レジーのJ-POP鳥瞰図 第18回
三浦大知、SKY-HI、w-inds.ら男性パフォーマー“第三極”の充実 純音楽家として目指す先は?
「男性パフォーマー第三極」の充実
ひと月ほど前の話になるが、3月22日にリリースされた三浦大知の1年6カ月ぶりのアルバム『HIT』がオリコンチャート初登場4位を獲得。リリース前後には多数のメディアに出演し、従来のファン層のみならず多くの音楽ファンの間で話題を呼んだ。作品の詳細は先日当サイトにアップした記事に譲るが(三浦大知の実力を誰も無視できないーー最新作『HIT』の音楽的充実とポテンシャル)、この先さらにたくさんの人に届いてほしい意欲作である。
三浦大知『HIT』のリリースから遡ること1週間、3月15日に発表されたのがw-inds.『INVISIBLE』。こちらも発売直後のオリコンチャートで初登場4位にランクインした。2014年のアルバム『Timeless』あたりからその音楽性がじわじわと評判を広げていた彼らだったが、今作の先行シングル曲「We Don’t Need To Talk Anymore」の海外のポップソングに引けを取らないクオリティによっていよいよその実力が多くの音楽ファンに「見つかった」感がある。『INVISIBLE』にも「Complicated」「CAMOUFLAGE」など「We Don’t Need To Talk Anymore」と同様の心地よい浮遊感を持ったダンスナンバーが複数並んでおり、「日本のポップミュージックはガラパゴス化している」なんて話はどこ吹く風といった感じの作品になっている。
「We Don’t Need To Talk Anymore」のクオリティがネット上で話題になり始めた際、昨今のインディー界隈における注目株として名前が上がることの多いyahyelとDATSで活躍する杉本亘が「w-indsと一緒になんかやりたい…」(原文ママ https://twitter.com/monjoe_/status/820547845346512896 )と反応する一幕があった。w-inds.の活動がシーンの枠を越えて認知されつつあることをわかりやすく示すエピソードだが、こういった「越境」という観点から並べて挙げたいのが1月に新作『OLIVE』をリリースしたSKY-HIである。AAAのメンバー・日高光啓として活躍するのと並行してヒップホップシーンに確かなポジションを築いてきた彼は、今ではロックフェスでも支持を集めるような独特の動きを見せている。『OLIVE』も最近のアメリカのR&Bやヒップホップに見られるゴスペル的なムードを自分の問題意識とうまくリンクさせた深みのあるアルバムで、アッパーな「アドベンチャー」から大きな愛と肯定を歌う「クロノグラフ」「ナナイロホリデー」まで、自身が語る通り一本の映画として機能するような作品に仕上がっている。
三浦大知、w-inds.、SKY-HI。それぞれが自身の資質と向き合った素晴らしいアルバムを今年の第1四半期に発表したが、ジャニーズ事務所所属でもなければLDHのグループでもない男性パフォーマーの作品が音楽ファンの間でこのようにまとまった形で注目を集めたことはこれまであまりなかったように思う。海外の音楽とのつながりを意識しながらユニークな作品を自ら作り上げる「第三極」とも言うべきシーンが生まれたのは、日本のポップミュージックの層をより分厚いものにする喜ばしい動きである。SKY-HIがw-inds.の橘慶太の作品に参加していたり、三浦大知とw-inds.が同じ事務所に所属していたりと、何かと交流のあるこの3組。先日SKY-HIと橘慶太は再びの共作をツイッターで匂わせていたが(https://twitter.com/SkyHidaka/status/834434378360975360)、脂の乗り切った今だからこそできるコラボを楽しみにしたいところである。