見や驚きがあったに違いない。昔の曲の方が認知度が高くて、みんな知っているだろう。そんな予想をあっさりと覆したのが最新シングル『VS』のカップリング曲「SUMMER DIVE」だ。なんと東京では最上位のリクエスト4位にランクイン! この曲が始まるや、最初から観客はタオルを回し続ける有様だ。バンド初の夏フェス縛りのパリピ・チューンだが、英語詞の部分には痴漢、スリ、人を傷つけてはいけません、などライブにおけるマナーを綴っている。楽しむのは大いに結構、ただし、ルールを守ってくれよ、と釘を刺す手腕にブルエンの真摯な人柄が感じ取れる。

 中盤に差し掛かると、江口が初めて作詞作曲した「The Chicken Song」のシンプルなポップ性がいいフックになっていたし、リクエスト2位の「HANDS」に突入すると、観客を両手を挙げて楽曲の世界観に埋没していた。そして、後半は「KICKASS」を筆頭にライブ必須のキラーチューンを連打し、会場はシンガロングやダイバーがひっきりなしに勃発するカオス状態へ。観客のハートとフィジカルの両側面を刺激する圧倒的なエネルギーを見せつけた。

 本編も残り僅か。「だいじょうぶ」を終えると、田邊は「不安だったから、リクエストワンマンをやった」と赤裸々に告白。続けて「どんな曲が1位でも20位でもいい、あなたの前で歌えりゃそれでいい!」と叫んだ。今回の企画を根底からひっくり返すような発言に、こちらがひっくり返りそうになった。しかし、こういう形で手続きを踏まなければ、自分の本当の感情に気づかないのだろう。舗装された近道を選ばず、泥だらけの畦道を素っ転びながら突き進む彼らの姿に、多くのファンが共感を覚えるのだ。本編ラストはリクエスト1位、バンドとリスナーの絆を強固にした人気曲「もっと光を」を披露。すると、全身全霊でプレイするメンバー4人の勇姿に応えるべく、観客からもこれ以上ない大合唱が沸き起こっていた。

 アンコールに入ると、3月21日にニューアルバム『VECTOR』発表を告知し、そのオープニングを飾る「灯せ」(TVドラマ『オー・マイ・ジャンプ!〜少年ジャンプが地球を救う〜』エンディング曲に抜擢)をプレイ。力強い歌声とメッセージ性の入ったスケールの大きな曲調で、ここにいる観客すべてを温かく照らすサウンドであった。この1曲を聴いただけで、ニューアルバムがどんな仕上がりになっているのか、期待せずにはいられなくなった。真新しいサウンドを引っ提げ、こちらをアッと驚かせてくれるに違いない。2018年、ブルエンはもう数段高いステージに聴く者を誘ってくれることだろう。

 

(文=荒金良介/撮影=浜野カズシ)

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