柴那典が新作『DIAMOND』を掘り下げ解説
でんぱ組.incへの楽曲提供でも話題 Wiennersが音楽的ルーツとする「3つの街」とは?
Wiennersがメジャー1stアルバム『DIAMOND』を6月18日にリリースした。
でんぱ組.incの代表曲「でんでんぱっしょん」「サクラあっぱれーしょん」などの提供を通じて、リーダーの玉屋2060%(Vo/G)がソングライターとしても高い評価を集めている彼ら。勝負作となるニューアルバムは、奇想天外な発想とセンス、キャッチーなメロディが詰め込まれた一枚。せわしなく痛快で情熱的なバンドの魅力を示す作品になっている。
アルバムの特設サイトには、成田ハネダ(パスピエ)、滝善充(9mm Parabellum Bullet)、ピエール中野(凛として時雨)、kz(livetune)、大谷ノブ彦(ダイノジ)、菅良太郎(パンサー)など、ミュージシャンやタレントをはじめ各方面からの絶賛コメントも集まっている。なぜ彼らはこれほど愛されるのか? そのオリジナリティはどこから生まれてきているのか? それをバンドのルーツから解き明かしていこう。
実は、彼らの音楽的ルーツには3つの街がある。「西荻窪」「渋谷」「秋葉原」という、東京の東から西まで広がる3つの場所でゼロ年代に育まれたカルチャーをごった煮にしたところに、Wiennersの音楽的な新しさがあるのだ。
まずは「西荻窪」について。彼らが直接的なルーツとして掲げているのが「西荻系ハードコア」と呼ばれるシーン。西荻窪WATTSというライブハウスを拠点に活動する、BPMが速くて曲が短いファストチューンを武器にするバンドだ。シーンのパイオニアとして代表的な存在は、FRUITY。現在はYOUR SONG IS GOODで活動するサイトウ“JxJx”ジュンが95年に結成したスカパンクバンドだ。
FRUITYはわずか2年で解散するも、サイトウ“JxJx”ジュンはその後にSCHOOL JACKETSを結成。パンクの性急なビートにスカの要素を合体させ、さらにソウルやブラックミュージックを雑食的に飲み込んだ音楽性を追求し、後続に大きな影響を与えてきた。
その後サイトウ“JxJx”ジュンはYOUR SONG IS GOODを結成しインストバンドとして別の方向性を開拓するも、ゼロ年代の西荻窪WATTSにはFRUITYに憧れて育った「第二世代」のバンドたちによる局地的なシーンの盛り上がりが継続していた。そこに熱狂していたのが、10代の頃の玉屋2060%だったという。
そして、「渋谷」。西荻窪のハードコアシーンと同時期に彼が影響を受けたのが、Plus-Tech Squeeze Boxや、そのメンバーであるハヤシベトモノリが曲を作っていたHazel Nuts Chocolate。いわゆる「ネオ渋谷系」と呼ばれたフューチャーポップのアーティストたちだ。特徴はピコピコした電子音とカットアップを多用した曲調、キュートな女性ボーカル。Perfumeやきゃりーぱみゅぱみゅを手掛ける中田ヤスタカのメインプロジェクトCAPSULEも、初期はこの「ネオ渋谷系」という括りの中で語られていた。