清木場俊介、亀田誠治プロデュース曲で見せた新たな挑戦 その音楽的意義を読み解く
昨年ソロデビュー10周年を迎え、アルバム『MY SOUNDS』、ライブDVD『唄い屋・BEST Vol.1』をリリースするなど精力的な活動を繰り広げた清木場俊介が2015年最初のシングル『軌跡』をリリースする。プロデュースは、現在の音楽シーンを代表するヒットメイカー・亀田誠治。ソロデビュー以来、セルフプロデュースを貫き続け、盟友・川根来音とともにほとんどの楽曲の作詞・作曲を自ら手掛けてきた清木場が、本格的に外部のプロデューサーと組むのはもちろん今回が初めて。実際、「軌跡」はこれまでの清木場の楽曲とはかなりテイストが違う。
亀田は「軌跡」の制作に関して「清木場君の唄がずっと好きで、心からリスペクトするボーカリストにヒラヒラと舞うように唄ってほしい」「そういう思いを込めてメロディーを作りました」というコメントを寄せているが、大らかで美しい旋律を軸にしたこのミディアムチューンは、骨太のロックを志向してきた清木場にとって明らかに新機軸と言えるだろう。当然、清木場による歌詞もふだんの作風とは異なっている。これまでの彼の歌詞は生き様をそのまま刻み込むような生々しいものが多かったが、“過去の思い出を糧にして、未来に向かって歩んでいく”という思いを抒情的に描いたこの曲は、より幅広いリスナーを意識して制作されたことが伺えるのだ。「悲しみ乗り越えて 僕は大人に変わっていく」という歌詞もあるが、ソロデビューから10年が経ち、30代半ばになった清木場は、その音楽の幅を広げつつあるのかもしれない。
ここで簡単に清木場俊介の“軌跡”を紹介しておきたい。2001年、21歳のときにEXILEのボーカリストSHUNとしてデビュー。2004年に尾崎豊のトリビュートアルバム『“GREEN”A TRIBUTE TO YUTAKANA OZAKI』に「ふたつの心」で参加、本作のリリースイベントに出演したことをきっかけにソロ活動をスタートさせる。本格的なソロデビューは翌2005年1月にリリースされたシングル『いつか…』。2006年にEXILEを脱退し、2008年には個人事務所を設立。地方の小さなライブハウスから日本武道館まで、徹底的にライブを中心にした活動によって、ファンとの絆を強めてきた。
音楽性の軸になっているのは、愚直なまでにストレートなロック。矢沢永吉、尾崎豊、浜田省吾などの系譜を感じさせる、日本語のロックだ。ソロデビュー当初からインタビューなどで「自分の生き方がそのまま唄になっている」と発言してきた清木場だが、超人気グループからの脱退、独立を含めて、“生き方自体がロック”というイメージを保ち続けているきわめて稀有な存在と言えるだろう。
そんな彼にとって、ポップスとしての質を高めた楽曲「軌跡」のリリースが大きなトライであることは間違いない。しかし、それは売れ線狙いとか路線変更ではなく、新しいことに挑戦していきたいという純粋なモチベーションによるものなのだと思う。自らの人生と強くリンクした楽曲を——まるでリスナーの胸ぐらを掴むように——歌い続けてきた清木場は、ソロデビューから10年という時間のなかで、シンガーとしての居場所とスタイルを確実に作り上げてきた。その結果、以前よりもリラックスして音楽を楽しめるようになった彼が(昨年行われたフリーライブ・ツアー/ハイタッチ会も、清木場のスタンスが開けてきた証左だと思う)、これまでにはなかった音楽性にトライしようと思ったのはきわめて自然な流れなのではないか。
「軌跡」のカップリング曲「Sunrise」(清木場、川根の共作によるストレートなロックンロール)には「誰かに笑われてもいい!/貫いてやる!」という、とことん清木場らしいフレーズが刻み込まれている。そう、“誰に何と言われても、やりたいことを貫く”という点において、清木場俊介はまったくブレていないのだ。
(文=森朋之)
■リリース情報
「軌跡」
発売:2015年6月24日
価格:¥1,000(税抜)
〈収録曲〉
01. 軌跡
02. Sunrise
03. 軌跡 -instrumental-