the原爆オナニーズ・TAYLOWが語る34年のバンド史、そして若手世代へのメッセージ

若手バンドたちへのメッセージ

the 原爆オナニーズ - 発狂目覚ましくるくる爆弾 @ お年玉GIG2014

ーー原爆がアメリカで活動したのはなぜですか?

TAYLOW:1984年に初めてアメリカに行って、アメリカのバンドも日本のバンドも一緒なんだなって思ったんだよね。イギリスのバンドってシステム的なところがちょっと違っているけれど、アメリカの場合はDIYだから「ああ、ちゃんと自分達で機材片付けるんだ」って感じだった。アンプもちゃんと自分で運ぶし。だったらアメリカのバンドとは友達になってもいいなって思ったんだ。彼らは結構メジャーになっても自分でやっているもんね。ただ、日本に帰って来たらZOUOとかOUTOとか関西のハードコアでカッコいいのいっぱいいたし、東京にはEXECUTEもGAUZEもCOMESもいたから、基盤とするのは日本の方がいいかなって感じだったよ。

ーーアンプを持っていないバンドが当たり前になるくらい、日本のライブハウスは優れていますしね。

TAYLOW:日本のライブハウスは素晴らしいよ。どこに行っても任せられるっていうのが、まずビックリ。ただ、だからこそ若いバンドを観ると、ついみんなに「アメリカに行け」って言ってしまう。アメリカに行くとなったら、ちゃんと基礎体力のあるバンドにしないといけないじゃない? 日本だと、そんなに大きな音でドラムを叩けなくても、前に出してもらえるもんね。アメリカに行ったら聞こえないから、自分でちゃんと叩けるドラマーにならなきゃいけないし、楽器も弾ける人にならなきゃいけない。バンドがちゃんとした音を出さないと、聞こえないし伝わらない。日本だとモニターがあるけど、モニターが無いところもあるし、ボーカルなんか自分で音程取れなきゃできない。耳おさえて歌うみたいな感覚を、自分で持っていないとできない。そういう事ができるようになると、バンドは確実に成長するよ。

ーーそういうアメリカでのライブ特有の感覚を日本に持ち込んだのも、原爆が最初ですよね。今ではバンドがサンフランシスコに行ったらまずギルマンでライブをする、という流れがありますが、それも原爆が道を作ったのでは。

TAYLOW:ギルマンでやってから向こうの人たちと話が出来るようになって、それがみんなに伝わっていったから、流れは繋がっているのかもね。あそこは全部ボランティアスタッフでやっていて、素晴らしいライブスペースだよ。

ーー当時のアメリカ人にしたら、日本人のパンクは珍しかったんですかね。

TAYLOW:日本人でパンクをやっているということで興味半分にライブを観たら、ちゃんと音が出ているから、気に入ったんじゃないかな。

ーー向こうの客はシビアですからね。演奏さえ良ければライブが終わった後に態度がコロッと変わります。

TAYLOW:そういう風に客がコロッと変わるぐらいの力を、みんな付けて欲しいよね。今の日本のバンドって、ライブハウスが良すぎるから、それに甘え過ぎている面があると思う。そのままアメリカに行くと「ひ弱な日本人」というイメージが付いてしまう。だから、大げさに「行きなさい行きなさい」とは言い辛い。小さいところでやるならまだしも、ガチンコ勝負でライブやって、ちょっとでもダメだとその後がマズいからね。

ーー日本と比べると、治安の面とか恐ろしい部分はありますが、昔に比べて海外に行きやすくなってきていると思います。

TAYLOW:そういうのを知った上で、みんなはなぜ海外にライブしに行こうと思わないのかな? 日本のバンドってすごく沢山良いバンドがいるのに。メインストリームの音楽より、インディペンデントのバンドの方がアメリカとかヨーロッパでは好まれるから、むしろチャンスがあると思うんだけど。若い20代のバンドとかに、行けば?って言うと、海外はちょっと...って言う。行ってみなきゃわかんないじゃん。百聞は一見に如かずっていうのは、バンドで海外に行って一番感じたことだね。

ーー海外でバンドをやると、ものすごい人数の友達が出来ますしね。

TAYLOW:バンドって楽しいんだけどなぁ。日本国内だっていっぱい廻れるしさ。たぶんバンドやってなかったら行かないようなところにだって行くじゃない。それぞれの地域に行って友達作って帰ってくるワケだし。

ーーそうした繋がりをよく見ると、アンダーグラウンドなシーンで活躍していたバンドは、原爆みたいに息の長い活動を続けている場合が多いですしね。

TAYLOW:メジャーじゃない人で、アンダーグラウンドでずっと続いている人はいっぱいいる。それで飯を食うことを辞めて、仕事しながら表現するっていう方法に変えた人、パンクでも結構いるよ。ひょっこりCDを出したりとか、CDを出さずにサウンドクラウドに上げたりとかしていてね。そういえば日本のバンドって、バンドキャンプとかサウンドクラウドを何で使わないの? みんなにいくら教えてもやらない。iTunesを勧めても、JASRACと同じような事ばっかり言うし。

ーー原爆もネットを活用していますね。

TAYLOW:やっているよ。それで原爆を知った人もいたりする。言い方が悪いけど、音楽聞きたいだけの若い子とかにしてみれば、過去の作品なんてフォーマット関係無いじゃん。自分達が10代の時だって、ただ音楽が聞きたかっただけでしょう。そういう感覚で、自分たちの音楽を届けられる状況をちゃんと作っているインディペンデントのバンドがすごく少ないよね。音楽好きな中学生や高校生は、1枚のCD買うよりも100個のバンドが聞きたいんだよ。自分達だってラジオから流れる曲をカセットテープに録音とかしていたワケでしょ。歳食っちゃった自分たちとしては、1枚のCDを買ってほしいってついつい言っちゃうんだけど、自分たちだって本当は100の音楽を聞きたいじゃない。やっぱり、どんな形であれまずは聞いて貰えた方がいい。それが結果として、ライブとかにも繋がるから。海外に行くのもそうだし、ネットでもなんでも、日本の若いバンドはどんどん幅を広げていってほしいな。

(取材・文=ISHIYA)

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「インタビュー」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる