レジーのJ-POP鳥瞰図 第18回
三浦大知、SKY-HI、w-inds.ら男性パフォーマー“第三極”の充実 純音楽家として目指す先は?
「若さ」の壁を乗り越えて
男性アイドルが長く活動を続けるモデルをジャニーズのグループが多数示している一方で、ブームが起こってから日の浅い昨今の女性アイドルには「どうやって年を重ねていくか」という問いに対する先行事例がいまだ少ない。昨年6月に当連載においてアップした女性アイドルのキャリアに関する記事(アイドルは年齢とキャリアをどう重ねていく? AKB48、Perfume、Negiccoが示す新モデル)で触れた通りPerfumeや前田敦子といった存在がアイドルというものの定義を更新していく役割を今後担っていくはずだが、彼女たちの直近の足取りを概観すると、自立した存在でありつつも周囲の表現者との化学反応をより高度なものにしていくという形での成長を遂げているような印象がある。今回取り上げた男性パフォーマー3組がミュージシャンとしての自分らしさを追求しながらキャリアを形成しようとしている一方で、女性アイドルの年の重ね方には「自分らしさの追求」だけでなく「調和」という要素が加わってくるという対比も(少ないサンプルでの比較ではあるものの)面白い。
この先ますますの高齢化が進む日本の社会において、「若さに頼らずに生き生きと年を重ねていくにはどうすればいいか」というテーマがさらに重要性を増すのは間違いない。昨年話題になったドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』(TBS系)では石田ゆり子演じる百合が若さだけに価値を見出す姿勢のことを「呪い」と表現し、多くの人の価値観を揺さぶった。アイドルと呼ばれる存在が男女ともにそれぞれのやり方で活動を継続しようと模索している今のポップシーンの状況は、今後「呪い」と対峙せざるを得ない日本のあり方を先取りしているとも言えるかもしれない。若い層とそこを通り過ぎた層の切磋琢磨によって優れたアウトプットが多数生まれる環境がより盤石なものになることを願うとともに、その試行錯誤が音楽シーンのみの話にとどまらず「呪い」にとらわれた人たちに対する何らかの処方箋を提供してくれることを期待したい。
■レジー
1981年生まれ。一般企業に勤める傍ら、2012年7月に音楽ブログ「レジーのブログ」を開設。アーティスト/作品単体の批評にとどまらない「日本におけるポップミュージックの受容構造」を俯瞰した考察が音楽ファンのみならず音楽ライター・ミュージシャンの間で話題に。2013年春にQUICK JAPANへパスピエ『フィーバー』のディスクレビューを寄稿、以降は外部媒体での発信も行っている。