でんぱ組.inc夢眠ねむ×もふくちゃんの大学院講義「アイドルのセルフプロデュース論」レポ

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セルフプロデュースには“ファンのデザイン”も重要

もふく:メイド喫茶って、ディズニーランドのような作りこみ要素があるんです。そもそもの設定が「ご主人様」「お嬢様」だし、例えば年齢を訊けば「永遠の17歳です」、体重は「飴3個分です」みたいな。けっこう乱暴にシミュレーションの世界に連れ込まれる(笑)。

夢眠:私が美術作品を好きな理由は“何かの世界に入り込める”ということも一つあったのに、自分では実現できないと悩んでいたので、えいたそとの出会いはヒントになりましたね。メイドになったあとは、その界隈を形成している「オタク」の人たちの存在にもどっぷりハマっていきました。メイドさん本人だけではなく、周囲の人が“その人”を作り上げている、という。その後の私の作品に大きく影響が出ています。

もふく:当時は、ニコニコ動画の登場や二次創作の普及により、今までのように演者とオーディエンスが明確にわかれていない、新しい世界観が広まりつつある時期でした。今となっては当たり前のことですけど、当時は革命的で、美術をやっている人間は「作り手ってなんだろう」という問題にブチあたっていたと思います。そこでねむちゃんが感じたオタクのパワーというものは、今のみなさんも同じことを感じているんじゃないかな。「プロのアマの差ってなんだろう」とか。そのくらい、当時の秋葉原のオタクは、クリエイターとタイマンを張る熱と想像力があった。

夢眠:好きな子のために似顔絵や漫画を描くヲタの人もいたんですけど、「課題だから」という理由で制作した自分の作品とは、比べものにならないくらいかっこよかったんですよね。そこらへんで勉強している人とは、創作意欲に対する熱量という意味で差があった。

もふく:そのひとつの表れが「ヲタ芸」ですよね。歌ったり踊ったりしている子がどんなに下手でも、その子のためにヲタ芸を打って、それがまたかっこよくて、女の子より目立つという(笑)。

夢眠:ファン含めて“その子”なんですよね。セルフプロデュースの話に繋げると、ファンやスタッフなど自分を取り囲む全てをプロデュースする気持ちが必要かもしれません。「こうすれば、こういうファンがつくのでは」と考える、とか。

もふく:自分自身のプロデュースだけではなく、自分の作品をどんな人が買ってくれるか、喜んでくれるのかという“ファンのデザイン”も含めてセルフプロデュースだということですね。

「©自分」をたくさん生み出す――“アイドル・夢眠ねむ”の作り方

もふく:では、「夢眠ねむの作り方」をお聞きしましょう。なぜその髪型なのか、なぜミントグリーンがテーマなのかなど、具体的な点を教えてください。

夢眠:アイドルとしての「夢眠ねむ」がスタートしたのは、もふくちゃんに誘われたのがきっかけです。ディアステージの面接では、歌いたくないからキッチンに入りたい、と希望を出していたんですけど。

もふく:周囲の人と「ねむちゃんをアイドルにしたら」「歌が絶対嫌と言っていたから無理だよ」「でも、ねむちゃんはやるべきだよ」なんて話してて。私もプロダクションを設立するにあたって所属の子を探していたから、それで話し合いをしたんだよね。

夢眠:突然、呼び出されたから「辞めろとか言われるんだ!」ってビクビクしていたら「アイドルにならない?」と誘われて、「へっ?」って。それで「あと10キロ痩せて」って言われたの(笑)。

もふく:7キロだよ!

夢眠:いーや違う、10キロ。びっくりして泣いちゃったら、「じゃあ7キロでいいよ」って(笑)。

もふく:そうだっけ?(笑) でも、それで実際に痩せたんだよね。壁に「ねむちゃん マイナス7キロ」って女の子ごとに目標を貼ってたの覚えてる。

夢眠:ずっと座って絵を描いて、運動を何もしていなかったので、太いというより、ぼんやり生きている大学生というか、気の抜けた体型だったんだよね。

 それでもふくちゃんの事務所に所属することになって、ちょうどでんぱ組.incのオーディションがあったので、受けたら合格して。さらに、オーディションを見た作曲家の方が、この子に歌ってほしいと言って作ってくれたのが、ファーストソロシングルの『魔法少女☆未満』だったんです。

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