乃木坂46は2016年の夏にどう成長した? 神宮BDライブが映し出した“2つのテーマ”

乃木坂46は2016年の夏、どう成長した?

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 そして、シングルに関しては『君の名は希望』までで構成された1日目のライブからは、一つテーマが見えてくる。それは、5枚目シングルまでのすべての表題曲でセンターに立つ生駒里奈が、乃木坂46の象徴として定着するまでの歩みの確認である。このテーマ設定が自然に浮かび上がることで、単にバースデーライブを3分割したうちの一篇というだけでなく、一日で完結するライブとしての統一感を達成してみせた。時折、不敵にさえ見える力強い表情を浮かべる生駒を中心にしたメンバーたちは、芯の太さも表現の巧みさも楽曲リリース時から格段にレベルを上げ、活動初期の曲を2016年の色に更新しながらパフォーマンスしていった。

 1日目が生駒を軸とした活動初期の振り返りだったとすれば、6~9枚目までのシングル曲を中心に組み立てられた2日目は、白石麻衣や堀未央奈、西野七瀬とセンターに立つメンバーをシフトしながら、グループとしての幅を広げていった時期を再確認するものになっていた。時期を適切に区切りながら乃木坂46のストーリーをじっくり振り返るこのスタイルは、3日間を使って初めて実現できる表現だっただろう。本編ラストは9枚目シングル『夏のFree&Easy』収録曲で締めくくり、3日目へとストーリーを繋ぐ。台風の近づく天気との戦いだった3日間の中で、最も強い雨に見舞われた2日目終盤の9枚目シングル曲披露は、2014年以降グループ活動の中心を引き受ける西野の役割をことさらに引き立てる時間帯でもあった。

 そして生田絵梨花センターの10枚目シングル表題曲「何度目の青空か?」に始まる3日目は、披露される楽曲が持つ歴史と現在の乃木坂46との間のタイムラグがなくなってゆく、「今」を見せるライブになった。ただし、その中でも昨年のバースデーライブで初披露された「命は美しい」が1年半を経て圧倒的なパワフルさを備えた円熟型地になり、2期生メンバー6人による「ボーダー」が研究生時とは比較にならない自信をうかがわせるなど、直近2年ほどの間の進化も示してみせる。

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 この最終日の公演も終盤に入ると、3日間をかけてたどってきた乃木坂46の歴史の上演が、2016年夏へと追いつくことになる。ここで、大がかりなバースデーライブは、冒頭に示したこのライブのもう一つの意味、つまり真夏の全国ツアー2016のファイナルとしての性格を強く帯びていく。「シークレットグラフィティー」「僕だけの光」など7月以降の地方公演で育てられてきた15枚目シングル収録曲が順に披露されることで、この夏のライブシリーズの締めくくりへと加速する。また、伊藤万理華と井上小百合による「行くあてのない僕たち」の初披露によって、全曲パフォーマンスというバースデーライブのコンセプトも完成を見た。このライブに託された二つの意味が集約されてゆき、ここまでの歴史を引き継いだ現在地として最終日の本編を締めくくるのは齋藤飛鳥センターによる「裸足でSummer」である。この夏に描いてきた二本の物語は、若いセンターの背負う最新曲でフィナーレを迎え、未来への橋渡しとなった。

 1日がかりでこそ表現できるものもあれば、数日に渡ってでなければ描けない景色もある。初めて後者を選択した今年、変則的な開催日程や台風への備えなど、ある意味これまでで最も懸念の多かった4周年のバースデーライブは、そのぶん史上最も贅沢に歴史の厚みを見せる3日間になった。さらに道が長く延びてゆく来年、ただでさえ容易ではないコンセプトを掲げてきたバースデーライブはどのような進化形を見せるのか。乃木坂46が新たな発想で臨む来年のスタイルへの期待も、さらに大きくなる。

■香月孝史(Twitter
ライター。『宝塚イズム』などで執筆。著書に『「アイドル」の読み方: 混乱する「語り」を問う』(青弓社ライブラリー)がある。

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