NMB48「ワロタピーポー」のポイントは“軽薄さ”にあり? 秋元康のプロデュース力光る作品に

参考:2017年12月25日〜2017年12月31日の週間CDシングルランキング(2018年1月8日付)(ORICON NEWS)

 今週のオリコンウィークリーチャートはNMB48のニューシングル『ワロタピーポー』が1位を獲得。同グループがちょうど1年前に発売した前作『僕以外の誰か』より初週売上を伸ばし、MV再生回数もすでに前作を超えている。しっかりとヒットした実感のあるリリースとなったのではないだろうか。

NMB48『ワロタピーポー』(通常盤)Type-A

 「ワロタピーポー」は、匿名の書き込みによる無責任な主張や態度に対する批判を含んだ歌詞を、気持ちBPM速めのダンスチューンで明るく楽しくまとめ上げた楽曲だ。非常に現代的なテーマを扱いながらも、シリアスに陥らず元気に笑い飛ばそうという歌である。

<ワロタ ワロタ ワロタ ワロタピーポー どこの誰か名前隠して騒げ!>
<ワロタ ワロタ ワロタ ワロタピーポー 人の群れに紛れ石を投げろ!>

 こうした社会風刺をベースにお祭り感覚で踊るダンスであったり、途中に“ウッ”とか“ハッ”といった滑稽な掛け声を挟み込むことで、陰湿な空気を払拭する爽快感がよく出ている(モーニング娘。「LOVEマシーン」を思い出した方も少なくないだろう)。

 ただし、音作りなどサウンド面については基本的に何か特筆して語るべきものではない。むしろ、それが結果的に曲のテーマの部分に直結しているのだ。つまり、“ワロタピーポー”たちの行動や彼らが作るムードがいくら空っぽであったとしても、それを表現するサウンドやメロディに聴き応えがあっては本末転倒だろう。いかに軽薄であるかがこの曲のミソなのである。とくに全員合唱の部分<ウォーオーオー…>のメロディのうつろさは群を抜いていて、アイロニーなしで歌うことは難しい(合唱というのもまた批評性を含んでいるだろう)。しかも、ちょっと聴いたくらいでは「単純に楽しそう」という印象にとどまるキャッチーさを保つことで、“ワロタピーポー”たちの行動原則がどれだけ欲求に身を任せたものであるかを映し出しているかのようだ。「ただ楽しむだけの空虚なポップソング」として、この曲の佇まいは徹底している。

 総合プロデューサーである秋元康は一方で、非常に似たテーマの「エキセントリック」という曲を欅坂46に書いている。「エキセントリック」は打って変わって内省的で、主人公の孤独さが際立つ楽曲だ。近いテーマを扱いながらもテイストを変え、大阪難波を拠点とするNMB48にはこうした皮肉たっぷりのポップスへと昇華する手腕には脱帽である。時代を捉える嗅覚もさることながら、似通った題材でも歌うグループによって趣向を変えられるプロデュース力の光った一曲と言えるだろう。

■荻原 梓
88年生まれ。都内でCDを売りながら『クイック・ジャパン』などに記事を寄稿。
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Twitter(@az_ogi)

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