「でんぱ組.incはルサンチマンに火を付けて飛んでいる」メンバーを奮起させた“屈辱”とは?

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もふくちゃんこと福嶋麻衣子氏

 でんぱ組.incのプロデューサーで株式会社モエ・ジャパン代表の“もふくちゃん”こと福嶋麻衣子氏が、でんぱ組.incと自身のプロディース論、そして今のアイドルシーンについて語る集中連載第2回。

第1回:「物語性の先に辿りつきたい」でんぱ組.incのプロデューサー・もふくちゃんが語るアイドル論

 でんぱ組.incは今月16日、初の東京・日比谷野外音楽堂でのライブを成功させた。いわゆる“ミドル級アイドル”の枠を越えそうな勢いで前進する彼女たちだが、かつては「アイドルなのに、なぜかアイドルファンにウケが悪い」という壁に当たったこともあるという。もふくちゃんはプロデューサーとして、そうした壁を乗り越えるために、でんぱ組.incをどう方向付けてきたのか−−放送作家のエドボル氏が切り込む。

――でんぱ組.incは当初、二次元のオタクをターゲットにアニメソングを歌ったり、三次元のアイドルファンに受け入れられることを目指していましたよね。でも今は、ロック好きからも支持されている。どのような経緯があったんですか?

もふくちゃん(以下、もふく):いろいろな挫折があったんですが、いちばん覚えているのは、2010年に出演した『TOKYO IDOL FESTIVAL』(以下、TIF)ですね。多くのアイドルと対バンする初めての機会だったんですけど、その年も翌年も、すごく反応が悪くて。

 2年目のときは、他のグループには歓声が沸くのに、でんぱ組.incのときはシーンとしてしまって。あとから、「曲のBPM(テンポ)が速すぎて、よくわからない」「アニメ声がキモい」などの叩かれ方をしていた。でんぱ組.incとアイドルファンとの相性の悪さを実感して「今まで掘り続けていた壁の向こうに光はなかったんだ」という風に感じました。TIFに来る人は低年齢で、正統派なアイドルを応援するタイプが多いんだ、と(笑)。別のフィールドを狙うべきだと思って、逆にスタンスが明確になり、スッキリしましたね。TIFには、アイドルを追っている人――いわゆる“界隈”の人たちがみんな来ているから、そこでの反応はマーケティング的に役立ちました。その後の方向性を変えるリトマス紙になったんです。

 あともうひとつ、TIFでの出来事で強烈だったのは、エンディングに呼ばれなかったこと(笑)。パフォーマンスは小さいステージでやっていたので、みんな「最後にメインステージに立てるよ!」ってワクワクしながら、舞台裏で待っていたんです。でも、しばらくしたら他のアイドルさんが次々と戻ってきて「どうしたの? もう終わったよ」と……。「私たち、呼ばれもしなかったんだ!」とガッカリしましたけど、今になってみると、そういう挫折を経験してよかったなと思います。そのときの気持ちがなかったら、今みたいに「見返してやる!」というような、いい意味でのルサンチマンは生まれていなかった。でんぱ組.incはルサンチマンに火を付けて飛んでいるようなところがあるんですけど、それはこうした経験がベースになっています。

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