『Muddy Apes Japan Tour 2016, Go Apes Go!!!』ツアーファイナルレポート
Muddy Apesのライブに感じる“距離の近さ” グルーヴに酔いしれた初のツアーファイナル
Muddy Apesが『Muddy Apes Japan Tour 2016, Go Apes Go!!!』のツアーファイナルを7月15日、新宿ReNYにて行った。このツアーは、6月15日にリリースされた3rdアルバム『Faraway So Close』を携えて全国5カ所をまわったもの。2012年にINORAN(Gt./LUNA SEA)、TAKA(Ba./FEEDER)、MAESON(Vo./8otto)、DEAN TIDEY(Gt.)といったワールドワイドで活躍するプレイヤー陣が集結して活動をスタートさせたMuddy Apesだが、リリースとライブは実に3年ぶり。開演前、会場に集まった観客たちの会話からも「久しぶりだね」とファン同士が再会を喜ぶ声が漏れ聞こえてきた。
オープニングアクトとして出演したTears Of The Rebelが、重厚なサウンドによる堂々としたステージングで会場を盛り上げると、いよいよMuddy Apesがステージに登場。サポートドラムのMIYOKO(DETROITSEVEN)、コーラスのSUZUとともにメンバーが現れると、自然な流れでサウンドチェック代わりのセッションが始まった。各メンバーがそれぞれの楽器の鳴らす音を感じながら、3rdアルバム『Faraway So Close』同様「Comfy」からライブはスタート。MIYOKOの力強さと抜けのあるドラミングを土台に、TAKAのしなやかなベースとINORANが刻むギターがサウンドに奥行きを与え、DEANの力強いリフが乗る。各パートが明確な役割を果たしながら、冒頭からうごめくようなグルーヴが見事に構築されていった。アンニュイなMAESONのボーカルとSUZUのコーラスが響く「Get Going」や鼻歌のような心地よいサビによる「New Sunday」は、バンド独自のオルタナティブ感を体現。そして、INORANとDEANによるギターの掛け合いから始まった「Candy Luck」では、オーディエンスのハンド・クラップがバンドのテンションをさらに高めていった。
演奏では凄腕を披露する彼らだが、それぞれのキャラクターが見え隠れするパフォーマンスもMuddy Apesの魅力のひとつ。MAESONの「みんな生きてるかー! みんな息しているかー! 魂燃やしてるかー!」というプロレスラーのような突然のMCが笑いを誘い、INORANの体全体で楽しさを表現する無邪気なギタープレイが、見ている者を笑顔にする。INORANと時折目配せしながらマイペースに音に酔いしれるDEAN、そしてそんなバンドメンバーたちを後ろで温かく見守りながらプレイするTAKA。アルバムタイトル『Faraway So Close』が「遠くにいても一番近くにいる」を意味するように、彼らのパフォーマンスからはお互いへのリスペクトと心の距離の近さを感じた。
ツアー中の映像などを使用して製作されたMVが、本公演に先駆けて公開されたアルバムリード曲「How How How」の披露では、間奏のINORANのギターソロからジャムセッションへ。ラストサビではアカペラの合唱も起こり、会場に一体感が生まれた。DEANのエフェクトがかった泣きのギターリフが印象的な「Space Monkey」では、MAESONの色気を放つボーカルとTAKAが作り出す艶やかなグルーヴが、あらゆる国境や時空を越えたMuddy Apesのサウンドを作り上げていると実感。続く「IZANAE」ではINORANのボルテージが急上昇、積極的にメンバーの元へ歩み寄りプレイ。その流れでINORANに突進されたMAESONもスイッチが入り、オーディエンスへむけた前のめりなマイクパフォーマンスで会場を沸かせ、「Tequila No.5」「Wave」と妖しげなサウンドとグルーヴがうごめく2曲を披露した。
その後の「Red Moon」は、INORANがアコースティックギターに持ち替え、これまでのテンションとは一変、柔らかな質感のサウンドを奏でた。バンドの表現力の幅が伺えた一曲だ。MIYOKOのドラムを囲み、ドラムのカウントで勢いよくはじまった「Peep Show」では、MAESONが用いたカウベルの音色がエキゾチックなバンドサウンドを彩った。