三浦大知、SKY-HI、w-inds.ら男性パフォーマー“第三極”の充実 純音楽家として目指す先は?

ジャニーズとの相違点と共通点

 このタイミングで注目を集めることになった3組だが、彼らのキャリアはすでに長年にわたっている。三浦大知がFolderとして9歳の頃に活動を始めたのは1997年、ソロデビューを果たしたのが2005年。この年にはSKY-HIが所属するAAAもデビューしている。また、w-inds.がデビューシングル『Forever Memories』をリリースしたのが2001年ということで、それぞれ最低でも10年以上の活動歴があることがわかる。

 この3組は、これまでの活動の中でいわゆる「アイドル」的な見られ方を程度の差はあれされてきた部分がある。「音楽に対しての向き合い方が本気ではない」といった認識を持たれやすい場所を出自としながらも各々が音楽的な知見を深めていき、今では周囲のミュージシャンたちが一目置かざるを得ないような存在感を発揮するようになった。「見られること」「楽しませること」において一日の長がある彼らが純音楽家としてのパースペクティブを獲得したことで、マニアックさと間口の広さが同居するユニークな感触の表現が次々に生み出されている。「男性アイドル」としての「若さ」「フレッシュさ」といった部分が徐々に後退していく中でミュージシャンとしての実力をつけていっているこの3組の年齢の重ね方は非常にバランスが良い。

 ところで、日本において「若さ」「フレッシュさ」を魅力とする「男性アイドル」の代表格がジャニーズ事務所のグループであることに異論をはさむ向きはないだろう。彼らは十分なトレーニングが施されていない状態からステージに上がり、不特定多数の視線にさらされる。その時点ではスキル面で未成熟な部分も当然あるが、ファンはそんな少年たちが経験を積んで育っていくというプロセス自体を楽しんでいる。

 そういったハイコンテクストな表現がいわば日本における男性パフォーマーの基準点になっている状況から考えると、本稿で取り上げている3組のユニークさが際立ってくる。もちろん彼らの背景にもキャラクターとしての成長ストーリーがあるし、そこに魅力を感じているファンも多数存在するはずである。ただ、海外の音楽と共振する作品を発表する彼らが本来志向しているのは、そういった文脈に規定されないスキルや音楽性に立脚したエンターテインメントなのではないだろうか。これまで「シーンの追い風」といったものに頼らずに実力を磨いてきた彼らからは「ハイコンテクストな表現では勝負にならない」「一目でそのすごさがわかる作品やパフォーマンスを提供しなければならない」という姿勢を強く感じる。

 一方で、「アイドル的人気に支えられた少年が大人になる中で表現の幅を広げていく」という世界観は、ジャニーズの面々が時間をかけて構築してきたものでもある。「若い男としてちやほやされて終わり」ではなく、ナチュラルに年を重ねながら男性も含めた幅広い層の支持を獲得する。そんな時代を最初に呼び込んだのが90年代半ば以降のSMAPであり、今では30代~40代のメンバーのみで構成されているグループが若い頃とは異なる魅力を放ちながら活躍することも当たり前になっている。また、例えば堂本剛が自身の音楽観を独自に突き詰めているように、年の重ね方にも多様性が担保されている。

 前述の通り、三浦大知、w-inds.、SKY-HIの戦い方は、ジャニーズ事務所のグループとは異なる部分が多い。ただ、芸能と音楽をまたにかける男性パフォーマーが長く活動できる状況を率先して整備してきたのはジャニーズ事務所の先達であるというのもまた事実である。多くの男性アイドルグループが耕してきた土壌の上で、ジャニーズとは異なる力学で支持を集める存在が複数登場してきているのは非常に興味深い傾向である。

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