メロキュア、初ワンマンで鮮明になった音楽性とは? バンド・サウンドが生み出した魅力を考察

メロキュア、“初”ワンマンをレポート

過去の意味がわかった夜

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 終わってみて思うのは、西脇の「メロキュアはロックだよね!」というコメントが核心を突いていたのではないかということで、なぜロックに聞こえるかというと、生バンドによって演奏されていたからだ。

 メロキュア楽曲は、生楽器を主体にアレンジされたものと、プログラミングを主体にアレンジされたものが割ときっぱり分かれていて、ロック指向の強いはずの日向の楽曲になぜか打ち込みが多い。「1st Priority」しかり「ホーム&アウェイ」しかり。

 たとえばCDで聴く「ホーム&アウェイ」はリズムが四つ打ちのポップなニューウェーヴといった曲調だが、アレンジは基本的に変更されていないのに、生バンドで演奏されると俄然ロック色を帯びる。もちろんギターの音色や生ドラムといった要素の作用もあるのだけれど、それらに増して、楽曲が潜在させていた性格が露わになるためではないかと思うのだ。

『メロディック・ハード・キュア』を初めて聴いてからしばらく、オープニングの「Pop Step Jump !」はてっきり日向の楽曲なのだと思い込んでいた。ハードなギターとコーラスによって織りなされるアンサンブルがg.e.m.の発展型に思えたからだ。g.e.m.は、メロキュア以前に日向がやっていた本間昭光プロデュースによるソロユニットで、UKロックを指向したサウンドに特徴があった。

 だがこの曲は、岡崎律子の作詞作曲であり、アレンジは西脇辰弥なのだ。

 先日の当サイトの対談で、ミトが、岡崎と日向というそれぞれ違った個性が、溶け合うというよりも異質なままで共存しているところにメロキュアの凄味があるという趣旨の話をしていたけれど、「ロック」という切り口から見ると、二人の資質には存外に親しいものがあったのではないか。それが鮮明にあらわれ一体となったのが、この夜の初ワンマンで起こったことだったのではないか。そんなことを考えたりした。

「やっと過去の意味がわかった/we were meant to be/夢の続きを叶えるため」(「ホーム&アウェイ」)

【セットリスト】
M01 Pop Step Jump!
M02 Sunday Sundae
M03 「虹を見た」
M04 木枯らしの舗道を 花の咲く春を
M05 向日葵
M06 my favoritz
M07 愛しいかけら
M08 ふたりのせかい [メロキュア meets 川口圭太]
M09 1st Priority
M10 ホーム&アウェイ
M11 しあわせ
M12 Agapē
M13 ALL IN ALL
(アンコール)
M14 笑顔の連鎖
M15 So far, so near
M16 めぐり逢い
(ダブルアンコール)
M17 ホーム&アウェイ

【メンバー】
メロキュア(岡崎律子&日向めぐみ)
Ba. ミト(クラムボン)
Gt. 川口圭太
Gt. 山本陽介
Mnp. 菅原拓
Dr. 山内康雄
Pf. & Hm. 西脇辰弥(スペシャルゲスト)

メロキュア特集Part.1:アニソンの歴史に「メロキュア」というピースを嵌めるときが来た
メロキュア特集Part.2:メロキュア・日向めぐみ × クラムボン・ミト対談 ミト「むせ返るスウィート感に音楽的な強さ感じた」
メロキュア特集Part.3:メロキュアの新作に感じる“完璧な流れと繋がり” 佐々木敦が「復活」の意図を読み解く

■栗原裕一郎
評論家。文芸、音楽、芸能、経済学あたりで文筆活動を行う。『〈盗作〉の文学史』で日本推理作家協会賞受賞。近著に『石原慎太郎を読んでみた』(豊崎由美氏との共著)。Twitter

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