大滝詠一とはどんな音楽家だったのか 改めて作品と向き合って感じること

 80年代半ば以降は自身のオリジナル作品を封印していましたが、90年代後半には突如トレンディ・ドラマのタイアップとしてシングル「幸せな結末」を大ヒットさせます。とはいえ、ライブは一切やらない、新作アルバムは作らない、過去のアーカイヴの活用に注力し、オールディーズから落語までを評論する、などなど。やはり何をやってる人なのかさっぱりわからないわけです。たぶん、大滝詠一ファンを名乗るひとりずつにキャッチコピーを書いてもらっても、まったく違う内容になるのではないでしょうか。

 ただ、これだけのマルチな活動を行っていても、ビシッと一本筋の通ったアーティスト性を感じさせるのは見事としか言いようがありません。無理矢理に一言でまとめるとなると、“こだわり”ということになるでしょうか。シリアスであろうとコミカルであろうと、何をやっても徹底的にこだわり抜いた手抜きなしの仕事ぶりには感服するばかり。そこが、大滝詠一という希有なアーティストを評価する基準なのではないかと思うのです。だから、ファンとしても、大滝詠一作品に向き合うには、生半可な気持ちでは中途半端な理解に終わるでしょう。もちろん、ポップ・ミュージックなので気軽に聴いてもいいのですが、どうしてもその奥や裏を知りたくなる。これこそが、大滝詠一の魅力であり本質なのです。

■栗本 斉
旅&音楽ライターとして活躍するかたわら、選曲家やDJ、ビルボードライブのブッキング・プランナーとしても活躍。著書に『アルゼンチン音楽手帖』(DU BOOKS)、共著に『Light Mellow 和モノ Special -more 160 item-』(ラトルズ)がある。

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