スコット&リバースが『ニマイメ』で表した“新しいJ-POP” キャリアと音楽性から魅力を分析

スコット&リバース、新しいJ-POPを分析
Scott & Rivers 『変わらぬ想い with miwa』

 weezerのフロントマン、リバース・クオモと、元ALLiSTER/MONOEYESのスコット・マーフィーが、「日本語で歌う」をコンセプトに結成したプロジェクト・スコット&リバースによる、前作からおよそ4年ぶりとなる2ndアルバム『ニマイメ』が4月12日にリリースされる。

 ジャパニーズ・カルチャーやJポップ・Jロックへの造詣が元々深い、2人の生み出すメロディはどれも極上で、ちょっと湿り気のあるコード進行と共に日本人の琴線を揺さぶりまくる。それにしても、二人は何故そこまで「日本」に傾倒していったのだろうか。いわゆる「欧米ロックやポップス」と「JポップやJロック」の違いはどこにあり、魅力を感じるのはどんなところなのだろうか。

 まずは、リバース・クオモとスコット・マーフィーの経歴についてざっと振り返ってみたい。

 ニューヨーク州ニューヨーク出身、コネチカット州ストアズ育ちのリバースは、Guns N’ Rosesの影響で18歳の時にロサンゼルスに拠点を移し、そこで出会ったメンバーと共に1992年にweezerを結成する。1995年にリリースしたセルフタイトルのデビュー・アルバムは、全米で300万枚以上のセールスを記録。内向的な歌詞の世界と泣きのメロディ、メタルやパンクを通過したバンドサウンドのコントラストは、日本でも“泣き虫ロック”と形容され大きな話題となった。

 続く2ndアルバム『Pinkerton』では、ジャケットに歌川広重の浮世絵『東海道五十三次』の一幕を使用したり、タイトルが『蝶々夫人』の登場人物の名前だったり、リバースの親日的な部分が早くも作品に反映されるようになる。以降はメンバーの脱退や一時的な活動休止など、いくつかの試練を乗り越えつつ、マイペースに作品を作り続けてきた。私生活では、長年交際していた日本人女性と結婚。夫人の実家がある九州への帰省なども含め、頻繁に来日しているようだ。

 一方、アメリカ・イリノイ州シカゴ出身のスコットは1995年、16歳の時にメロディック・パンクバンド、ALLiSTERを結成する。2001年に初来日公演を行っているが、その際たまたま立ち寄った沖縄料理の屋台で、 THE BOOM の「島唄」を耳にし衝撃を受けた。アメリカでは聴いたことのない独特の響きに魅了され、たちまち日本の文化や音楽へとのめり込む。例えば、ALLiSTERが活動休止直前にリリースした『Guilty Pleasures』(2006年)では、スピッツの「チェリー」やサザンオールスターズの「TSUNAMI」、BEGINの「島人ぬ宝」を日本語で、森山直太朗の「さくら」を英語でカバー。この企画は好評で、ソロになったスコットによって引き継ぎシリーズ化されることとなる。スコット&リバースの青写真は、この時すでに出来ていたのかもしれない。

 その後も『SUMMER SONIC』への2年連続出場や、『スッキリ!!』『めざましテレビ』『HEY!HEY!HEY!』などテレビ出演も積極的に行い、2015年からはthe HIATUS・ELLEGARDENの細美武士らと結成したバンド、MONOEYES のメンバーとしても活動している。

 さて、そんな二人が共通の友人であるエンジニアを介して意気投合し、2008年に結成したのがスコット&リバースだ。

 初お披露目は、それから4年後の2012年暮れ。『RADIO CRAZY』や『COUNTDOWN JAPAN 12/13』に出演すると、Jポップ・Jロックに影響を受けたハッピー&サッドなメロディと、カタコトの日本語で一生懸命歌う二人の姿は、多くのオーディエンスに強烈な印象を残した。翌年3月には、満を辞してのデビュー・アルバム『スコットとリバース』をリリース。およそ5年かけて制作された本作は、自分たちのオリジナル曲の他に木村カエラの大ヒット曲「Butterfly」を取り上げており、QUEENやJellyfishあたりを彷彿とさせる壮大なアレンジによって、再び彼らは大きな話題となった。

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 その後、ツアーやフェス出場など積極的にライブ活動〜メディア露出などを行うも、2014年末に開催された『COUNTDOWN JAPAN 13/14』をもって暫し活動休止に入る。

 そして、昨年8月に活動再開。MONGOL800のキヨサクや、RIP SLYMEのPESをゲストに迎えた新曲「Doo Wop feat.キヨサク(MONGOL800)」「FUN IN THE SUN feat.PES(RIP SLYME)」を経て、このたびリリースされるのが、冒頭で述べた彼らの2ndアルバム『ニマイメ』である。

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