『横山健―疾風勁草編―』DVD化記念インタビュー(後編)
横山健が語るレーベル運営のリアル ピザオブデスはなぜ100%利益優先にならないのか
横山健、初のドキュメンタリーフィルム『横山健―疾風勁草編―』にまつわるインタビュー後編。前編【横山健が語る、2014年に表現活動を行う意味「俺は色んなことを考えるための入り口になりたい」】では、横山自身の映画に対する感想や、音楽以外の表現活動の意義、現在抱えている問題意識などについて語った。
後編では、映画公開後の彼の活動について語ってもらうとともに、現在のパンク・ラウドロック・ハードコアシーンについて思うところまで、ざっくばらんに語ってもらった。聞き手は、PIZZA OF DEATH RECORDS関連の記事を多数手掛ける石井恵梨子氏。(編集部)
「やってる時は辛い時もあるけど、最終的には『しょうがねぇよな!』って(笑)」
一一シーン全体のためにピザオブデスが始めた最初の動きは、レーベル内レーベルですよね。もともとバンドの数はそんなに多くなかったのに、一気にリリース増えた。これはスタッフにとっても大きな変化だったと思います。
横山:うん。とりあえず制作担当の奴がほとんどギブアップするくらいの変化(笑)。そこは未だに混乱の最中ですね。人がいればいるだけいろんな意見があって、ピザオブデスの社員も、レーベル内レーベルのバンドにどれくらいの密度で関わればいいのか、ここまではやりたいけど、それを続けると本当に仕事が続かないぞ……なんていう議論を今もやってるくらいで。これは何年かすれば自然と解決方法も見えてくると思うんだけど。
一一社員って、増えてないんですか?
横山:増えてない。それどころかアルバイトが病気療養中で、今はバイトもいない状態。社員が6人、プラス、インターンの子が来てくれて。それだけでやってる。
一一このリリースを! それって「知り合いが増えるのが嬉しいね」というモチベーションだけで続くものですか。
横山:続く続く。楽しいもん。やってる時は辛い時もあるし、泣き言漏らしてる社員を見れば申し訳ないと思うし、あとは「このバンド、思ったより売れなかったなぁ」なんて結果になると感じることは多々あるけども。でも最終的には「しょうがねぇよな!」っていう(笑)。「しょうがねぇ、やるしかないでしょう! 他にやることあんのかよ?」っていうか。たぶん、このリリースの数がお客さんの目にも見えるカタチで効果を出すようになるまで、もうちょっと時間がかかるのかなって気がします。
一一なるほど。そして今年の6月にはパンク・ラウドロック・ハードコアを中心とする巨大イベント「サタニック・カーニバル」が開催されました。
横山:ふふふふ。あれ……困ったんだよなぁ。なんだかポカーンとしたライヴをやってしまって。バンドとしてどう出ていいんだかわかんなかった。
一一どういう意味でしょう。
横山:もともとピザオブデスでフェスをやりたいって、何年も前からあった話なの。ウチのブッキング担当の磯部が「ピザでひとつ、フェスというチャンネルを持ちたい」って言ってて。その欲求は純粋にいいことだと思ったし、俺も一緒になって考えてはいたけど、ただ、僕自身が「サタニック・カーニバル」の広告塔として立つことはほとんどなかった。でも周りからは「ピザがやるフェス=健さんがフェスやるんですね?」と見えてしまうようで。直接訊かれれば「いや、僕じゃなくてウチのスタッフが進めてることだ」って言えたけど、なんとなく、公には「横山健のフェスティバルだ」みたいなね。でも、事実そうじゃない人間がステージに上がってどうするんだって、なかなか難しいでしょ? まぁそこは、今後のサタニックのブランディング次第で変えていけると思うんだけど。
一一このイベントは続くものと考えていいんですね。
横山:うん。磯部は続けるつもりでいる。僕ね、あんまり知らないの。サタニックのこと。ブッキングも全部磯部がやってるし、僕が知らないバンドにも磯部は積極的に声をかけてたし。
一一若いバンドをなるべく推そうとしているのはメンツを見てもわかりました。となるとファンの勢いも目立つし。本人を前に言うのもアレですけど、10-FEETとマキシマムザホルモンで大騒ぎして、Ken Bandは見ないで帰っていった子も多いとか。そこは率直にどう感じますか。
横山:ちょっと慣れたかな。だってウチの姪っ子がそうなの。最初にサタニックの告知があった時に一般でチケット取ろうとして、抽選で落ちて。僕が電話で「お前なんだよ、一声かけてくれりゃいいのに」って言ったら「いや、でも恐れ多くて。だって神バンドが2つもいるから」「ん?2つ?」。……つまりホルモンと10-FEETのことなの(爆笑)。
一一Ken Bandはカウントされず!
横山:叔父さんカウントされない(笑)。まぁそれはね、怒りや意地でどうなることでもないから、もう事実として受け止めてる。だから僕が言えることといえば「もうちょっと出演順考えてくれよ!」っていうぐらい。でも磯部の中でもね、今年は初めてのサタニックだし、ある程度、横山健っていうアイコンを使う必要があったと思う。そこは僕もわかってたし。今後、そのアイコンを使う場面が減っていけばいいだけで、そうなるのが自然だと思ってる。
一一なるほど。