ミニ・アルバム『あにしんぼう』インタビュー
スチャダラパーが語る、ポップな新作『あにしんぼう』の全貌「キテるな~このおっさんたち(笑)」
――なるほど。では今回の収録楽曲について全曲解説をお願い出来ればと思います。
アニがボーズでシンコがアニで
――今作は全体として勢いやビート感が強い作品ですよね。その入り口になるこの曲もその流れを感じる雰囲気で。
SHINCO:確かにそうかも。シュッと始まった感じで。
Bose:「レッツロックオン」も「ドキメキニシス」もプロジェクトのオープニングを飾るタイプの曲で、そういった曲が今回は多いから、全体的にそういう強めの雰囲気になったと思うな。しかし『アニがボーズでシンコがアニで』の状態でライヴに出てったら下らないね。
ANI:俺がキッチリ仕切って、元気よく客を煽ったり。
Bose:僕はずっとDJブースにいてね。
SHINCO:で、ブースにいるボーちゃんが『こう見えても中身はシンコなんだ!』って訴えるっていう。見てる方は『オジサン同士で何言い出してんだ……』って。
Bose:ダッハッハ。で、ぶつかってゴロゴロ転がって戻るんだけど、端から見たらオジサンがじゃれてるだけ(笑)。
レッツロックオン
――スチャのディスコグラフィの中でも、かなり景気の良い始まり方の曲ですね。
Bose:ホーンの鳴りからスタートするって、スチャの中ではあんまり多くなかったよね。でも、みんなが好きなタイプの曲で。
ANI:制作的には舞台『男子!レッツラゴン』で使われたこの曲からスタートしたかな。
Bose:舞台はANIが出たんだよね。その流れで曲も頼まれて。
――ANIさんは役者として水戸黄門にも漁師役で出演しましたね。
SHINCO:でも水戸黄門は曲頼まれたかったな。
ANI:頼まれたら絶対やるよ。太秦通うよ(笑)。
Bose:水戸黄門も若い人を呼び込みたいって、漁師が急にラップし始めて。でも呼んだラッパーが40代後半みたいな(笑)。
SHINCO:リリスクの映画(「『リリカルスクールの未知との遭遇』」も出るんでしょ?
ANI:店長役でね。でもきっと一回こっきりですよ。裏では『呼んでみたけどやっぱダメだったな』って(笑)。
Bose:そもそも『男子!レッツラゴン』の脚本/演出の細川徹くんとは96年の舞台『スチャダラ2010』から関わってるんだけど、その後も細川くんの舞台に僕が役者として呼ばれたり。
SHINCO:俺も細川くんが脚本を書いたシティボーイズの舞台の劇伴をやってたり、『男子はだまってなさいよ!7 天才バカボン』でも曲をやってて。
――「Bakananova」ですね。電気グルーヴとかスチャダラパーでは「NANODA」も制作されていますし、赤塚作品との繋がりがスチャは強いですね。
Bose:やっぱり赤塚の系譜だったね。タモリチルドレンの自覚もあるし。
――このドラムは「No.9」と同じサンプリングですよね。「ジャンクリートコングル」でも「EQ」のリリックが出てくるので、今年リリース20周年である『偶然のアルバム』の楽曲との繋がりが今回は散見できますね。
SHINCO:そうか。全然気が付かなかった。そういうことにしておこう(笑)。
ANI:偶然だね。『偶然のアルバム』だけに。
Bose:でも、こう偶然が重なると必然です! ってことにしよう(笑)。
ドキメキニシス
Bose:これは4月11日に開局した『AbemaTV』で放送される番組のテーマ曲になってて。
ANI:好奇心、興味とかがテーマの番組なんで、そのイメージを込めつつ。
Bose:『AbemaTV』のクリエイティブディレクターをNIGO®がやってるんだけど、やっぱりクリエイトするっていうのは、好奇心がどれだけ強いか、それがどこまで持続させられるかっていう事の競争って部分もあるなって。NIGO®なんて好奇心の強さで世界まで行っちゃった訳だから。
ANI:興味が湧いたら、気になったらトコトンのトコトンまで掘り下げる、っていうあのバイタリティはスゴいよね。
――<トキメキが止まらない><ドキドキが止まらない>というフレーズが、後半になるにしたかって、それが異状化していくというのも。
Bose:<タキマキが許さない>って歌詞が生まれた時に、これは出来たなと(笑)。
――<バキバキが戻らない/神見てしまう>というのも、歌詞としても内容としても、行くところまで行った感がありますね。
ANI:制作当時に話題だった、某元プロ野球選手の事も念頭に置きつつ。
Bose:NIGO®なんてシラフでその次元にいけるからね。真面目な話、NIGO®みたいにシラフで行けるところまで行けちゃう人が一番スゴいよね。
SHINCO:加山雄三さんなんて、一番そうなんじゃない?いまも好奇心のかたまりで、興味があることにまっすぐで。
Bose:で、素人がそこにたどり着こうとすると、何かに手を出してしまうっていうことなのかな(笑)。
――怖い話になってきたので止めましょうか……。
ジャンクリートコングル feat. ロボ宙
――Timberlandの、特にブーツは90年代から現在までヒップホップ・ファッションのアイコンとなっていますね。
ANI:周りのJUDOとかロボ宙、M.C BOO(脱線3)がとにかく履いてたんだよ、昔。
Bose:BOOは『アフロ』『メガネ』『Timberland』の三点セットだったんだよ。それでNYとかいったりするから悪目立ちして『どれか一つ止めろ、情報が多すぎる』って(笑)。
ANI:突っ込みどころが多すぎたよ。
SHINCO:そしたら『じゃあメガネ止めます』っていうけど、それじゃ前見えないじゃんって(笑)。
――曲も90'sヒップホップ的なハードな質感ですね。
Bose:この曲はシンコがすぐ作ってきたね。
SHINCO:当時を思い出す感じでもあったし、お題がお題だから、オーセンテックに王道のヒップホップを作った方が相応しいなって。結果、大手を振ってヒップホップって言える曲になったね。
――ど真ん中のヒップホップですよね。
Bose:歌詞も、昔の曲の歌詞を引っ張ってきたりして、当時と今のシーンを比較するような内容になってて。
ANI:今の自分から当時の自分へ、って感じでもあるよね。
Bose:とい言いつつ、書いてる場所(スチャダラのホーム・スタジオ)や状況は同じという怖さ! もう、あの部屋22年借りてるんだよね。大家以外全員入れ替わってるんじゃない?
SHINCO:怖さ増すな~(笑)。