メロキュア・日向めぐみ × クラムボン・ミト対談 ミト「むせ返るスウィート感に音楽的な強さ感じた」

 メロキュアの10年振りのリリース作『メロディック・スーパー・ハード・キュア』に関する特集第2弾は、メンバーである日向めぐみと、メロキュアの大ファンであり、今作の制作にも参加しているクラムボン・ミトのロング対談。聞き手に、今回の特集を監修する評論家の栗原裕一郎氏を迎え、最終ページには日向めぐみ本人による全曲解説も掲載する。(編集部)

特集1:アニソンの歴史に「メロキュア」というピースを嵌めるときが来た

特集3:佐々木敦がメロキュアの核を読み解く

メロキュアとクラムボン・ミトの出会いと、アルバム制作のきっかけ

――約10年ぶりのアルバムとなるわけですが、meg rockさん……、いや、メロキュアだから日向めぐみさんですね! 日向さんがリリースを決意するに至ったきっかけは何だったんでしょう?

日向:ミトさんが、いちばん最初に私のライヴにサポートで参加してくださった後、ツイッターで「Agapē」のデータを見つけるまでのいきさつを書いてくださったんですね。そのとき、一連の“さえずり”(ツイートのこと)の終わりに「どこにいたって聞こえる」と「Agapē」の一節を引用してしてくださったのがそもそもの始まりというか。自分の中では、あのときからだんだん自然な流れで今に至った感じです。

――あの熱いツイートですね、一連の。データのやりとりにバイク便まで飛ばしたという。

日向:一連の。

ミト:アホかっちゅー(笑)。

 ミトが、meg rockのワンマンライヴに初めて参加したのは2011年12月のこと。その際ミトは、meg rockから「Agapē」を演りたいのだけれど、Pro Toolsのセッションファイルが手元にないのだと告げられた。日本コロムビアには間違いなく保管されているはずで、ずっと探してもらっているのだが所在が不明なのだと。

「Agapē」は、岡崎律子が作詞作曲し、日向がメインヴォーカルをとった、メロキュアの代表曲にして、このユニットを象徴する楽曲である。編曲とサウンドプロデュースは、後半にも登場する西脇辰弥が手掛けている。

 その話を聞いたミトは、コロムビア人脈を総動員して、わずか数日でデータを発掘、「Agapē」再演を実現したのである。最後のツイートを引用しよう。

「いち音楽家として、いまだにこの曲がどんなに素晴らしく、心を打つものかを説明できないもどかしさがあるのですが、今回の5年振りの再演は、まさに新たな始まりであり、未来でもあります。この先、megさんがこの曲を唄ってくれる限り、「どこにいたって聞こえる」。」(参考:https://twitter.com/micromicrophone/status/145880668398817280

日向:ミトさんのこの言葉に背中を押していただいたというか、自分の中で何かが変わった瞬間でした。

――コアなメグロッカー(meg rockファンのこと)は、ミトさんとmegさんの関係をよくご存知だと思うんですけど、二人の取り合わせを意外に思う人もいると思うんですよ。そもそもミトさんは、いつ頃からmegさんを、知っていたというか個体認識していたんですか?

ミト:もうグミの頃には知っていたんですけど、個体認識としてmeg rockという人間をということになると、名前がいろいろありすぎて、どの地点がスタートなのか……。

日向:グミもリアルタイムでご存知で?

ミト:リアルタイムですね。「Catch You Catch Me」から。

――「Catch You Catch Me」は、アニメ『カードキャプターさくら』(98年~)を観ていて、主題歌として知ったんですか?

ミト:そうですね。広瀬(香美)さんが手掛けている主題歌を、「あ、すごい。めっちゃ可愛い感じで歌っている人がいるな」というイメージでした。

 その後にメロキュアがあって、この日向めぐみという人は……と調べて、え? グミ? しかも歌だけじゃなくてシンガーソングライター!? とイメージがまとまって。だからそうやって考えると、個体認識をしたのはメロキュアからでしょうね。

――あれ? 本間昭光氏とやっていたg.e.m.は……。

日向:g.e.m.は、ミトさんの、そのコンテクストからは外れているところにあったからか、飛んでるんですよね。

ミト:飛んでますね。

――メロキュアもやっぱりアニメからですか?

ミト:アニメですね。普通に『円盤皇女ワるきゅーレ』(02年~)を観ていたら、第1話で「Agapē」が流れて、「何だこれ?」とびっくりして。最終話寸前にも流れて、また「何だこれ?」と。1話目から、もうめちゃくちゃすごく盛り上がって、「あの曲、何? すげぇヤバい」みたいな話にはなっていましたね。

 その時点では、メロキュアが岡崎律子さんのユニットで、そこにmegさんがいて、なおかつそれがグミさんだということにまで認識が到達していないんですよ。いろいろ結び付くまでにだいぶ時間がかかっている。

――岡崎さんはメロキュア以前から聴かれていたんですよね。

ミト:岡崎さんは好きでしたね。ただ、そんなに動向を追っていたわけではなかった。岡崎さんは作曲家のイメージが強かったんですが、『ラブひな OKAZAKI COLLECTION』(01年)で提供曲をセルフカヴァーされて、林原めぐみさんが歌った主題歌の「サクラサク」とかセルフカヴァーを聴いたらめっちゃ声もいいじゃんと。前後して「For フルーツバスケット」(アニメ『フルーツバスケット』主題歌)がリリースされたり、そういう流れがあったところにメロキュアのニュースがあって、律子さんが絡むユニットだと。おお、律子さんまた何かすごいことをやりそう、みたいには思っていました。で、2ndシングルの「1st Priority」が出て、この作詞作曲をしている日向さんというのは誰だろうって検索したら……。

日向:検索(笑)。

ミト:「Catch You Catch Me」のグミじゃん! と。

日向:知ってた知ってたみたいな(笑)。

ミト:めちゃくちゃ知ってた(笑)。megさんが、シンガーソングライターとしてのスキルのある方だということもそのタイミングで知りました。2005年のアニメ『ピーチガール』の主題歌「ベビーローテンション」、あのあたりになってようやく、フィルターというかマスキングが取れてきて、「ああ、全部megさんなのね」と(笑)。

――名前の謎は深いですよね(笑)。

日向:そうですね。いろいろな。

――グミ時代も、作詞作曲は日向めぐみ名義で、別人というか中の人という設定だったわけですよね。で、g.e.m.は日向めぐみ名義。メロキュアも日向めぐみなんだけど、でも、『メロディック・ハード・キュア』(04年)のライナーにmegさんの撮った写真が載っていて、そのクレジットはmeg rockになっている。

日向:だんだん混在し出しているんですよね、meg rock 。

ミト:侵食してるんだ(笑)。

日向:2003年に、MI:LAGROのアルバム『ホホエムチカラ』にゲストヴォーカルで参加したんですが、そのときはもうmeg rock名義なんですよ。

 メロキュアのラジオでも、meg rockゲスト回があって。「日向さんは今週お休みです」ってなった後にmeg rockが出てくるっていう(笑)。

ミト:一言いっていいですか? すげぇ面倒くさいですね!(一同爆笑)

――今回、disc 2の「1st Priority」リアレンジを末光篤氏が手掛けておられますが、megさんとミトさんが直接に出会うことになったきっかけが末光さんのライヴだったそうですね。

日向:そうなんです。忘れもしない、2010年12月の末光さんのライヴ。

ミト:それもまた不思議な話なんですけどね。だって、普通に末光くんのライヴに出て終わったと思ったら、あの、グミさんというか日向さんというかmeg rockさんというか、ともかくmegさんにツイッターでフォローされてたんですよ。私的にはもう、なぜ?の嵐ですよ?(一同笑)

――「Catch You」に「Catch Me」されたぜ、みたいな(笑)。

ミト:どういうことかまったくわからないと困惑していたら、末光くんのライヴに来ていたと。マジかって。

日向:こっそりフォローしたつもりだったんですが、即、見つかってしまって! ミトさんが私をご存知だったということに、むしろ私がびっくりして。

ミト:こっちはこっちで、即、末光くんにメールしていたという(笑)。

日向:そんな感じの“さえずり”まわりの出会いだったんです(笑)。それから1週間後には、もう私のワンマンに遊びに来ていただいてしまって。その2週間後には、ミトさんのソロアルバム『DAWNS』に参加させていただいていたという。で、1年後の2011年末にはmeg rockワンマンに出てくださって。

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