RHYMESTERは今のスタイルをどう掴みとったか?「やっぱり、オレらはライヴ・バンドなんだ」

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 RHYMESTERのニュー・シングル『人間交差点/Still Changing』は、この4半世紀のキャリアを持つラップ・グループの新たな季節の始まりを告げる作品である。彼らはレコード会社を移籍、レーベル<starplayers Records>を設立、5月10日には初のフェス<人間交差点>を開催するという節目にあるわけだが、90年代、日本のラップ・シーン発展期の中核を担った2MC+1DJは、ベテランの座にあぐらをかかず、巨大なフェスで、若いJ-ROCK・バンドと競うようにステージを駆け回り、観客を盛り上げている。もしくは、日本のラップ・ミュージックの歴史を振り返り、また、現在のマーケットを見回してみれば、RHYMESTERこそが、ほとんど唯一、音楽的にも、商業的にも挑戦し、そして、成果を挙げ続けているグループだということが分かるだろう。果たして、タイトルにも表れているように、様々なアーティストと交流しながら、変わり続けてきた彼らは、今、どんなことを考えているのか。話を訊いた。(磯部涼)

「化学変化みたいなことを歌おうと思ったんだ」(Mummy-D)

――ニュー・シングル1曲目の「人間交差点」は、5月10日、RHYMESTER主催でお台場にて行われる同名フェスの主題歌にもなっていますよね。それにしても、RHYMESTERらしい味わい深いタイトルです……。

Mummy-D:〝人間交差点〟は、まず、フェスのタイトルとして付けたんだよ。

DJ JIN:以前から自分たちのフェスをやりたいと思って、タイミングを伺っていて。それで、フェスっていうと夏に呼ばれることが多いんだけど、昨年の5月に出た<森、道、市場 2014 ~フランシスコの海へ~>(愛知県大塚海浜緑地)の気候が凄く良かったのね。だから、「うちらも5月にやってみよう」って、企画をスタートさせて。

Mummy-D:そして、「タイトルを決めなきゃ」って、あーでもないこーでもないとみんなで会議室で考えてた時、宇多さんからポンっと〝人間交差点〟って案が出てきたの。

宇多丸:最初は冗談で言ったんだよ(笑)。「例えば〝人間交差点〟とかね、あはは」って。そうしたら、「結構良いじゃん」って意外と反応が良く。

Mummy-D:じゃあ、同じタイトルのテーマ・ソングもつくろうってことになったんだけど、オレが〝人間交差点〟ってフレーズに落とし込もうと思ったのは、去年、KREVAの音楽劇(『最高はひとつじゃない2014』)とかドラマ(『ゲームの<規則>』)に出たときに感じたことで。役者って、最初に本読みっていうものをやるわけ。出演者で集まって、はじめましての挨拶もそこそこに、いきなり台本を声に出して読み合うのね。全然知らない人達が、急に本性を剥き出しにするというか。「よろしくおねがいします」って言ったあと、いきなりパンツを脱ぐみたいな(笑)。それが凄いカルチャーショックでさ。そういう場で起こる化学変化みたいなことを歌おうと思ったんだ。

――確かに、フェス<人間交差点>も、KGDR、SUMMITクルー、スガ シカオ、スチャダラパー、SUPER SONICS、SOIL& “PIMP” SESSIONS、MIGHTY CROWN、レキシ、10-FEET(50音順)と、90年代、日本語ラップ・コミュニティの中核を担い、00年代以降はより広いフィールドで活動するようになったRHYMESTERのバイオグラフィーを総括するようなラインアップで、化学変化が期待されますよね。

 また、シングル<人間交差点>では、アルバム『マニフェスト』(10年)収録曲「K.U.F.U」を始め、たびたび共演してきたファンク・バンド=Mountain Mocha Killimanjaroをフィーチャーしています。プロデュースは「K.U.F.U」同様、JINさんですが、レイ・バレットの「トゥギャザー」をヒップホップ・トラックにリアレンジしたつくりは、RHYMESTERが得意とする生バンドとのコラボレーションの集大成と言えるんじゃないでしょうか?

DJ JIN:集大成っていうとそこで終わりみたいなイメージがあるから、まだまだ発展途上だと言いたいかな(笑)。でも、今回、確かに手応えはあって。元ネタの熱さは生かしつつも、燃え上がって行く方向というよりは、もう少し整然とエディットされた感じというか、アーバンで大人なニュアンスを出したかったのね。その上で決してヴィンテージなものにならず、今の音、今のヒップホップのバックトラックとして成立するように気を付けたんだけど、そういうコンセプトを、レコーディング・エンジニアとかミュージシャンに対して、どういう風に伝えたらいい良いのかようやく掴めた気はする。

――一方、「Still Changing」のトラックはBACHLOGIC。彼とは、RHYMESTERが活動休止を挟んでカムバックしたシングル「ONCE AGAIN」(09年)以来、要所要所で組んでいますよね。その魅力とは?

Mummy-D:「こういう曲をつくってくれ」って言うと、つくってくれるところ(笑)。ちゃんと期待に答えてくれるというか。あと、USの最新の音にも敏感だけど、ヤツのビートの中には、日本の侘び寂びが入ってるんだよ。それが凄くしっくりくるというか。

――BACHLOGICは自身のレーベル<ONE YEAR WAR MUSIC>からEXILEまで、多種多様な仕事をしていますが、RHYMESTERにだけ出すテイストがあるような気がします。

Mummy-D:オレもあるような気がする。

宇多丸:他とは全然違うよね。

Mummy-D:でも、それはリクエストしてるからでもあるんだよ。

宇多丸:さらに、一回上がってきたあともまたやり取りしてるからね。

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