乃木坂46は2016年の夏にどう成長した? 神宮BDライブが映し出した“2つのテーマ”
8月28~30日にかけて東京・明治神宮野球場で開催された『真夏の全国ツアー2016 ~4th YEAR BIRTHDAY LIVE~』は、そのタイトルにあるように2つの大きなテーマを背負っていた。
ひとつは2016年の全国ツアーを締めくくる、ファイナル公演としての性格である。深川麻衣卒業コンサートでもあった6月の静岡公演を経て、15枚目シングル『裸足でSummer』を携えての7~8月のツアーは、齋藤飛鳥が初のセンターポジションを担うことに強い意味が持たされていた。例年、夏シングルのセンターメンバーが中心に立つ真夏の全国ツアーだが、今年は過去に比べても特に、初センターを務める齋藤の奮闘にスポットがあたり、グループの中心人物としての成長に大きな期待がかけられていることをうかがわせた。神宮球場での3日間は、齋藤飛鳥をセンターに戴いて走り抜けてきた2016夏の乃木坂46の集大成である。
一方でこの3日間は、これまでならば2月22日に開催されてきたグループのバースデーを祝う、半年遅れの記念ライブでもある。各地で行なってきたライブとは構成をまったく一変させて、アニバーサリーライブとして乃木坂46が発表してきた全曲を披露するため、内容的には一旦ここまでのツアーの流れからは切り離されることになる。そのコンセプト上、年を追って披露楽曲が増加するため、埼玉・西武ドームで開催された昨年のバースデーライブは7時間半に及ぶ構成となり、一日がかりの「お祭り」としての雰囲気を帯びていた。さらにシングルリリースを重ね、2枚目のアルバムリリースも経て楽曲数を重ねた今年は、神宮球場での3日間すべてをバースデーライブに充てることで、歴史の節目を無理なく、より丁寧に見せるものになった。
初日はメンバー全員による「ぐるぐるカーテン」で幕を開ける。この曲で始まるのはバースデーライブではもはや親しみのある光景だが、昨年とはまた違う意義を持つ。昨年、2期生の中でまだ正規メンバーに昇格していなかった6人の正規メンバー入りが発表されたのは、3周年を祝うバースデーライブのアンコール時のことだった。つまり、前回のバースデーライブ開幕時点では、彼女たちはまだ研究生としての出演だったことになる。在籍する1・2期生全員が正規メンバーとして迎える初めてのバースデーライブで、グループのデビュー曲を現在のメンバー全員で表現することから、今年のバースデーライブはスタートした。
この「ぐるぐるカーテン」にもうかがえるように今年のバースデーライブは、できるだけ楽曲オリジナルに近いメンバーでの披露を原則としながらも、過去曲の歴史や文脈をそのまま再現するだけでなく、現メンバー全員で乃木坂46の歩みを振り返り、現在形でパフォーマンスしてみせる色合いが強くなっている。たとえば、秋元真夏が活動に本格参加して初めてのシングル『制服のマネキン』パートの導入では、例年と同じくリリース時の秋元らの葛藤を振り返る。この時、VTR中に同時に重ねられるのは、秋元の活動再開とその復帰を受け止める西野七瀬との関係性が、かつてのバースデーライブですでに一度昇華されているという記憶である。今回のライブでは、このように過去のバースデーライブの一幕などもまた歴史として踏まえられながら、各シングルリリース時の状況だけでなく、その後のいくつもの変遷を想起させる場面が多かった。そして、その上で各曲をパフォーマンスするのは、充実期にある最新系の乃木坂46である。そこに結成から数えれば5年になるこのグループの歴史の厚みがうかがえる。
それは、初日の本編ラストを飾る5枚目シングル表題曲「君の名は希望」にも見られる。楽曲披露前のVTRではシングルリリースの2013年の映像を印象的に用いながら、その2年後にこの曲で紅白歌合戦初出場を飾る展開までが語られる。それぞれのシングルがリリース以降、長期的にどのような意味を持ってきたのかまでを踏まえることで、楽曲を起点にグループの歴史のさまざまな側面に光をあてることができる。