メロキュア、初ワンマンで鮮明になった音楽性とは? バンド・サウンドが生み出した魅力を考察

メロキュア、“初”ワンマンをレポート

 2015年9月21日、岡崎律子と日向めぐみによるヴォーカルユニットであるメロキュアの初のワンマンライヴ「メロキュア melodic hard tour [crescent picnic]」が渋谷WWWで開催された。

 初の?——初の、なのだ。2002年の結成から、リーダーである岡崎律子が急逝した2004年まで、メロキュアの二人が揃っての活動期間は約2年間、インストアライヴなどはあったものの、ワンマンの開催は叶わなかった。

 幻だったワンマンが、短くない時を隔てて実現の運びとなったのは、むろん、先日約10年ぶりにリリースされた"新"アルバム『メロディック・スーパー・ハード・キュア』を受けてのことだ。8月8日にタワーレコード渋谷店で行われたリリースイベントで、「ずっと妄想していました」という日向めぐみのコメントとともにサプライズで発表された。

 チケットは早々にソールドアウトしており、会場に入ると文字通り立錐の余地もない状況。ステージに目を遣ると、すっぽりと覆うように白い幕が張られている。

 日向めぐみ選曲によるプレイリストが流れるなか、開演時間を超え、じらすように待たされる。30分ほど過ぎたころ、これまでは唯一のアルバムだった『メロディック・ハード・キュア』のオープニング曲である「Pop Step Jump !」イントロのコーラスが響き、白い幕にシルエットが二つ並んで浮かび上がった。

オリジナルヴァージョンを大切にした選曲

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 歓声。ステージに立っているのが日向めぐみ一人だけであることは、客席の誰もが承知していただろう。だが同時に、右側に映るシルエットが、岡崎律子その人であることを疑う者もいなかったに違いない。

「Pop Step Jump !」のリードヴォーカルは岡崎である。幕が落ちると、ステージ下手に日向が、隣の空間を慮るように立つ姿が目に入ってきた。リズムを取りつつ岡崎の歌に耳を傾け、コーラスパートになるとマイクに向かう。

 続いて、「M・E・L・O・C・U・R・E "MELOCURE"」とユニット名を歌い込んだコーラスで始まる「Sunday Sundae」。間奏部の、日向が電話越しに英語でおしゃべりするギミックはiPhoneを手に再現されていた。

 演奏が終わりMCへ。右側の空間へ左手を延べて「メロキュアの岡崎律子と日向めぐみです」と挨拶したあと、「今も夢を見ているんじゃないかというような光景が目の前に広がっていて……」とワンマンが実現できたことへの感慨を漏らす。

 岡崎と日向の間には小ぶりのテーブルが置かれており、ティーセットと苺のショートケーキ、サンドイッチが載せられている。このワンマンのテーマは「ピクニック」だそうで、それに合わせたセット(?)だ。「お腹が空いたらそのときは……」というそばから「私、もう、お腹空いちゃってるのでちょっとだけ」とケーキをつまむ日向めぐみ。沸く場内。

 meg rockとしてのライヴではMC時におむすびを食べるのが恒例で、それがこの日はケーキとサンドイッチに置き換わったかたち。ファンの多くは日向がステージで物を食べることをよおく承知している。それゆえの歓声と笑い声である。

「「虹を見た」」「木枯らしの舗道を 花の咲く春を」と静かな2曲のあと、それまでの赤いタータンチェックのコートから、ピンクと水色を基調としたドレスへ一瞬で早着替え! アップテンポの「向日葵」へ。ファン人気の高い曲である。会場の反応からそれが実感される。

 二度目のMC。当然ケーキを食べる日向めぐみ。今日はティーカップにいれた、これもmeg rockとしてはお馴染みの「お湯の水割り」で喉を潤してから、『メロディック・スーパー・ハード・キュア』で発表されたまさかの新曲「my favoritz」。「日向めぐみ名義の曲なので」と舞台中央に立つ。CDよりもグロッケンとチェレスタの印象が強く残る。続いてデビュー曲の「愛しいかけら」。ベースのミト(クラムボン)が両手を頭上に掲げクラップを促し、フロアに熱気が満ちたところで、ギターの川口圭太によりリアレンジされた「ふたりのせかい」へ。

『メロディック・スーパー・ハード・キュア』のdisc 2には、リアレンジやリミックス、岡崎提供曲の日向によるカヴァー、新曲が収められたが、終演後振り返ると、disc 2から披露されたのは、「my favoritz」と、この「ふたりのせかい [メロキュア meets 川口圭太]」、それからアンコールで演奏された「笑顔の連鎖」カヴァーの3曲だけだった。初ワンマンであることを強く意識した、オリジナルヴァージョンを大切にした選曲だったのだろうと理解した。

 高まったフロアを引き連れて、「1st Priority」そして「ホーム&アウェイ」。「1st Priority」はメロキュアで一、二を競う人気曲だが、盛り上がりという点ではもしかしたら、岡崎が他界したあとのリリースになった「ホーム&アウェイ」のほうが勝っていたかもしれない。日向がフロアへ向けたマイクに、ファンたちが返したコーラスの熱さはちょっとただごとでなく、胸に迫るものがあった。

「みんなで暴れたい曲がたくさんあったので、一緒にほとばしれてとてもうれしいです!」という日向に「おーっ!」と歓声が上がる。そしてケーキとサンドイッチ。「じゃあ苺を」と日向が苺を口にすると、さらに拍手と雄叫びが。「なかなか苺を食べて「うおぉ!」っていわれる機会はない(笑)」と日向。謎なインターアクションだが、ともあれ大変にアットホームであることはたしかだ。最前列のお客さんに口説かれたのか、ミトが客席に降りて「ファン代表」を務める一幕も。

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