太田省一『ジャニーズとテレビ史』第十六回:NEWS『変ラボ』
NEWSの勢いはどこまで加速する? 新番組『変ラボ』に見るタレントとしての力量
いま、NEWSが勢いづいている。この4月から『変ラボ』(日本テレビ系)と『NEWSな2人』(TBSテレビ系)の二番組がレギュラー化、さらに今年の「24時間テレビ」メインパーソナリティへの就任も発表された。それに伴い、各メンバーがさまざまな番組でフィーチャーされる機会も増えている印象だ。
レギュラー番組のうち、『変ラボ』はすでに始まっている。小山慶一郎と加藤シゲアキの2人が出演の『NEWSな2人』に対し、こちらはメンバー全員の出演だ。単発時代の第2弾で増田貴久と手越祐也が加わり4人の出演になったが、それがそのまま引き継がれた格好である。
この番組、他のジャニーズグループの番組と一味違うのは、科学をモチーフにしている点だ。番組の公式サイトに映る4人も白衣にネクタイ姿、手にはメスシリンダーやビーカーを持つといった研究者スタイル。内容も、突拍子もなくはあるが実現可能と思われる仮説を立て、それを実験によって検証するというものだ。専門家の助言を受けつつ、各メンバーが体当たりで調査し、最後にその結果を評価する。
レギュラー化初回は、いざと言うときに非常食がすぐ手近にない場合を想定し、小山慶一郎が「食べられる服は作れるのか?」というテーマで服飾専門学校の学生たちと協力して昆布やかんぴょうなど保存食材だけを素材に洋服を作った。結果は、デザインのファッション性も高く、予想以上の仕上がりだった。だが昆布などは乾燥すると縮んでしまい、保存性に疑問符が付いたため評価は「ダメ」ということに終わった。
バラエティ色を加味した科学的実験番組の歴史は意外と古い。1978年、NHKで始まった『ウルトラアイ』あたりがひとつの原点だろうか。
この番組の話題は、『NHK紅白歌合戦』の司会を何度も務め、NHKの看板アナウンサーだった山川静夫が自ら体当たり取材のリポーター役になったことだった。時間感覚の変化を実験するために真っ暗な洞窟で二日間過ごしたり、プロボクサーのパンチ力を体感するために現役日本チャンピオンのスパーリングの相手となったり(読売新聞芸能部編『テレビ番組の40年』)。いまなら若手芸人がやるようなことである。しかもそれをいまよりははるかにお堅いイメージの強かったNHKの局アナがやってみせたのだから、評判を呼びたちまち人気番組になった。
同じ科学バラエティという意味では、その山川のポジションをアイドルのNEWSが引き受けたのが『変ラボ』ということになるだろう。ただし、アイドルが体を張ってロケをするというだけではインパクトを残すことはいまや難しいだろう。他にもそのような番組は数多くある。局アナが体当たりリポートをする意外性だけで十分だった数十年前とは時代も変わった。