アイドルの声優活動なぜ増加? 2つのシーンに起こった変化を読む

“声優アイドル”を謳ったグループも続々登場

 このように、いまや声優という職業は演技だけでなく複合的なスキルを求められる傾向が強まっており、そのことがステージでのパフォーマンス力の高いアイドル出身者、あるいは現役アイドルの声優業への進出を後押しする一因となっている。加えて、先述のi☆Risや、アイドルを題材にしたアニメ作品『Wake Up, Girls!』から誕生した声優ユニットのWake Up, Girls!のように、声優を軸足にしつつアイドル的な活動を行うグループの躍進もまた、そういったシーンの垣根を取り払う役目を果たしているように思われる。

 ここにきて、秋元康×アニプレックス×ソニーミュージックのバックアップによる22/7、指原莉乃がプロデュースする=LOVE、アイドル専門レーベルの<Stand-Up! Records>から登場したピュアリーモンスター(アイドルカレッジの中島優衣が兼任で在籍)といった、声優アイドルを謳ったグループが続々と誕生しているのも象徴的だ。ももいろクローバーZや私立恵比寿中学などの人気アイドルを抱えるスターダストプロモーションも昨年に声優部を新設し、そこに所属する7人の女性声優でサンドリオンというユニット活動を展開している(先述の小山百代もメンバーのひとり)。

 もちろん声優が人気職となったいま、単純に将来の進路として声優になることを選んだり、アイドル卒業後のステップアップの道として声優業に進む人も多いことだろう。元アイドリング!!!13号の長野せりなは以前から声優を志していたことで知られ、現在はその夢をかなえて声優事務所のアクセルワンに所属している。アフィリア・サーガ・イースト(現・純情のアフィリア)のレイミー・ヘヴンリーこと八島さららや、コヒメ・リト・プッチこと小日向茜もグループ在籍時から声の仕事に就いており、いまや声優として活躍中だ。

 声優といえばまず演技力が必要とされるわけだが、さまざまな役柄を自分のなかでイメージして表現していくには、想像力はもちろんのこと人生経験の豊富さが役立ってくるはず。それであれば、アイドルという誰しもが経験できるわけではない特別な活動を行っていたことは、演技の大きな糧となることだろう。実際に日高のり子や櫻井智、岩男潤子、宍戸留美のように、アイドル活動を経て声優としての評価を得た人物は多い。なによりタレントにはやはり何かしらの華が求められる。声優がアイドル視され、アイドル的な活動が求められる事例の多くなったいまこそ、ここで紹介した彼女たちが声優として大きな華を咲かせるタイミングなのかもしれない。

■北野 創
音楽ライター。『bounce』編集部を経て、現在はフリーで活動しています。『bounce』『リスアニ!』『音楽ナタリー』などに寄稿。

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