なぜTM NETWORKは時代の先駆者となったのか? 「FINAL」作品を100倍楽しく観る方法

なぜTM NETWORKは時代の先駆者に?

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映画『スターウォーズ』シリーズをライバル視

 小室哲哉は2012年〜2015年に実施されたコンサート・シリーズ、TM NETWORKの30周プロジェクトを進めるにあたって、2015年12月に最新作が公開される映画『スターウォーズ』シリーズをライバル視していた。もちろん“予算や規模が違いすぎるけどね”とエクスキューズしながらだ。しかし、1988年にリリースした100万枚を超える大ヒットを記録したコンセプト・アルバム『CAROL 〜A DAY IN A GIRL'S LIFE 1991〜』の続編として描いたプロットを、小室自ら『CAROLの意味』(KADOKAWA/エンターブレイン)として2014年に小説化するなど、究極のフィクション・プロジェクトであるTM NETWORKをSF作品として完成させる努力を惜しまなかった。そして、30周年公演では数々の代表曲に雰囲気の違う映像や演出を与えることで、物語の語り部的な機能性として楽曲の再構築を試みた。リミックスやリプロダクションとも異なる楽曲の新解釈といえるだろう。

『【全曲レポ】TM NETWORK 30周年ファイナル公演をミッション・コンプリート!』
2015年3月23日配信:当日の詳細なライブレポはこちらをチェック。
http://bylines.news.yahoo.co.jp/fukuryu/20150323-00044143/

SEKAI NO OWARI、サカナクションとの共通項

 コンサートのシアトリカルな演出といえば、昨今、攻勢を強めるSEKAI NO OWARIの存在とTM NETWORKの活動は重ね合わせることが出来る。ドラムやベースがいないユニット構成であり、ファンタジックなファッション&コンサート演出はもちろん、ステージに森を作ったり、楽曲トラックを海外で活躍する最先端のプロデューサーにオファーするなど共通点があるのだ。さらに、サカナクションにも注目したい。最新のテクノロジーを取り入れロック×ダンスミュージックとして表現するセンスにシンクロニシティを感じたからだ。サカナクションは、メディアアート的な演出アプローチを数多くコンサート演出に取り入れており、複数スピーカーを設置することで生まれるサラウンド効果を取り入れたライブをおこなっているが、TM NETWORKは80年代に“音の魔術師”をイメージするサラウンド・ライブを実現していた。時代を先んじるメディアアート的な演出アプローチも同じくだ。サカナクションの頭脳、山口一郎がTM NETWORKを聞いていたという確証は無いが、小室哲哉との対談企画が実現したらはおもしろそうだ。

4年に渡って繰り広げられた世界観ある物語

 2008年に活動をお休みしていたTM NETWORKは、2012年4月24・25日、日本武道館にて『TM NETWORK CONCERT -Incubation Period-』にて復活した。ここから始まった物語は、2015年3月21・22日の横浜アリーナ『TM NETWORK 30th FINAL』まで6つの異なる演出によって計35公演がシリーズ展開された。4年に渡って繰り広げられた世界観あるSF物語。その集大成として、11月25日にファイナル公演『TM NETWORK 30th FINAL』(Blu-ray / DVD)がリリースされた。ライブ映像でありながら、映画さながらの繊細なカメラワークが語る物語性の魅力。飽きさせること無き発見の多い情報量の密度の濃さ。そう、TMのコンサートはただのライブではない。これまでのあらすじを紹介しよう。

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